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魔界の人々と空

「あるある川柳」の発表からほどなく、新しい写真コンテスト「魔界のフォトアルバム」が発表されました。この記事を書いている現時点も、引き続き応募期間中になっていますので、ぜひ魔界の素敵な写真をお持ちの方は、応募されてみてはいかがでしょうか。

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今回は4枚応募したのですが、自分よりも素敵な景色を知っている冒険者は沢山いらっしゃると思います。実際に、Twitterで公開されているお写真も素敵なものが多いです。

 ただ、今回テーマが発表されたときに、自分の中で撮りたいなと思っていたものが明確にありました。それは「魔界の人々」で、風景ではなく魔界の生活をテーマにした写真を撮りたかったのです。

 Ver.5.0のストーリーが終わったときにお話感想広場で触れたことがあるのですが、最後までストーリーを通して、不器用で人間味のある魔界の人々の心情を追うのがとても楽しく、何よりも印象に残っています。こういった理由から、Ver.5の物語を振り返りつつ、その時に感じたことや自分が考えたことを、実際に撮った写真と交えて少し文章を書こうかな、と思いました。

※ここから、ドラゴンクエスト10 Ver.5の物語に触れる内容を含みます。明確なストーリーのネタバレなどは書きませんが、物語の展開を暗喩する表現は使用いたしますので何卒ご了承ください。


-ファラザード裏通りの住民達-

明け方の裏通り。

これから始まる一日のために
バタバタと走り回る足音。
顔なじみとの挨拶や、他愛もない雑談。

慌ただしくも活気あるファラザードの日常が、今日も始まる。

 砂の街ファラザードで撮りたかったのは「活気ある住民の生活」でした。Ver.5.0の物語では、最後に訪れる街ですが先に向かったゼクレス魔導国、バルディスタ要塞と比べて自由を謳い、対等な交流が行われている、そのような治世をしている面がそこかしこに感じられます。

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 この町で特徴的なのは、やはり裏通りですね。物語の中では「ならずものの行きつく先」のような表現がされていますが、写真のような景観の良い見晴らし台があったり、商業地区からの渡し舟もあるなど、完全に住民から切り離されている場所、という印象はありません。

 どちらかというと、海外旅行でよく言われる「観光客が立ち入ってはいけない場所」みたいな位置づけで、その場所に住む(ならずものではない)普通の住民もいるのだろう、と自然と受け止めていました。

 砂漠という厳しい気候の中、ファラザードでつつましくも楽しく過ごしているであろう住民の、その笑顔をテーマにしたいと思ったのです。

 カメラテストを始める前から写真の構図は大体決めていて、上層部の人が見える位置、なおかつ狭くてもいいから、空が見える場所で撮ろうと思っていました。住民の活気ある雰囲気の象徴として、空を写真の中に入れたかったからです。

-黄昏時のゼクレス魔導国-

ゼクレス魔導国が夕闇に染まり、
夕日と街灯の灯りが溶け込む時間帯の
ベラストル家周辺の空を撮影しました。

ゼクレスの街は城周辺よりも、下層の入口周辺に
高く大きい装飾が施されています。

装飾物に隠され、入口周辺ではあまり見えない空が
城の近くでは広く大きく見えることが、とても印象的です。

 ゼクレス魔導国では、今回唯一となった風景の応募写真となりました。ゼクレス魔導国の上層から撮影した写真となります。

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 ゼクレスに初めて足を踏み入れた時に感じたのは「空が見えない」ということでした。「狭い」という方が正確なのでしょうけど、自分が訪れた当時は、この写真のように曇っていて空を感じることができなかったからだと思います。

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 物語を進めていく中で、ある時、ゼクレス城の前(街の上層部)側では、空が広く見えることに気が付きました。他の場所と同様に晴れていれば美しい空が見えますが、自分はこの空にどこか違和感を覚えたのでした。

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 今回の応募にあたってこの空について考えながら、ゼクレス魔導国の物語を振り返る中で、1つの仮説にたどり着きました。

