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「ドウグヤヨバナシ第三夜 あつまれ!電池・充電器沼の住人」で話せなかったこと

はじめに


皆さんこんばんわ。現場猫で学ぶミニ四駆チャンネル管理人?のミヤです。
先日、P!MODEL LABOのぽらりんさんからのご厚意で「ドウグヤヨバナシ第三夜 あつまれ!電池・充電器沼の住人」のゲストとして参加させてもらいました。その時にパルス充電についてうまく説明できなかったので、noteで要点をまとめて行きたいと思います。

【ドウグヤヨバナシ第三夜 アーカイブ】

そもそもパルス充電とは


 一般に「パルス充電」というと、充電の電流電圧を意図的に変動させて「短時間に大電流を流す時間」を設けながら充電していくタイプの充電方法を指します。「電流値そのもの」を瞬間的に増やして、結果として「セルにかかる充電電圧も大幅に上がる」という充電動作を指すのが「パルス充電」です。さらに、この過程において瞬間的な過充電を調整するため、瞬間的な大電流充電の直後に「逆パルス(つまり放電)」までかけてしまう機種もあります。このあたりの設定は機種によりさまざまです。

 ひと口に「パルス充電」とは言いますが、その制御ロジックは各社の思想とノウハウの見せ所なので制御の手法はバラバラです。最もスマートなのは、大電流をかけた瞬間に電池の内部抵抗や単位時間当たりの電流の許容量を推測し、以後の充電パラメータにフィードバックしていく方法ですが、きちんとしたマッピングデータに基いて充電パラメータを動的に制御するようなフルオート充電器っぽいモノというのは、「ブラックボックス」になってしまうのでメーカーの電池に対する理解度で性能が決定してしまいます。コストの問題もあるので、もう少し簡易的な単純にあらかじめ決めた幅でパルス電流を作るような仕組みが一般的です。
           

パルス充電の歴史的な何か


 2000年頃までのニカドが主流だった時代のパルス充電の考え方は、
「瞬間大電流を流すことでセルの電極に析出される結晶の粒状性を改善し、大放電特性を改善する」という点に尽きました。

 ニカドの場合、とにかく大電流で充電したほうが電極の状態が有利になるので、できるだけ大電流で無理なく充電できる手法として「パルス充電」が普及した経緯があります。ところがニッケル水素に移行して、このパラダイムは一時期、崩壊します。RC用として導入された初期の3000クラスのニッケル水素は電極の化学反応速度がニカドに比べて非常に遅く、ニカド用に設定されたパルス制御ではパルスの幅が狭く、鋭すぎて、効率よく電気エネルギーを水素に変換・吸収ができませんでした。反応速度の遅いニッケル水素に瞬間的な電流を入れても、セルが反応しないまま電気だけが残ってしまい単に電解液を電気分解して元の水に戻る反応で熱として放出されてしまいます。これではヘタすると熱くなるばっかりで全然電気が入りません。

 もともとニッケル水素の反応式には結晶の溶解・析出のプロセスがありません(厳密にいうとあるにはある)。表面的には単純な「水の電気分解・合成」の反応式です。構造的にはまったく同じニッカドとの根本的な相違点です。ですから、充電についての発想を根本的に切り替えなければならなくなりました。結晶性を考慮する必要がなく、水素吸蔵合金の耐久性の問題があるので、過充電を抑える方向での充電器設計が重要になってくるわけです。充電器メーカー各社も、そのことが分かってきて、その結果、2002年頃からニッケル水素への対応として、パルス充電のパルス設定をより長く、より低くするようになってきました。その代表例がストレート社の「フロントライン」や「レコードブレーカー」といった製品群です。結果として、発熱を抑え、より短時間で充電できるようになりました。ただしストレート社の現行の充電器では、肝心の充電パルス幅をユーザーが設定することはできません(ON/OFFは可)。ココをいじれたらいいのになぁ・・・

 さらに一歩踏み込んで書いておきますと、以上の話は、「3000~3300までのニッケル水素の話」で時代的には「1999年~2003年頃までの話」とお考えください。2004年からは新時代に突入していきます。ニッケル水素の容量拡大と電極材料の改良が進み、インテレクト3600/3800やGPの3300SP2/3700といった最新セルでは、ニカドを凌駕する電極特性を得ていきます。電極の応答速度が速くなると、ひとつ言えることは「昔のニカド用充電器でも平気に使える」時代に「戻ってきた」ということです。

 ただ、いくら反応速度がアップして鋭いパルスでも難なく受け止めるようになったからと言っても、ニッケル水素電池の原理を考える限り、パルスをわざわざ短くする意味はないです。実際、それ以降に発売される充電器がパルスを短くする傾向にはなりませんでした。
 

単三型には意味があるのか


で、「実際のところネオチャンプとかに効果あるの?」と聞かれると私はこのような表情をします↓


ただし、材料の開発が進歩し、セルの内部抵抗が下がって来た場合は要注意です。内部抵抗は充電プロセスでの発熱量に影響します。内部抵抗による発熱が大きい場合、それに輪をかけて「瞬間の過充電による充電初期からの発熱を促すようなマネはよろしくない」という考えは一般的ですが、内部抵抗の低いセルが登場した場合は変わってきます。内部抵抗による発熱はほとんどなくなってしまいます。そうすると、これまで通りのやり方では充電中の熱収支が悪化してセル温度が外気温に収斂する(=冷える)傾向が強まってしまいます。しかしニッケル水素の動作原理は運転温度が高ければ高いほど有利になる(材料が許す耐熱温度の範囲で)原理ですから、充電だって、高い温度でやったほうが本来は望ましいわけです(実際は難しいですけどね・・・)。

ここで再評価されそうなのが「パルス充電の仕組みで意図的に過充電を断続的に作り、セルを暖める」という仕組みです。原理的にはお世辞にもホメられた考え方ではないんですが、簡便法としてはアリです。            

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