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『明日の恋はパルプンテ』撮影のお話。


「映像で表現できることなのに、文字を使って説明するのは勿体ない」

これは、学生の時に同じ放送系のサークルに所属していた、
とある友人の言葉です。

当時、バラエティ番組で多用されるテロップについて
個人的な意見、として話していたことなのですが
今でも非常に印象に残っています。

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昨日、シアンさんの #プレイベ写真交流会 に参加してきました。
少しお時間を戴いて、先日開催された写真コンテストで応募した写真のお話をしたのですが
拙い説明でちゃんとお話しできたか怪しかったので、
いい機会を頂いた、ということで
応募写真のセット制作のお話を、きちんとまとめたいと思います。

「ドラクエの特別な写真テクニック」というようなお話ではないのですが、
中の人の事情で最近インプットばかりになり、あまりアウトプットができていませんでしたので、
何か参考になるお話があれば幸いですm(_ _)m

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最初に、まずセットの全景をご紹介します。

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セットははりぼてで、後ろ側はありません。また、後述するフィルターを活かすために、灯りを消しています。

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ハリボテで、作った色んな色がまざるセットですが、
これを「ポイントカラー」にすると

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全体のトーンがモノクロになって統一感が生まれる、という感じです。

今回のコンテストの応募写真を考えた時、特に意識したのは
「いかに写真だけで、シーンの情景を伝えられるか」
ということでした。

応募規定にある、「他の応募者の写真をつないで物語にする」という性質上
複雑な物語の背景を含んだり、特定の第三者を挟んだりする写真、というのは
「いい写真だけど、他の人と物語がつながらない」という危険がある、と考えていました。

同様に、「写真の内容を、セリフで補足する」のも避けようと考えました。
入賞作品が「写真とセリフの組み合わせをどのようにつなぐか判らない」ので、
セリフに頼る写真だと、先の問題と同じことにぶつかると思ったんですね。結果的に、この点は杞憂に終わりましたが。

この辺りの思考については、冒頭の友人の言葉が
改めて強く影響があったんだな、と思います。

以前「物語のプロットを初日に書きました」というお話をツイートしたのですが
この前提で考えると、最初に書いた物語は
少し背景が複雑になりすぎるので、
「もっと伝わりやすい再会の瞬間の写真を撮ろう」
と、考え直すことにしました。

そうした時に、「雑踏の中で偶然再会する」、というのは
王道の展開なので、やはり一番伝わりやすいかな、と、思ったのでした。

「雑踏」を表現するためには
たくさんのエキストラを入れないと、シーンが成立しません。
エキストラを入れれば入れるほど、主役がぼやけてしまうので
これを避けるためにとったアプローチが、以下の3つです。


 1.フォーカスを主役に絞る
 2.主役以外の色をぼかす
 3.エキストラの顔を写さない


この辺りは、ドラクエ10の写真テク、というか
学生の時に気をつけた、撮影テクニックですね。

↓一例ですが、このCMも近いテクニックを使用しています。


まず、エキストラを入れると決めた時点で、雑踏を表現するために
プレイヤーよりも手前に人が来ることを考えていました。

シルエット

上の赤丸の部分ですね。ただ、手前の人物に視線が寄りやすくなるので
フォーカス機能を活用して手前の人物をぼかすようにします。最初はこの位置も別のキャラクター像を配置する予定でしたが、次の調整の影響で、シルエットを使用することになりました。

エキストラを使用すると、それでもエキストラが主役よりも目を引いてしまう恐れがあるので、続いて
「ポイントカラーにすると、プレイヤーと照明だけ、色が残る」
というカメラフィルターの特性を活用しました。

エキストラとして、各キャラクターの像を利用することで
エキストラもモノクロにすることができます。

ポイントカラー

これで、さらに主役だけを注目させやすくしています。部屋の照明を消しているのは、この効果をより引き立てるためです。色を消すなら手前の人達が像でなくても十分伝わると思ったため、ここで手前の像がシルエットになりました。

