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キャタピラスープの1000日 - 喪失から再生への旅路

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30代で夫と死別した「零」の日記。「わたし」を構成していた価値観やアイデンティティといったものは、どろどろに溶けてしまった。自分に深く潜り込み、いつの日か、自分の「コクーン(繭)…
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#恋愛小説家

自己紹介:「キャタピラスープの1000日」

「忘れないで。わたしを忘れないで、置いていかないで。」 その声は、たしかに聞こえたのだ。 はじめは、午前中の明るい日差しのなかで。 つぎは、その夜。温かなお風呂のお湯のなかで。 それは、「あの頃のわたし」の声だった。 悲嘆の日々を記すこと 2018年の夏。最愛の夫が、あちらの世界に旅立った。 出会いからずっと一緒だった10年の「私たち」の日々は突然終わりを迎えて、真っ暗闇の、いわゆる「悲嘆の日々」が始まった。 「死」は遠かった。なのに突然目の前に降ってきて、そこら中

2018/09/07 「良いお葬式だった」

7:33 昨日の葬儀には、たくさんの人が来てくれた。 その範囲は小学校の同級生から仕事やサンディエゴ時代と多岐に渡った。これだけたくさんの人に愛されている奏くんを、私はひとりじめしてたんだ。 「良いお葬式だった」 義父母が、そして隆が、そう言ってくれた。大きな安堵感に、「重さ」を背負っていたんだなと気づく。 “You make me want to be a better man.“ 映画「恋愛小説家」の有名なワンフレーズを思い出す。「君がいるから、もっとましな男に