見出し画像

NL2-7SDにおけるパットハンド分布を用いた意思決定

□■□■□■□■□■□■□■□■
原文はこちらから…
https://www.countingouts.com/deuce-to-seven-pat-hand-decisions/□■□■□■□■□■□■□■□■



NL2-7SD(ノーリミット2-7シングルドロー)は、すべてのポーカー種目の中で最も純粋だと表現されることが多々ある。そして、あなたは何度も、「相手はそのハンドを持っているのか?持っていないのか?」という単純なひとつの問いに関わる重大な決定に直面する。しかし、その中にはほとんど純粋に数学に基づいた決定もある。NL2-7SD単体にせよミックスゲームの一部としてにせよ、そのゲームを選択することに関心があるプレイヤーは、(アクションの)意思決定において手助けとなる原理原則の確固たる基礎を持たねばならない。その中の一つとして、パットハンド分布に関する知識がある。パットハンドとはそのハンドを崩してもっと良いハンドを作ろうとする意図がないという意味で完成したハンドのことである。パットハンド分布によれば、数学的には強いパットハンドと比較して弱いパットハンドの割合の方が非常に多いことがわかる。この記事ではこの分布に関して詳しく述べるとともに、この情報をどのように活用すれば良いのかについて具体例を取り上げようと思う。


ストレートとフラッシュはあなたにとって不利になるため、NL2-7SDの最強ハンドは23457(フラッシュは除外)である。7パットは他に23467、23567、24567の3種類のみである。しかし、8パット、9パット、Tパット、Jパットにはもっと多くの種類がある。

上の表の1番下を見て、どれくらいの数のハンドの組合せがあるかに注目して欲しい。Jパットの組合せは7パット、8パット、9パット、Tパットの組み合わせをすべて足し合わせた数よりも多い(※1)。また、NL2-7SDにおける重要な事実として、Jパットは1枚ドローハンドに対して概ねフェイバリットであるということが挙げられる。これらのことから、多くのプレイヤーはプリドローにおいてすべてのJパットをアグレッシブにプレイするだろう。また自分のハンドが相手に筒抜けになることを避けるため、多くのプレイヤーは(他の)すべてのパットハンドを同じように(統一して)プレイするだろう。

このようなことから、自分と相手が両方パットした場合、相手のJパット以上のレンジに対して自分がベストハンドを持っている可能性がどれほどあるのかを知っておくことはしばしば有用である。

この表は、自分の持っているカードに基づいたカード除外(効果)を考慮していないという点でやや極端(で時に紛らわしい)かもしれない。例えば、自分が96542を持っている場合、相手が9を持っている可能性は少なくなる。また、上記の表は幾つかのハンドを同じグループとして一括している。例えば、上記の表では98432は98764と(一括して)“ties”であると仮定している。とはいえ、この表はクイックガイドとして非常に便利である。

以下、いくつかの具体例をみて、この表をより正確に活用していこう。

■事例1


オールインに対して、Tパットをキープするか?ナッツをドローするか?

10$/20$キャッシュゲーム(5$ante)

BTNのあなたまで全員フォールドして、あなたのハンドはT7432である。あなたは60$にレイズ。SBはフォールドしてBBはトータル80$のオールインをした。あなたは平凡に20$のイージーコール。BBはスタンドパットした。BBはショートスタックでJパットは1枚ドローに対して総じてフェイバリットである。以上のことから、BBのレンジは7パット-Jパットと仮定できる。ここであなたのアクションはスタンドパットだろうか?それとも1枚ドローだろうか?

まず、(T7432は)7パット(4)、8パット(14)、9パット(34)には現状負けており、その合計は52ハンドである。Jパットには現状勝っており、それらは125ハンドある。

Tパットのうち5種類(T5432・T6432・T6532・T6542・T6543)だけには現状負けている。T7432とはチョップになるが、残りのTパット63種類には現状勝っている。しかし、自分がTを持っているため、カード除外効果によって相手がTを持っている可能性は25%少なくなる。したがって、自分がTを抑えているという事実によって、Tパットについてはディスカウントをする必要がある。この理由により下記の計算式では75%(×0.75)という数字が適用されている。

