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ルーズベルト大統領が覇権国家へと変えたアメリカを、トランプ氏が孤立主義国家へ戻す?

最近、「もしトラのリスク」というのをテレビで観ました。「もしトラ」とは、トランプ氏が次期大統領戦で再選される可能性が高まったことに対して「もし、トランプ氏が次期大統領に再選された場合、ヨーロッパ西側諸国と日本はどんな困った事態になるか」という議論です。

2026年にはアメリカ建国250周年になるそうです。

アメリカは建国から第二次世界大戦までの約170年間、「孤立主義」でした。孤立主義とはアメリカ単独主義と戦争回避、つまり他国と同盟を結んだりしないで単独で自国を守り、他国の戦争には加わらないということです。現在のような、世界中どこの国の戦争紛争にも顔を出す覇権国家・グローバル主義のアメリカの姿は第二次世界大戦後からの70数年間の姿です。

トランプ氏はアメリカ建国DNAとも言える「孤立主義」に回帰しよう、と主張しているように見えます。大統領時代に日本やヨーロッパに対して発言した「アメリカはもう助けない。自分の国は自分で守れ」というのは孤立主義的主張です。
「もしトラのリスク」は、ヨーロッパや日本にとっては覇権国家アメリカのほうが自分達には都合がいいから、いまさら孤立主義を変えられたら困る。と、いうことですね。

歴史的には、アメリカは第一次世界大戦でイギリスとフランスに利用されたと考える説があります。
第一次世界大戦でアメリカは、13万人が以上が死傷し、大金を使ったのに対米債務は支払ってもらえず、政治経済活動は混乱し、大恐慌への道をつくりました。アメリカは世界の民主主義を守るため参戦したつもりなのに、イギリスとフランスの関心は平和にではなく彼らの帝国の拡充と強化にあったのではないかという、イギリスとフランスに対する不信感と不満がありました。

ヨーロッパの戦況と中立法改定論争

中立法の制定

第二次世界大戦でヨーロッパがきな臭くなってきたとき、再度ヨーロッパの戦争に巻き込まれて利用されないようにするため、1935年から1937年にかけて中立法が漸次成立しました。

少し脇道にそれますが、英仏に利用された側面だけでなく、アメリカ内部にも戦争を望むグループがありました。そのグループは戦争を回避する中立法に反対でした。
ひとつの国の中には、特にアメリカのような移民の国には、多種多様な人々が混在しています。戦争を避けたい人、戦争で儲けたい人、平和を望む人、社会を混乱させて戦争を起こして儲けたい人、外国の工作員、移民前の母国の利益のために働きたい人、共産主義者、・・・。
国民みんながみんな、戦争のない平和な社会を望むわけではないのが現実の世界です。
アメリカの第一次世界大戦への参戦でも、公式の説明では「ドイツによるアメリカ船舶に対する攻撃によりアメリカはやむなく参戦した」ということでしたが、現実は、「戦争による経済利益を求める財界などが意図的にアメリカを戦争に引き込んだ」という説があります。単にイギリスとフランスに利用されただけではありませんでした。

中立法の改定

第二次世界大戦への参戦を望んでいたルーズベルト大統領は、参戦の妨げになる中立法の改定を連邦議会に要請しました。

そこで、連邦議会・報道・国民の改定賛成派と反対派の間で激しい議論になりました。
結果的には連邦議会の上下両院で改定賛成派が多数をとり、中立法は「他国の戦争に参戦できる」よう改定され、アメリカはドイツ・日本と開戦しました。

そして戦後、アメリカは孤立主義からグローバル主義・世界の覇権国へと国の形を大きく変貌させました。
中立法改定がアメリカの国の形を大きく変えたとも言えます。

中立法改定議論の争点

中立法改定の公の目的は反対派も賛成派も「アメリカは戦争を回避する。アメリカの平和と安全を守る」ことであり、同じでした。
(でも、本音は分かりません。正直に「儲かるから戦争をしよう!」と言う人はいませんから。)

このように同じ命題に対して、真逆の手法が論じられました。「中立法を強化して参戦回避するか」、「中立法を廃止して参戦回避するか」。

まるでディベートの教材のような話です。

中立法の主な内容は:
①交戦諸国への武器輸出の禁止
②アメリカ商船の武装を禁止
③アメリカ船舶の戦闘海域への立ち入り禁止(自国船主義)
④米国商品を交戦国へ輸出する場合には輸出以前に支払いを受けること(現金主義)

