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落ち葉をひろいに

その土地に暮らす人々にとって安全で豊かな環境を保つためには、見えない土のなかから健康な状態を保たねばならない。

高田宏臣
「土中環境 忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技」より

気持ちの良い庭をつくるのに、落ち葉は欠かせない。

春に芽吹いた落葉樹は、陽の光を浴び風にそよぎ、夏に向かってわさわさと賑やかさを増していく。涼やかな風が木陰を流れる夏を過ぎれば、葉は日に日に色づいて、木枯らしにその枝を離れる時を迎える。大地に降り立った葉は、再び大地に還っていく。季節がまた巡って、そこには水と空気が循環する健やかで豊かな大地が育まれていく。

土中環境の改善には欠かすことのできない落ち葉。でも自宅周辺では集められるところがほぼ無い。杉は至るところにあるが、落葉樹が無いのだ。

しかも、理想的な多様な樹種の混じった落ち葉ともなると、本当に限られる。

2月も半ば、落ち葉を拾うシーズンとしてはギリギリだ。

駆け込みで「ポイント」へと向かった。

大地に還っていけない、例えばアスファルトの上など、に堆積した落ち葉を集める。

土の上にある落ち葉を取ることもある。この時、心がけたいのは、土が落ち葉で覆われている状態に留めること。丸見えになった表土を強い雨が叩けば、それだけでも土地にはダメージとなる。

多様な落ち葉がある優れたスポット。集められた落ち葉はふかふかのベッドのようで、つい飛び込みたくなる。

なにかを見つけたようだ。

「菌糸だね」

しっとりした黒い土を覆う落ち葉層から一枚、つまみ上げた落ち葉には毛細血管のような白いものが広がっている。

菌糸とは、菌類、細菌、バクテリアといった無限ともいえる微生物のつながり的な存在なのですが、このネットワークこそが土中の多様な生き物たちの命の循環を支えているのです。

高田宏臣
「よくわかる土中環境」より

一枚の落ち葉に見られる菌糸は、いつか土中を血管のように張り巡らされた菌糸ネットワークの一部となり、菌糸が生息する土地は、水や空気、情報や養分などが循環する健やかで豊かな大地となっていく。

前はなんかちょっと気持ちわるい感じがして避けていたけど、知れば知るほど菌糸のすごさに驚く。
植物の根っこと共生することで受け取った養分や、様々な物質(朽ちた樹木や動物の死骸など)を分解して変わった養分を分配したり、水を浄化し水脈を育てたり、植物たちのコミュニケーションチャンネルともなるらしい。

まるで土中のインフラだなと思った(実際にはインフラ以上だが)。空気、水、食料、そして情報が、そのネットワーク上で交わされているのだ。

菌糸の貼っている落ち葉のあった辺りをかき分けてみる。いわゆる「団粒構造」が、しっかりと保たれているらしい。アスファルトの上に堆積した落ち葉が分解されていく過程があったのだろう。

団粒構造とは、多孔質な土壌構造、軽くて水はけが良く、なおかつしっとりとしていて適度な水分を含む。(中略)温度や湿度変化も穏やかで、恒常性を保ちやすく、その土壌環境は、微細な菌類や微生物たちの生育環境として最適な環境と言えます。

高田宏臣
「よくわかる土中環境」より


ぎゅーーーーーっと押し込んで、トンパックいっぱいになった。

シーズンギリギリ駆け込みセーフだ。

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