現状負けている総ハンド数:
4(7パット)+14(8パット)+34(9パット)+5×0.75(キッカー負けTパット)
=55.75

現状勝っている総ハンド数:
63×0.75(キッカー勝ちTパット)+ 125 (Jパット)
= 172.25

以上を踏まえると、あなたがスタンドパットすることで勝てる確率は、
172.25/(55.75 + 172.25)= 75.56%
である。
一方で、もしあなたが1枚ドローをした場合にはアンダードッグになってしまうだろう。T7432の1枚ドローはJT986に対してですら45.2%の勝率しかないのである。

(注意)
あなた(T7432)は7も自分で抑えているため、厳密に言えば7パット・87XXX・97XXX・J7XXXについても(Tパットの時と)同様にディスカウントをする必要がある。しかしながら、この例においてそのことについて詳しく考慮する必要はない。これを加味したところで(こちらの)勝率が上がるだけである。さらに言えば、(上記を考慮するのであれば)我々はBBがQを持っている可能性があることも同様にまた認めるべきなのである。

この結果を知って新入りプレーヤーのうち何人かは驚くかもしれないが、それは彼らがプリドローのパットハンド分布において7パット・8パット・9パットと比較した際Tパット・Jパットがどれほど多くあるのかを理解していないからである。(そんな)彼らは(自分のハンドT7432は)9パット以上のすべてとTパットの一部に現状負けていると頭の中で考えた上で自分のハンドが非常に強い1枚ドローハンドであることを確認し、1枚ドローを決心するのである。そのような思考は重大な誤りであるのに。

しかしながら、カード除外効果を考慮すればJ7432はパットを崩さなければならない。上記の表を参照すると、カード除外効果を考慮しなければwin/”tie“の確率は48.8%であることが分かる。カード除外効果を考慮すると、自分が現状勝っているJパットのうち25%が除去されることになるので、カード除外効果によって1枚ドローした方がはっきりと正しくなる。(※2)(→【補足説明】参照。)

□■□■□■□■□■
【補足説明】
この段落は筆者的にはおそらく、

・自分がJをおさえている
→→
・相手がTパット以上の可能性が上昇する
→→
・Tパット以上にはデットである
→→
Jを交換した方が明確に良い

という流れでこの文章を書いているものと思われるが、この部分に関して「J7432は1枚ドローではなく依然としてパットが優勢である」という指摘を受けた。
理由としては、詳細な計算(式省略)をするとJ7432のJパット以上に対する勝率は48.0%(ブロッカー非考慮)・45.1%(ブロッカー考慮)となり、確かにJのブロッカーとしての効果は一定程度あるものの、Tパット以上の割合が極端に上昇するわけではないため大勢は変わらず、一方でJ7432を1枚ドローした場合のJパット以上に対する勝率は、これまた詳細な計算(式省略)をすると約40%程度(<J7432パット時の勝率=45.1%)となり逆に損になってしまうため、とのことであった。
1枚ドローした方が良いケースを挙げるとしたら、相手がタイトでTパット以上でオールインしてきている可能性が高いと何らかの別な事情から推測した場合、自分がJを持っていることがその可能性をさらに後押しするので、そのようなケース等では1枚チェンジする選択肢も十分ありうると考えられる。
□■□■□■□■□■


■事例2


1枚ドロー後の98432はチェックかベットか?

$5/$10キャッシュゲーム(10$BTNante):
ES(エフェクティブスタック):$1000

SBのあなたまで全員フォールドして、あなたのハンドはK8432、あなたは30$にレイズ。BBは110$にリレイズ。リレイズはオプションであるが、あなたはコールして1枚ドローすることにした。相手はスタンドパット。(1枚ドローの)あなたは98432。

ここであなたのポストドローのアクションプランは??

我々はまず初めに、BBの持っているハンドについて幾つかの仮定をする必要がある。BBには(SBのアクションをみてから)最後にアクションをするアドバンテージがあり、レンジも故にキャップされていない。これが意味するのは、BBはモンスターハンド(7パット・8パット)もマージナルハンド(Tパット・Jパット→ポストドローでこれ以上ベットせずにショーダウンさえできれば嬉しい)もどちらも持ちうるということである。BBはピュアブラフハンドを持っている可能性も同様にあり得る。

BBがJパット以上の全て(といくつかのブラフを加えて)でリレイズすると仮定すれば、SBのあなたはベストハンドを持っているという点で大きくフェイバリットであるということを直ちに認識すべきである。(※3)

では、BBのリレイズレンジをTパット以上の全てに絞った場合はどうか?