しかし、これらのエキストラとなる皆様(の像)は、
冒険者はもちろん、制作側の皆様から見てもお馴染みの方ばかり。
それこそ主役を食ってしまうほどに、嫌でも目を引いてしまいます。

そこで、最後に「エキストラの顔を写さない」
という工夫を取り入れることにしました。

顔を見せない

建物だったり、横を向いていたり、という形で、こちらに顔を見せないことで少しでも印象に残りにくくしようと試みました。

このような形でフィルター機能を試しつつ、実際にエキストラを配置して
画面の大筋を固めていったのですが、
最終的に写真の全体像を固めたのは、この子でした。

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頬を赤らめてやや横を向く、リゼロッタちゃん。

「雑踏」の表現を組み立てるのと同時に、
「偶然」の再会をどう表現するか、という点にも悩んていました。

そんな時に目についたのがこの子です。
この子の像による視線の誘導で、
物語の補足ができないかな、と思ったのです。

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結論から言いますと、応募写真ではぼやけていますが、
目線の先には猫を配置することになりました。

猫は狭いところが好きなので、道の真ん中よりも
暗いところの方がイメージに沿うかと思います。

街中で自然とネコに目線が行くような場所で、
人の往来がありそうな場所を作るために、路地裏を作ることに。

路地裏から抜けてきたところで主役の2人がバッタリと出会う、
ここでようやく、セットの光景ができあがります。

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路地裏の向こうも人が行きかう、という状況を作るために、
背中を向き合うことになってしまった悲しき2人。(自分のせい)

残るは主役2人の出会い方。
最初は「偶然ぶつかったあの人が。。。」
みたいのを考えていたのですが、
これは昨年の4コマ漫画に入賞されたとある方
(本人確認してないので名前伏せてます)が
これ以上ないインパクトある表現をされていたので、
別の王道にしようと思ったのでした。
「道中でバッタリ」という王道の表現にもう1つ、
「目の前で倒れている人に手を差し伸べる」
というのがあるかと思います。

「死んだふり」のしぐさでうつぶせになるのが
(多分)プクリポだけなので、
既にヒーロー側はプクリポで確定していました。
(さすがに、ドレスで転ぶヒロインは考えませんでした)


そうしたときに「段差でつまずく」危険というのは
他の種族よりも起こりやすい(まして、毎日姿が変わるなら)、と思いました。
そうすると、段差が雑踏の中にあるとよい、と考え
先のセットに段差を加えることとなったわけです。

アス恋_みゃーこ_転

こうして1枚の写真ができあがりました。

語弊があるかもしれませんが、
今回まとめました、写真撮影の裏話のテクニックによって
自分が考えていた物語や、それを表現するための描写が、
全て見た人に伝えきっているとは思っておりません。
至らない所もいっぱいあると思います。

でも、主役2人やエキストラ、セットの断片から
見て取れる情報の端々をつなぎ合わせて
なんとなく「雑踏の中で、偶然の再会」という
シチュエーションが伝わればよい、という思いで撮影していました。

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これは人に拠ると思うのですが
『物語の意図を理解する』だけではなく
『物語の描いてない(伝わっていない)部分を勝手に想像して楽しむ』というのも
観覧者側の、ひとつの楽しみ方だと思っています。

だから、自分の意図する世界が伝わったなら嬉しいし、
そうでなくても、この写真でイメージを膨らませて
楽しんで頂けた方がいたら、それもやっぱり嬉しいです。

今でもテレビ業界で活躍している、古い友人からすれば
「表現しきれていないことは力不足」と、
言われてしまうかもしれませんが(笑)
写真を見た方の楽しみの一助になっていたなら、幸いです。

長文になってしまいましたが、御拝読戴きありがとうございましたm(_ _)m


ヒューザさん

最後のおまけ。実は写真にも写っているけど、物陰のせいでほとんどわからないヒューザさん。

(文:みやこ)

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