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小さな箱に入れたもの

2月16日よりスタートした「第一回 牛乳パック展」は約2週間の期間を設け、28日に無事全行程を終了することができました。
参加人数22名、計25作品が並び、ボリュームのある展示会でした。

牛乳パック展はカフェギャラリーきのねが立ち上がって最初に募集を開始した公募展です。今考えても「最初にやったのかこれ...」と冷静になる自分もいますが、結論としては「本当にやってよかった」の一言に尽きます。
せっかく初企画が成功(と言うことに)したとうことでnoteにでもまとめようと思う次第です。
(ここのところすごーーくサボっていたので)

目次
1、きっかけは「ブックカバー展」
2、原画をゴールにしない展示会
3、牛乳パックが秘めるアプローチ
4、目指すカタチはジャンルの垣根を越えた一種のお祭りに
5、盛り上げるための仕掛け
6、関わりたい人たち、会いたい人たち
7、来年もやるぞ!

1、きっかけは「ブックカバー展」

きのねがオープンしたのが2018年9月。
この月に、約50名という出展者が参加し、東京と大阪で開催された「ブックカバー展」というイベントがありました。

架空の本屋さんの架空のカバーを作るというこのイベントはレトロ印刷JAMさんでワークショップを行う等物販や体験と展示以外にも楽しめるイベントとのことでした。

バリエーションに富んだブックカバーは物販コンテンツとしても非常に良いものだったと思います。僕がその時感じたのは「これ、折った時に主役の顔(とか、全体の中で見せたい部分)がなくなるデザインのやつあるな」でした。つまり、最終的な納まりを狙って作られていない(であろう)ということです。

2、原画をゴールにしない展示会

展示企画を練るにあたって、ここからヒントをいただき「原画をゴールにしない展示」をしようと考えました。
アナログ・デジタル問わず「あなたの絵を〇〇で活用したい」というお話のご縁があった際、別で編集者(デザイナー)がいるか否かは別として、描く側にも「着地点」を意識して制作することが必要ではないかと思います。とくにアナログ作家にとっては場合によって一からやり直しということもあるでしょう。
そういった最終的に自分が描いたものがどう見えるか、というテーマで企画を練りました。牛乳パックに至るまで非常に悩みました。
・みんなが編集しやすい紙ものであること
・ありふれた身近なもの
上記2つの要素が必要不可欠でした。コースターなどの案もありましたが、丸か四角にトリミングされるだけな印象だったのでボツにしました(印象も弱い)。

3、牛乳パックが秘めるアプローチ

企画が確定し、募集開始準備の段階では「平面作家である」ことを前提で企画は進めていました。もともと自分が平面作家であること、きっかけがブックカバーだったこともあり、当時は視野が狭かったことが否めません。
しかし、「こういう企画をしようと思っている」と周りの作家さんたちと話している内に、立体を主に制作する作家さんや現代詩の作家さんにも興味を持っていただき、「あ、そうか。いろんなジャンルの人がいじれるんだこれ」となり、「パックの形さえ守れば何をしてもOK」という狭いようで広いルールが誕生しました。
そして2018年11月、いよいよきのね初の公募を開始しました。

4、目指すカタチはジャンルの垣根を越えた一種のお祭りに

予想外だったのが、公募を開始してすぐに応募いただいたのが家具職人だったことです。「形を守れば...なるほど、家具もOKだな確かに。」
それからよくきのねに来ていただく作家さん達を巻き込みながら、気がつけば平面作家、切り絵作家、(粘土など)立体作家、現代詩作家、家具職人・・・もはやジャンルに何のまとまりもありません。ここまでくると企画した身としても「どうなってしまうんだ」の期待と不安の嵐。
このジャンルレスでごちゃごちゃな感じこそこの企画の魅力で、楽しむものなのだと、これは「お祭り」であると告知するようになりました。
そう、目指すは垣根のない個性をぶつけ合えるお祭りなのです!

**5、盛り上げるための仕掛け **

初の公募展で、しかも媒体は牛乳パック。
尖った企画と言えど、それだけでは十分に周りにアプローチできません。見知らぬ人にまで響かせるにはツールの力が必要です。
まずDMを牛乳パック(型)にしました。どんな展示か明確である上に目を引きます(なんせ基本DMは平面ですからね)。

出展作家の紹介面を伏せ、概要と会期の面をしっかり作り込み、実際に出力・組立てを行ったものを撮影し、募集画像にしたのも目を引くための演出でした。(これ自力で作ったの?という疑問から、誰でも作れるんだというイメージへ変換させていくためのサンプルでもありました)
このDMを他のギャラリー様や店舗様にご協力いただき、設置していただきました。DMを見て気になる方は自身の携帯で4面の写真を撮るため、ポストカードを大量に印刷する必要がなくなり、経済的です(と思ったのですが、立体版を大量に刷ることでコストが増え、そこまでのコストダウンにはなりませんでした)。
立体DM設置が難しい場所についてはポストカードタイプを配布させていただきました。これまでの経験でそこまで広範囲には捌けないだろうと部数は少なめに刷っていたのですがこれが(ある意味うれしい)誤算で、「DMがかわいい」とすぐに捌けてしまい、枚数が結局全然足りないという結果になりました。先に配布したところから少しずつ回収したりもしましたが、展示が始まるとすでに1枚も会場に無く、来場者の方を少しガッカリさせてしまう結果に(欲しいと言ってくださる方が多かったので)。予算的にも追加入稿が厳しく、補充は断念しました。