98432はTパットの全てに現状勝っている。そして34種類の異なる9パットのうち18種類(98532〜98764)にも現状勝っている。(※4)

ここで、カード除外効果を考慮して、8パットと9パットのすべてについては25%ディスカウントを加味する必要がある。さらに、同様にしてT8XXXとT9XXX(合わせて54種類ある)についても25%ディスカウントを適用しよう。

現状負けている総ハンド数:
4(7パット)+14×0.75(8パット)+15×0.75(キッカー負け9パット)
=25.75

現状勝っている総ハンド数:
18×0.75(キッカー勝ち9パット)+ 15(T6XXX以上のTパット)(※5)+54×0.75(T8XXXとT9XXXのTパット)
= 69

以上から、たとえ相手のBBがTパット以上でリレイズするとしても、ベストハンドを持っているという点においてSBのあなたはおおよそ73.6%【=69/(24.75 + 69)】フェイバリットなのである。(※6)

しかし、多くのプレイヤーはJパット以上でリレイズするであろうから、全てを考慮すればこの状況においてベストハンドを持っているという点では大抵の場合80%以上フェイバリットである。もし仮にBBがジャストコール→スタンドパットしたとすれば、BBのハンドは基本的に非常にマージナルな弱いハンドとして筒抜けになってしまう。このような理由により、多くのプレイヤーはTパットよりも弱いハンドの多くでリレイズをすると仮定できるのである。

それでは、ポストドローにおいてSBの我々はチェック/コールすべきだろうか?チェック/フォールドなのか?ベットなのか?それともチェックレイズを狙うのか?

チェックした場合、BBはあなたに現状負けているハンドのほとんどを広くチェックバックすることになるだろう。BBはJパットとTパットの多くでほとんどの場合喜んでチェックバックし、ポットを獲得できるか確認するであろう。彼らのほとんどは現状勝っているハンドのみでバリューベットするため、彼らのレンジにおける“スノーブラフ”の割合を大きくすることで、この(SBの)コールを利益的なものにしていく必要があるはずだ(スノーブラフとは、ショーダウンで勝つ可能性のないハンドでスタンドパットする際のブラフである)。(※7)したがって、チェック/コール体制が理想的なラインとは思えない。チェック/フォールドは、もし相手(BB)があなたに現状負けているハンドでバリューベットしてくるかもしれないとしたら損であるし、もしくはBBの相手がトリッキーで頻繁にスノーブラフしてくるとしたならこれまた損が大きい。要するにまとめると、もしあなたがチェックばかりしているとしたら、それはあなたがポストドローで大きなベットをされたらどうすれば良いのかについていつも心配してばかりいるということなのだ。そして、ポーカーにおいてそのような心配ばかりしているのなら、大抵の場合勝利することはできないであろう。

相手(BB)のハンドのほとんど大半に現状勝っている以上、あなた(SB)はベットすることにより相手をがっかりさせなければいけないのである。このベットは相手のTパットとJパットを(バリュー)ターゲットにし、相手にタフな判断を迫る必要がある。また、ベット額は相手のやる気を失わせてしまうほど大きな額にしてはいけないし、相手があなたのベットに対してレイズを返しやすくなるほど小さな額であってもいけない。このような(小さすぎる・大すぎる)ベットはシンバリューベットあるいはブラフベットとなってしまい、あなたはそのベットのせいで非常にタフな決断を迫られることになるだろう。

以上のことから、このような状況においては大抵の場合ポットの2/3程度の額をベットするのが適切である。ポットの2/3のベット額は相手がコールをするために1:2.5のオッズを課すことになる。同様にして、この(バリュー)ベットのバランスをとるために、ドローをミスした際のあなたのレンジにブラフがある程度存在するべきである。自分のハンドのうち上から2枚のハイカード(このケースでは”8“または”4“)とペアになる6枚でブラフするのが、この状況において理にかなったブラフ戦略となる。(※8)勿論、あれこれ方法を使って相手をエクスプロイトできる手応えを感じたならば、この戦略は微調整して頂きたい。

チェック/レイズは、クリエイティブかつ大胆かもしれないが、非常に採算の悪いプレイラインになってしまうように思える。あなたは相手のスノーブラフによるベットはもらえるが、(それ以外は)相手はあなたが97652のようなハンドを持っている場合にそれより少しだけ良い程度のハンド(98lowなど)をせいぜいベット/フォールドするのが関の山である。また、あなたは9を抑えているため相手が9パットを持ちうる可能性は少なくなる。これは裏を返せば、相手がTパットとJパットを持ちうる可能性が多くなるわけなのだが、すでに述べたように、BBはこれらのハンドをチェックバックすることがほとんどであり、SBであるあなたはバリューを失うことになってしまうのである。