 もしかして、下層の装飾は「街を彩るため」ではなく「城(または上層)から下層を隠すため」ではないか。。。と。

上の写真にありますが、過度に高いこの壁によって、街は上層部と下層部に分かれています。撮影した上層部からは、下層部の様子がほとんどうかがい知ることができません。

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ためしに、このゲートの下まで来ましたが、そこからはこの装飾しか見えないのですね。ここからさらに、階下を覗いて、初めて下層がみられるようになる、という構造であることに気が付きました。

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 城のテラスから見える様子も同様で、正面の通りが見渡せるだけで、それ以外のものを見ることはできません。(なぜかテラスからは中央の像が見えないため、本来はもっと視界が狭いと思われます)。

 おそらくですが、これはゼクレスの価値観である「階級思想」による影響なのかな、と考えます。ゼクレスの貴族は、自らよりも階級が下の者に対して侮蔑的な態度をとることが描写されていますが、これと同様で「そもそも見たくもない」と思っている可能性を考えました。

 そうすると、下層の装飾も、境界の大きな門も、テラスの景色もすべて腑に落ちるのです。そうして作られた上層部の「広く見える空」は、綺麗ですがどこか歪で、それに違和感を持ったのだろう、という結論になりました。

 その自分が感じた違和感を、どこか不気味さのある黄昏時に重ねて、今回応募写真の中に込めています。

-雨中の出立-

”アストルティアを 我らが掌中に”

わが身に下った 指令を胸に
この地を離れ 戦地へ向かう

冷たい雨が 昂る心を静めている

それは この地で流れた血であるか
あるいは 流した涙なのか

願わくばこの先に 光あらんことを

 バルディスタ要塞では、兵士の出立をテーマにしました。物語の中で「血気盛ん」「力でねじ伏せる」という国柄が示されていますが、兵士の視点で考えたときに、「忠誠を誓う」ことと「統率する魔王の指示に従う」ことは、必ずしもイコールでないような印象があって。

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 魔王ヴァレリアのカリスマ性を否定したい、という意味ではありません。ただ、従う魔王の出した結論に対して「従う」けれども「自分の意見は違う」というのは、往々にしてあることだと思います。そもそも、ベルトロもそんなスタンスですよね。

 まして、力で己の正しさを示すバルディスタの文化であれば、「俺だったらこうするのに」という考えを持つことは、ごく自然なように思います。今、それを正しいと示す力がないだけで。

 そういった葛藤を、バルディスタの雨と重ねてみようと思ったのでした。


 ここまでの写真で、もしかしたらお気づきの方がいらっしゃるかもしれません。今回、この3つの街をテーマにした応募写真には、住民だけでなく「空」を共通のモチーフにしています。

 応募が始まり、他の方の写真を拝見しながら気が付いたのですが、自分は景色を見るときに自然と空の方を意識しているようです。足元や階下の様子を撮影する方のお写真を見て、自分が通ったことあるはずの場所で、目に留めていなかったものを見て、驚かされるお写真がいくつもありました。

 同時に、応募開始時点で先に撮り終えていたファラザードとゼクレスの写真は、人々だけでなく無意識に「空」をモチーフにしていることに気が付いたので、バルディスタもこれに合わせて、空を取り入れた写真にしようと思ったのです。

 魔界の美しい景色だけでなく、自分が無意識に行っていたことを改めて気づかせてくれる、そんな今回の写真コンテスト。いつも以上に応募写真を見るのが楽しいですね。ぜひお写真をお持ちの方は応募してみてください。

 最後におまけ。この写真だけは、「多分、コンテストに期待されている写真ではない」と思いながら撮りましたwでも、このシーンを選んだ意図もちょっとだけあるんですよ。

 魔界の街を旅して感じたのは、これまでの世界と比べて「大衆娯楽」のようなもの、あるいはその表現が少ないこと。芸術や、子供の遊びなどは方々で感じられるものの、「一般的な市民がたしなむ」というものは、酒場ぐらいしか見当たらなかったのですね。後はお菓子ぐらいかな。

 でも、5.5後期に追加されたクエストで、初めて大衆娯楽を垣間見れるようなものが登場しました。そうした時に、そういう俗っぽいものを魔界の中で表現できたら楽しいな、より魔界の住民の視点に立ったものが表現できるかな、と思って、この写真の撮影と応募に踏み切った次第です。

今回も長文になりましたが、ご拝読いただき、ありがとうございました。


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