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倒産続きの彼女 新川帆立

「元彼の遺言状」を読み、著者:新川帆立の小説をもっと読みたいと思い、元彼の遺言状を読んだ後、息つく暇もなく本書を読んだ。
剣持麗子は才色兼備の元々才能のある女性弁護士であったが、本書の主人公は美馬玉子と言うどこにでも居そうな(ただし剣持と同じ職場で働くエリート弁護士)女性だ。いつも周りに気を遣い、あえてぶりっ子をする。波風立てず穏便に事が進むように、だ。そんな玉子はシマばあちゃんと言う自分のおばあちゃんと一緒に住んでおり、家賃から生活費、食事の準備まで玉子持ちだ。仕事が忙しい中でも、玉子はシマばあちゃんの為にご飯を用意する。シマばあちゃんの大好物「干し柿」も欠かさずに。
こんな生活、普通なら続かない。みんな自分が可愛いし、自分であくせく働いたお金は自分で使いたいからだ。しかし、この主人公の玉子はおばあちゃんの為に働くことが当たり前のようにできる。
この本は、そんなどこにでも居そうでいない玉子が、剣持と一緒にタッグを組んで、とある会社のご意見BOXに寄せられた相談を受ける話だ。
自尊心が高い剣持とは違い、玉子は自分に自信がない。そのせいで、初めは、剣持のやることなすことに心の中でケチをつけていく。羨ましいと思う反面、自分にはできないと思いながら。
話が進むにつれ、玉子は剣持の印象が変わっていく。剣持が見た目よりチャーミングな人であったと言うことも印象が変わった要因なのだが、玉子の仕事に対して卑屈に思っていた部分や窮屈に感じていた部分が取り除かれたからだと思う。男は仕事、女は家事育児。と昔は女は専業主婦となり、家庭を守ることが幸せとされてきた。しかし、今は違う。頭では分かっているため、玉子は男性に「いい奥さんになれるよ」と言われると心の中で反発してしまう。弁護士の仕事は忙しく、恋愛との両立は不可能・・と思っていた時、剣持が彼氏が作ってくれたお弁当を食べていることを知る。あの仕事一筋のような剣持が彼氏までいて、その上お弁当まで作ってきてくれているとは。玉子は、驚き、そして自分がそれだけ狭い価値観に囚われていたのかに気づく。その発見もあり、本ストーリーが進むにつれ、玉子の考え方も変わってくる。

改めて、新川帆立さんは、ストーリーの流れはもちろんのこと、キャラ設定を生かすことに長けていると感じる。初めに、主人公の大体の性格や考え、行動を示し、その後に根底は変わらないものの言葉の選択や感情、表情などでその人がどう変化するかを読者にわかりやすく教えてくれる。
この事件を通してこの主人公がどう変わるのだろうとワクワクさせてくれる。元彼の遺言状を読んで、まだまだ読み足りないと言う人にぜひ2巻目に手に取ってほしい本である。


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