ほとんど大半のプレイヤーがこのような状況においてはチェック/コールをしがちである。しかし、ポーカー理論における確立した背景知識や予備知識に基づいたパットハンド分布に関する知見を活用することによって、このハンドや他の多くのシチュエーションにおいてより一層利益的なプレイができるようになるだろう。

■まとめ


あなたがどのようにプレイするかを決定する際、最終的には単純な計算問題に帰着することもあるため、そのような簡単な事柄に関しては当然十分に理解をしておくべきである。しかしながら、NL2-7SDは心理戦の様相を呈することが多々ある。従って、相手がどのようなハンドレンジを持ちうるかに関する実践的な知識でもって重武装した上でこの(心理戦の)戦いに臨む必要がある。このことがNL2-7SDにおいて非常に重要であるのは、他のポーカー種目と同様なのである。

〜完〜


□(巻末)訳者注釈一覧

(※1)
表の通り計算すると、
7パット+8パット+9パット+Tパット
=4+14+34+69=121
となり、Jパット(=125)の方が多い。

(※2)
最後の文章は原文だと、
Card removal would remove 75% of the jacks you beat and …
だが、文法と文脈からして「75%→25%」の記載間違いではないかと思われる。
そのように訂正後、本記事の計算方法に従うと、カード除外効果を考えなければ、J7432がBBのスタンドパットに現状勝っているorチョップになるのはJパットのみで、
10(J7XX)+20(J8XX)+35(J9XX)+55(JTXX)
=120(表の通り)
なので、Jパット以上の総ハンド数(246)で割ると、
120÷246≒48.8%(表の通り)
ここでカード除外効果を考慮すれば、自分が抑えているJ1枚によって25%のハンドが除外されるわけであるから、
120×0.75÷(246-120×0.25)≒41.7%
となり、明確に1枚ドローした方が良いということで辻褄があうと思われる。

(※3)
上記の表を参照すると、カード除外効果を考慮しない場合、98432(98perfect)のwin/“tie”の確率は(246-33)÷246≒86.6%である。カード除外効果を考慮したとしても大きくフェイバリットであるということに変わりはないであろう。

(※4)
18種類すべてを数え上げると、
98532・98542・98543
98632・98642・98643・98652・98653・98654
98732・98742・98743・98752・98753・98754・98762・98763・98764
となる。

(※5)
「T6XXX以上」と記載されているが、「T7XXX以上」の間違いかと思われる。
1(T5XXX)+4(T6XXX)+10(T7XXX)=15
なので、これで辻褄があうはずである。

(※6)
“現状負けている総ハンド数”の数字が24.75になっているが、25.75の間違いだと思われる。
従って、計算し直すと、
69÷(25.75+69)≒72.8%が正しい数値かと思われる。

(※7)
BBが7パット・8パット・9パットでバリューベットし、Tパット・Jパットをチェックバックするとした場合、バリューとブラフの比率の観点から、プリドローでの“snow”の割合が多くなる。したがって、この場合のBBのベットはかなりポラライズされたもの(7パット・8パット・9パット・”snow”)になるので、SB的にはあまり好ましくはないだろうという趣旨の記述かと思われる。

(※8)
この部分はやや難解にもかかわらず説明不足かと思われるので、独自の推測ではあるが補足してみる。
本文より、ポットの2/3の額のベットに対してBBがコールするためのオッズが1:2.5であるため、こちら(SB。K8432からの1枚ドロー)は、バリュー:ブラフ=2.5:1の比率でベットすればバランスが取れていることになる(詳細は「無差別化の原理」や「千里眼ゲーム」を参照)。K8432から1枚ドローしてバリューベットを打てるのが9low以上とすると、アウツは
4(98low)+4(87low)+4(86low)+4(85low)=16(枚)
であるから、ブラフのアウツは16÷2.5=6.4(≒6)枚あれば良いことになる。したがって、1番弱い3枚の“8”(自分がすでに8を持っているのでこの場合は3枚)と同じく3枚の“4”でブラフすればちょうどバランスが取れるという趣旨の内容かと思われる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?