(画面だとわかりにくいのですが、実際ミニチュア(の展開図)を見ている気分になり、確かにかわいい…?)
まぁ、ポストカード用に別のデザインをする時間がなかったので立体用の展開図をポストカードサイズにトリミングしただけなんですけどね。それがかえって好評だったようで素直に嬉しいです!
DMの他にもごあいさつ文を書いた紙も牛乳パックの展開図。お店のメニューも牛乳パックにしました。4面あったので、その内3面を使ってコーヒー、その他ドリンク、フードといった具合に。
さらには、看板にも立体DMを貼り付けてみると「これが気になって」とたまたま通りすがった方々にも集客につながりました。

こういったツール達のおかげもあり、会期中常に賑やかな時間を送ることができました。これまで当店は1ヶ月かけて約200名の集客といったところですが、今回スタートからわずか4日で100名越えという来客数。平日も休日並みの賑やかさでした。もちろん、これには展示前からの出展者皆さんのSNSによる情報拡散も大いに効果が発揮された結果であり、ここで改めてご協力にお礼申し上げます。
搬入日に突如として決まった「人気投票」もよい決断だったと思います。投票側も、自分の票を確かなものとすべく、全ての作品をより観察するようになります。どんな作品かを知った上で判断したいという思いに、作品説明でしっかりお応えしますが、この説明の時間こそがもっとも楽しい時間。出展者の皆さんが仕込んできたユーモアをここで発見していただくのです。お越しいただいたお客様からは「楽しかった」という感想が一番多かったと記憶しております。来られた方が笑顔で帰っていくだけでも「いい展示」と言っていいのではないでしょうか。そして、出展者のみなさんが楽しい空気の中で終わる良い展示だったのではないでしょうか。(それもすごく大事)

6、関わりたい人たち、会いたい人たち

今回の展示会でどうしても加えたいジャンルがありました。「デザイナー」の存在です。今後のきのねの公募展では、今回のような「遊び心分の余白がある」企画が多くなると思っており、純粋な画作りのスキル以外にも発想力がものをいう展示を行う中でデザイナーの引き出しほど期待できるものはありません(なんせ案件ごとに様々な物事を結びつけるお仕事ですので)。

現在デザイナーないしアートディレクターが出展する大規模な機会といえば、JAGDAやADCになると思います。どちらもその年ディレクションしたものを「作品」として出展するわけです。要は仕事の実績公開場です。

デザイナーにも仕事とは別で何か考え、それをSNSに留まらずアウトプットできる場を作りたい。デザイナー出身の私はそう思う今日この頃です。

特に関西は「前田デザイン室」や「なにわクリエイターズ」と元はバラバラだったデザイナーやイラストレーターたちの団結が強く、今「アツい」エリアです。きっと関西の熱だからできることはあると考えていますし、そのアウトプット先に「ギャラリー」という選択肢を提案したい、と想い今回は絶対にデザイナー枠が欠かせませんでした。

関西のクリエイターの興味を引く要素を考えている中ですでに目を光らせている存在がありました。それこそが「高校生デザイナー」でした。

ちょうど私が個人的にSNSで高校生デザイナーの皆さんを見つけ、「これからもっと伸びそうだなー、何かしら巻き込めないものだろうか」と考えていた時、彼らはまだ1,000名のフォロワーさんもいなかったと思います。これからのポテンシャルを見込み、今回3名の高校生デザイナーの方にお声がけさせていただきました。前田デザイン室ですでに名前が注目されていたGOさん、周りのデザイナーさんたちからのリツイート(主に制作物などの投稿)等でぐいぐい人気を伸ばしていたKUDOさん、そこから追随するように存在が大きくなっていったJOHNさんの3名です。

展示会開始の時点ではすでに高校生デザイナーたちは2,000名のフォロワーを越え、関西のデザイナーさんたちともコンタクトを当たり前にとるようになっておりました。(KUDOさんについては一度大阪に来られているのも大きかったですね)

この高校生たちの頑張りを一目見に、関西クリエイターの皆さんがきのねに来てくれたらいいな、こうした展示を面白いと感じてもらえたらいいなと展開を期待しておりました。思いが通じたのか、このたった2週間の間にこれまでずっと「お会いしてみたい!」と願っていた錚々たる関西クリエイターの方々とごあいさつすることができました。また、本来高校生3名にとってまったく縁のないこの大阪という地で3人のデザインしたものがネットの枠を越えて並ぶというシチュエーションも個人的にはグッとくるものがあります(基本SNS上でバラバラの制作物公開なので)。3名にとってよい経験になっていれば幸いですし、これを機に関西のクリエイターともっと盛り上がったところをこちらから発信できればと思っております。

もちろん、今回お越しいただいた作家さんにも「これは面白い」と関心を高めていただけると、よりまた面白いものになっていくと確信しています。

7、来年もやるぞ!

さて、ここからは業務連絡(?)です。
このたびの「牛乳パック展」大変ご好評をいただき、さらには「次あるなら出たい」というありがたいお言葉も複数頂戴し...
これでやらねばきのねが廃る!
来年もやります!やらせていただきます!「第二回 牛乳パック展」!!
上限を20名と設定し、その代わりお一人上限3点と数を増やします。
また夏にかけて告知もさせていただきますので、今後ともカフェギャラリーきのねの活動を要チェック願います。

それまでになんとか第二弾のDMデザインを考えねば。。
(これが大変)

カフェギャラリーきのね
きのねのまこと

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