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A-5トリプルドロー:導入編

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原文はこちら。
https://www.cardplayer.com/cardplayer-poker-magazines/66521-global-poker-36-17/articles/24886-ace-to-five-triple-draw-lowball-an-introduction
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by Kevin Haney | Published: Aug 09, 2023



■A-5TDと2-7TDとの比較

A-5TDは比較的単純で直線的なポーカー種目である。ナッツはA2345であり、ストレートもフラッシュもあなたにとって不利にはならない。根本的にA-5TDは2-7TDと同じゲームであるが、ハンドランキングが以下のように異なっている。

(A-5TDにおいて)A(エース)は、配られるカードの中で最も良いカードであるが、それは2-7TDにおける2(デュース)ほど重要というわけではない。Aのないホイール3枚(※1)でも、アーリーポジションからですらプレイしやすいハンドである場合が多い。エクイティはかなり接近しており、すべてのドローゲームと同様ではあるが、ポジションが非常に利益に直結する。

A-5TDはミックスゲームにおいて2-7TDほど流行ってはいないが、それはA-5TDが(2-7TDほど)複雑ではないと考えられているためである。これは大筋正しいのだが、少なくとも表面上はということである。2-7TDと比較した場合、A-5TDでは相手にブレイクもしくはフォールドさせる目的の、スノーブラフやターンでのセミブラフレイズが圧倒的に少ない。(※2)

2-7TDでは、マージナルな1枚ドローハンド、特にストレートになりうる1枚ドローハンドはブラフに転換することがより推奨される。一方A-5TDにおいては、ストレートによってハンドが台無しになることがないので、3457のようなハンドをもつプレイヤーは甘んじてシンプルにドローしてショーダウンで勝てるハンドを完成させることに期待するのがほとんどである。

相手にパットを崩させるためのセミブラフレイズもA-5TDにおいてはそれほど頻繁ではないのだが、それは相手がパットを崩したくなるようなハンドを持っているケースがそれほど多くはないからである。


■具体例

2人のプレイヤーが2ndドローでお互い1枚ドローした後、75432をもつプレイヤーのターンのリードベットに対して相手からレイズが返ってきた場合を考えてみよう。6low以上のメイドハンドの一般的なバリューレンジ(レイズ)に対して、75432をブレイクして(崩して)2345で1枚ドローするのはあまり腑に落ちるものではない。

ワーストシックス(65432、6lowの中で最も弱いハンド)を作っても大抵の場合役に立たないであろうし、残された手段はデッキにある何枚かのA(おそらくほとんど残っていないだろうが)から1枚を引くことだけであろう。アグレッシブな相手に対する最善のプレイは、大抵の場合スタンドパットして相手がチェンジするのを期待することであるが、A-5TDにおいてそれはまず期待できないであろう。タイトで素直なプレイヤーであれば、前述のレイズに対してフォールドを考慮する余地は大いにありだ。

ブレイク(パット崩し)を考慮するのは、A234もしくはA235のプレミアム1枚ドローハンド、つまりナッツ級のハンドを完成できるドローハンドの場合のみにすべきである。A-5では、パットするかもしれない相手に対して、良い7low(good sevens)
でバリューレイズしようとは思わない場合が多い。したがって、(プレミアムドローなら)ナッツを引きにいった方が絶対に良い。(※3)

2-7TDにおいては、上述と同様の、2人のプレイヤーが2ndドローでお互い1枚ドローした後、最初にアクションするプレイヤーがメイドハンドでリードベットしたような場合、大抵のケースではレイズを返されるとリードベッター側はブレイクする(パットを崩す)場合が多い。2-7TDでは、ほとんどのプレイヤーがキーとなる「2」を持って参加してくるため、パットを崩してもなお86lowもしくはそれ以上のバリューレイズレンジに勝てるアウツを多く残すハンドを持っている可能性が(A-5TDに比べて)高いのである。(※4)

■実践例

A-5TDでは、大抵の場合レイズは(2-7TDに比べて)より多くのリスペクトをもらえるので、我々はそのことを上手く活用して、それほど強くないハンドを持っていると踏んだ相手を狙い撃ちできる可能性を秘めている。例えば、WSOP会場内のあるキャッシュゲームにおいて、私はA25でBTNからオープンレイズし、SBがそれにコールした。SBは1枚ドローしたのだが、そのアクションによって私はSBが3467のようなラフな(※5)7lowの1枚ドローの可能性が高いのではないかと考えた。もしSBが6low以上の1枚ドローであるなら(プリドローで)3BETしていた可能性がかなり高く、このようなアンバランスでパッシブなプレイによって、SBはハンドをマックすることになったのである。

