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元彼の遺言状 新川帆立

女優の綾瀬はるかさんが主演でドラマ化もされた本書は、どこの本屋に行ってもお薦めされていて、読んでみたい本だった。
この度、仕事場の上司が、本書と続編の「倒産続きの彼女」を貸してくれたので、読むことができた。
読んだ感想としては、「面白い」この一言に尽きる。
どこが面白かったかを説明すると、まず主人公の剣持麗子が彼氏からプロポーズされるシーンから始まる。しかし、剣持は彼氏からもらう婚約指輪にケチをつける。「私の価値は平均程度しかないってこと?」貰った指輪が45万程だったことに驚きとショックを隠せず、彼氏に言う。「私は世間の平均通りの女だと思ったことはないし、平均が40万だとしたら120万の指輪が欲しいの」そう言い残し、剣持は自分の働く弁護士事務所に帰って行く。衝撃が走った。今の時代、プロポーズ自体が貴重なものとされているなか、プロポーズもされ、45万の指輪も用意されていながら、自分の価値はその程度じゃないときっぱりといい、夜遅いとも構わずに自分の仕事場に帰っていく様。出だしからこの剣持麗子という女性に心奪われた瞬間だった。ストーリーは、題名にもあるように「元彼」が関係している。剣持の大学時代に付き合っていた元彼の朗報を聞き、その後、元彼の遺言状が世間に公開されストーリーが展開していく。
この本の中で、剣持という女性を好きになる瞬間がいくつかある。その中に、剣持は元々お金に執着した性格であるが(指輪の一連でも分かるように)、遺言を公表した元彼の資産には目もくれない。剣持は資産目当ての友人に加担したりするが、あくまでも成果報酬でお金をもらう手段をとる。
剣持は、お金に執着があるが、そのお金は自分が働いてもらうことに意味があると思っている。時に厳しいことを発言するが、その分自分にも厳しい性格で、剣持を支えているのは、自分への強い自尊心であるとこの小説から読み取れる。
現代では、女性の社会進出も積極的になっているが、剣持のようにどこに行っても強気の姿勢で物おじせずに接することができる人は少ないのではないか。私も社会人になり思うのは、自分の意見や考えを堂々と言うのは難しいと言うことだ。だからこそ、この小説から感じる剣持の行動力や勇敢さに惹かれる。
この小説はミステリーであるが、重たい内容でないため、スラスラと読み進むことができる。本屋でお薦めされていた通り、万人に愛される作品となるだろう。

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