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キャタピラスープの1000日 - 喪失から再生への旅路

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30代で夫と死別した「零」の日記。「わたし」を構成していた価値観やアイデンティティといったものは、どろどろに溶けてしまった。自分に深く潜り込み、いつの日か、自分の「コクーン(繭)…
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#位牌

自己紹介:「キャタピラスープの1000日」

「忘れないで。わたしを忘れないで、置いていかないで。」 その声は、たしかに聞こえたのだ。 はじめは、午前中の明るい日差しのなかで。 つぎは、その夜。温かなお風呂のお湯のなかで。 それは、「あの頃のわたし」の声だった。 悲嘆の日々を記すこと 2018年の夏。最愛の夫が、あちらの世界に旅立った。 出会いからずっと一緒だった10年の「私たち」の日々は突然終わりを迎えて、真っ暗闇の、いわゆる「悲嘆の日々」が始まった。 「死」は遠かった。なのに突然目の前に降ってきて、そこら中

2018/09/27「生も死も日常。生きている人が元気でいることが大事。」

10:10 奏くんの部屋に置かれた後飾り祭壇には、遺影に遺骨、そして白木の位牌(仮位牌)が飾られている。戒名ではなく「小西奏」がそのままに記された仮位牌。 「仮」と名のつく白木の位牌は、四十九日法要の際に故人の魂を抜くという「閉眼供養」を経てお焚き上げされる。抜かれた魂は「開眼供養」を経て、黒塗りの立派な「本位牌」となって仏壇などで祀られる。 本位牌を作るのには二週間ほどかかるらしく、葬儀社から「そろそろですが、どうしますか」とリマインドが入る。本位牌を作るのか。そして