お久しぶりーふ

 などという駄洒落を云いたくなったのはやはり私がすっかりもういい歳のおっさんになったというこのなのでしょう。noteはお久しぶりでございます。

 それはさておき、聞くところによれば、かの昭和を代表し体現した偉大な歌手である美空ひばりの新曲が発表されたということで、えっ。いやいや。そんなはずないじゃん、美空ひばりなんて疾うに鬼籍に入られておるじゃんねー。なんて思うのだけど、よくよく話を聞いてみれば、美空ひばりの過去の歌声を集めてAIにデータとして入力、そのAIが自分で考えて美空ひばりの歌唱を再現、秋元康氏がプロデュースした新曲を歌唱するのだそうですよ。

 話を聞くだに、なんだよ、最新のAIだと威張っているけどやってることは五十年近い以前に堺すすむがやってた美空ひばりの物真似と変わらんじゃないか。なーんでかフラメンコ。とか思ってしまうのだけれどそれは私の早合点と過小評価に過ぎない。きっと本当はまじすごいことなんだろう。

 しかしこの美空ひばりがAIで復活! の話題を聞き及ぶに、いまから二十五年以上も以前に夢想していたあることを思い出す。

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 あれは90年代初頭、東京は新宿にある末廣亭でなんとなく寄席興行を観覧していた時のこと。不図「この高座に立体的なホログラムを映し出すことができたら、志ん生も八代目文楽も三代目金馬も蘇らせることができるのじゃないか」そんなことを思った。

 時あたかも映画『ターミネータ2』や『ジュラシック・パーク』が公開され、CGの威力が満点下に示され始めた頃。液体金属T-1000を創出し、ティラノサウルスを蘇らせたCGの技術があれば、末廣亭の高座に志ん生を蘇らせることもできるのじゃないか、なんて夢想をよくしていた。あれから幾星霜。

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 今年、Netflixが配信・配給した映画『アイリッシュマン』では、演技をする生身のロバート・デ・ニーロやアル・パチーノ、ジョー・ペシの顔面にCG処理を施し、若い頃の姿に生まれ変わらせた。

 ここまで進んだCG技術があればリアルな志ん生を作ることも可能なのではないかしらん。ここにプロジェクションマッピングの技術を掛け合わせれば、寄席の高座に志ん生を登場させることも可能なのではないかしらん。そこへさらにAIを持ち込んだら、客の反応によって演じ方を変えることすらできるのじゃないかしらん。いや、できないはずがない。

 斯くて夢想は果てしなく広がってゆく。寄席の高座に志ん生を蘇らせることができたら、歌舞伎の舞台に十八代目勘三郎を蘇らせることもできるのじゃないか。東京ドームのグラウンドにV9時代のジャイアンツナインを描き出すことが出来るかも知れぬ。日本武道館のリングでジャイアント馬場とアントニオ猪木を闘わせることもできるかも知れぬ。

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 だが実際にそうなったら、現役世代の演芸やスポーツのゲームを観に来なくなってしまうかもしれないなあ、とも思う。自分が最も思い入れを持った藝人、スポーツ選手の高座やプレーばかりを観るようになって、現役の選手を観ることがなくなってしまうかもしれない。

 それが普段の生活にまで波及してきたらなお大変だ。たといば殺風景な私の部屋の中に理想のパートナーの姿をCGで常に描き出せるとしたらどうなる。剰え、映し出されたその理想のパートナーが高度なAIを持ち合わせ、自分にとって最高の受け答えや行動、もてなしをしてくれるとしたら……生身の人間と妥協をしながら暮らすよりもよほど快適やもしれぬ。

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 なんてなことを思っているうちに令和元年も暮れてゆくのでした。来年もたまにきますのでよろしくどうぞ。来年はいいことあるといいね。

 あと、私が2003年頃からやっている個人サイト『ザ・ガーベージ・コレクション』もよろしく。来年はちゃんとする。





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