相手のSBはフロップでリードベットをしてきた。BTNの私はハンドがA245に改善したが、ジャストコールにとどめた。SBはパットし、その瞬間、私はどういう方法であれ最終的にはポットを獲得できるのでは?という感触をもった。私のプランはドローしたカードに関係なくターンでレイズし、SBが弱いパットハンド、それもパットを崩せないようなハンドを持っているのかテストするというものであった。

その時のポットは比較的小さかったが、私のターンレイズがすぐさま利益になるには約32パーセントで相手のSBがフォールドしてくれさえすれば良かった。(※6)また全体で言えば、フォールド頻度はこの数字よりももっと少なくて良く、それは事実上ほぼSBからの3BETはないし、SBがコールした場合私にはSBのマージナルなハンドに対して多くのアウツがあるに違いなかったからである。さらにいえば、私のハンドが完成した場合リバーでコールして貰えるかもしれないし、7542Aだったとしてもバリューを取りに行っていただろう。

私はペアになるAを引いてしまったが、レイズのためのチップを出し終える前にSBの相手がハンドをマックしたため、それはあまり問題ではなかった。私がやったようにタイトなイメージを作ることは非常に有効だが、SBの相手は、プレミアムドローハンドを持っていないという事実を強調して私のターゲットとなることによって、自らを不利な立場に追い込んでしまったのだった。

■終わりに

A-5TDには、当初の見た目や、そもそもの微妙な差異といったもの以上の奥深さがあり、mixゲームに追加すべき非常に価値のある種目である。A-5TDはスプリットポットゲームのヘビーローテーションの間に組み込むべき“one winner game”(原則ベストハンドを持つプレイヤー1人がポットを総取りするゲーム)の一種であるという事実もまた良い。

個人的な話をすれば、このゲームは今まで幾度となく自分を駄目にし、そして幾度となく自分を大きく成長させてきた。我々には、様々な決断をする上で、もしくは然るべき時に然るべき対応をする能力という点で、自分にとって心地良さを感じるようなポーカー種目が一定数あるというのが大半であるが、私にとってA-5TDはまさしくそれなのだ!

ー完ー



□(巻末)訳者注釈一覧

(※1)
一般的に「ホイール」とはA2345のストレートを意味するが、ローボールゲームにおいては、A・2・3・4・5からなるコンビネーションのことを意味する。A以外のホイール3枚とは「234・235・245・345」を指していると思われる。

(※2)
“break(ブレイク)”とは、パットハンドを崩してドローすることである。
“Snowing(スノーブラフ)”とは、ショーダウンで勝つ可能性のないハンドでスタンドパットする際のブラフのことである。

(※3)
これまでの筆者の見解をまとめると、
・A-5では、ターンのレイズは相当強い

・6low以上の可能性大

・75432はブレイク(パットを崩)しても、Aを引かないとほぼ負けか良くてチョップ(6引いた場合)

・タイトなプレイヤーだったらフォールドも全然あり

・ブレイク(パット崩し)して良いのは、プレミアム1枚ドローハンド(A234X、A235X)になる場合。これらのハンドについては絶対ブレイクした方が良い。
このような流れになっているかと思われる。

(※4)
「2」を持っていない場合のベストハンドは“86543(♯9)”となる。

(※5)
rough⇆smooth。badugi等でも使われる単語で、“Smooth 7 high tris or better(スムースな7ダイ以上)”のように使われる。A27、A37などのように、ドローしている途中で7に替えて3や2(もしくは4)を引くと強いダイ(A23、A24等)を完成させることができるハンド。本文中の意味としてはそういうスムースではないハンドという意味。

(※6)
結論からいうと、この部分の計算は筆者が勘違いしており、正確には“32%→30.77%”かと思われる。
状況を整理すると、筆者が言うには、BTNから2BBでオープンして、SBがコール、BBはフォールド(アンティはなし)。フロップでSBの1BBベットにコール。ターンでSBの2BBベットに対して4BBにレイズする場面である。
この時4BBレイズ直前のポットは9BBなので、ブラフの必要成功率は4/(4+9)≒30.77%である。
おそらく筆者は、相手側のポジションを「SB→BB」と勘違いしたかと思われる。相手がBBであれば、同様に計算すると、4/(4+8.5)=(ちょうど)32%になるからである。
なお、この計算の詳細に関しては”α(アルファ)“や”MDF(最小ディフェンス頻度)“を参照すると良いかと思われる。




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