ルーズベルト政権が改定に重点をおき争点となったのは、②アメリカ商船の武装を禁止、③アメリカ船舶の戦闘海域への立ち入り禁止、この2つの条項を廃止することでした。この2つの条項が廃止されたら法律的に戦争ができるようになるからです。

論争をどう判断するか、検証してみる

もし自分だったら、2つの真逆の論争を判断することは難しかったと思います。ビーアドは、連邦議会における賛成派と反対派の常套句(典型的なロジック)を複数紹介していますが、これらを読んでみると、どちらの言い分にも理があるように思えてきます。

しかし、渦中にいたら判断できなくても、事後の結果が分かっているケースを知ることは、現在の問題に対して考える参考になると感じました。

例えば、日本の防衛議論などです。日本でも最近は「他国に侵略・攻撃されないようにするための防衛」は他人事ではなくなり、テレビなど公の場で議論されるようになりました。特に憲法9条改正の問題は中立法改定と少し似ています。「戦争回避し日本の平和と安全を守る」という命題は同じなのに、争点は「9条を改正して日本を防衛し平和と安全を守る」と「9条を維持して日本の平和と安全を守る」というほぼ真逆のロジックが対立してきました。双方のロジックをどう判断できるか・・・。

ご参考までに、以下にルーズベルト政権側の常套句と反対派の反論例を引用して紹介します。さて、どちらの主張に説得されそうでしょうか。

政権側の常套句

政権は何ヶ月もの間、枢軸国と戦争をしている交戦国に軍需物資を供給することや、そうした交戦国への軍需物資を運ぶ船舶を護送するためにアメリカの軍艦を利用すること、そして、その護送船団が攻撃された場合にドイツの潜水艦を攻撃することは、いずれも戦争行為ではないという見解のもとで物事を進めていた。政府はこれらの行為はすべて防衛の手段だと主張してきた。
にもかかわらず、同じ時期に、大統領と政府高官たちは、攻撃を受けた場合にアメリカが参戦する可能性もあると示唆する常套句を何度も公表するということもしてきたー『戦争はますます迫っている。アメリカ国民はこの事実に気付かなければならない。ヒトラーは西半球と世界全体を征服しようとしているにほかならない。ナチス政権の残忍な独裁政治と合衆国の民主主義体制の間には橋渡しができないほど大きな隔たりがある。1941年3月の武器貸与法の立法化によって連邦議会は国に枢軸諸国を倒す義務を負わせ、大統領は正当な権利に基づき、連合国の勝利を確実にするために必要な「防衛」措置をとっているのだ。』

「ルーズベルトの責任」上、p.245

このような政府側の常套句に対して、反対派は次のような常套句を用いました。

『交戦国への軍需物資を供給すること、交戦国まで船舶を護送するためにアメリカ海軍を投入すること、そしてドイツの潜水艦に発砲すること、これらは目的においても実態においても、戦争行為である。これらの行為は合衆国を本格的な開戦にいたらしめることを目的としており、そして至らしめるものである。そうでないと主張することは偽善である。アメリカの国民に対して、戦争には巻き込まれない、息子たちをアメリカ大陸の外の戦いに送ることは避けられる、という一方で、こうした戦闘行為を働くことは、それもそうした行為を働くにあたって放縦さを増していくことは、甚だしい欺瞞である。この「武力戦争」が合衆国の自己防衛のみを目的に、戦争をアメリカの海岸に近づけないために行われたと断言するのは人々を愚弄している。合衆国は中立であり、ドイツの軍艦のアメリカの海軍艦艇に対する報復措置は、合衆国へのいわれのない不当な「攻撃」だと取り繕うのはごまかしである。武器貸与法にかこつけてとられた攻撃的な手段は「好戦的な行為ではない」、それは合衆国を防衛するための行為である、と主張するのは第一級の詐欺だ。政権は実際、合衆国を参戦させたくないと考えており、国を戦争に向けて意図的に煽動しているわけではないと抗議するのは言い訳だー』

「ルーズベルトの責任」上 pp.245-246


ようやく全18章のうち6章まで終わりました。まだまだ先は遠いです・・・。

次からは開戦直前の日米外交と真珠湾攻撃に関するテーマに移ります。これらは、私たちにインプットされている「日本側」立場と目線からの真珠湾攻撃ではなく、「アメリカ側」立場と目線で調査分析された真珠湾事件なので、新しい発見がありました。