ジャパン・アズ・オンリー・ワン

 二〇二〇年に予定されている、二度目の東京五輪の開催を契機にいろいろと我が国も変わりそうである。

 その変わりそうなことのひとつにカジノ合法化がある。

 巷間囁かれている噂によれば、政府主導で東京は港区・台場にシンガポール顔負けのカジノを建造、そこを一大カジノタウンとして莫大なる観光収入をあげようという腹積もりらしい。そういやKONAMIが、カジノ法案成立を視野に入れた会社を作ったらしいネ。

 まあ僕なんぞは元来ギャンブルに興味がないほうだから、その実現や是非については正直なところどうでも良いのだが、せっかく我が国にカジノを造るのであれば、やはり我が国らしい、ジャパンにしか出来ないオンリーワンなカジノをつくらんければいかんよね、とは思う。

 その為にはやはり、我が国に固有の、オリジナルなギャンブルを集合させることが肝要と思う。スロットマシンだのポーカーだのルーレットだの、なんてのあ所詮は西洋の、バタ臭い毛唐が考え出した舶来品に過ぎず、もしも幕末に黒船が来航しておらずあのまま鎖国が続いていたら、我が国に入ってきたかどうか怪しい程度のものである。

 そんな出自の怪しいものよりも、我が国に伝統的にあるギャンブル、たといば”花札/こいこい”であり、”おいちょかぶ”であり、”丁半博打”であり、”本引き”であり、”ちんちろりん”といった、我が国に古くからあるギャンブルを積極的に採用すべきである。

 しかもこれらのギャンブルは西洋発祥のものと比べて、設備投資が格段に少なく済むというメリットもある。サイコロ、壺、花札、どんぶりぐらいがあれば当面のところは始められる。

 さらにはあなた、映画『緋牡丹博徒』ンときの藤純子みたいな粋な姐さんが、着物の片肌脱いで胸のさらしも露に壺でも振ってご覧なさいな。「入ります」なんてな一言だけで紅毛碧眼の連中なんか、エキゾチック・ジャパンを感じて喜びのあまり泡ァ吹いて倒れるに決まっている。それへさして「任天堂はNES以前は花札を作っていたんぜ」とか追い討ちで説明してやったら驚きのあまり死ぬかも知れない。

 いやいや、そうした古来からあるギャンブルだけでは世界を相手にするカジノには規模と派手派手しさが足らないんじゃね? というのであれば、裏社会でその伝統が引き継がれてきた高校野球賭博や大相撲賭博も、今般の台場カジノにあっては合法化してしまえばいい。これでずいぶん派手ンなる。

 それでも足りなきゃ闘犬、闘鶏、赤ん坊の泣き相撲と、我が国に古来から伝わる勝負事が幾らもある。これらをすべてギャンブルにしてしまえばいい。世にギャンブルの種は尽きまじ、だ。

 で、もしも本当に台場カジノが上の如き様相となるんだったら当然、このカジノの正式名称は「お台場"賭場"」とかにしてもらわんければ収まりが悪くなる。名は体を表すというからね。

 となればジャンルの呼称もギャンブルじゃなくて古式床しく「賭博」にせんければならん。となれあ、ディーラーは胴元でギャンプラーは博打打ちとそれぞれ呼称するようにならざるを得ない。でもって、その胴元と博打打ちの間で遣り取りされるのもカジノチップじゃなくて一分金/一分銀を模したやつにしなくちゃならんわなあ。うーん。まさにジャパン・アズ・オンリーワンじゃん。

 とまれ、台場カジノ構想がマジこんな感じになったら、そらあ普段ギャンブルに興味のない僕ちんも、ちったあ覗いてみようかしらん、という気になるかも知れないかも知れないかも知れないかも知れないかも知れない。(了)

※投げ銭でございます。この先にはもう何もありません。菜種と農民は絞れば絞るほど出てくると云いますがもういまの僕からは逆さに振っても鼻血も出ません。

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