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ホンダ鈴鹿のイノベーション(これも社会人野球のお話)

「雑誌読んだけど、ホン鈴の一言も書いとらんやん!どうなってるの?」
いつもの人懐っこい笑顔でそのイノベーターは私に語りかけました。

昨年2019年11月に発売された「ベースボールマガジン」にて筆者はえのきどいちろうさんらと社会人野球応援に関するインタビュー鼎談に参加しました。
野面で参加したため、帰り道にアレもコレも言い忘れたな‥と頭を抱えてしまいました。その際たるものを突かれたのが冒頭のコメントです。

三重県鈴鹿市にあるチーム、ホンダ鈴鹿。
企業名と地域名称がフィットするチームです。
なぜこのチームの野球応援が語るべきポイントがあり、なぜ忘れてしまったのでしょう。

まず社会人野球の応援スタイルを説明します。

社会人野球応援の基本パターンとして、曲→コールを繰り返します。曲は打者ごとではなく試合局面ごとに変えていき、コール(「かっとばせー◯◯」みたいな掛け声)は曲に付随する形で変わります。
例えば先頭打者が入り、このイニング最初の曲を選ぶと得点圏に走者が出たり、試合の流れを変えたいと応援団が判断するまで曲を変えずに曲→コールのループを繰り返していきます。

応援団のリーダーや団長の腕の見せ所は選曲にあると思います。ここぞというタイミングでスタンドとグラウンドが一体となって攻撃する雰囲気を作り上げる選曲センス、これがズレると「なにやっているんだよ!」とスタンドからご不満のムードが出てしまいます。
かといってワンパターンでも面白くない。「なにやっているんだよ!」と思わせて、スタンドの想定を上回る選曲を仕掛けるなんてこともあります。これが成功するチームはグラウンドの選手とドライブしてポンポンと勝ち上がっているイメージがあります。

さてホンダ鈴鹿に話を戻します。

曲を変えるタイミングとしてコールをしている間に次の曲を待ち構える準備をします。これは応援団、ブラスバンドだけではなくスタンドの観客も一緒です。

ホンダ鈴鹿は基本的にコールはしません。

曲をノンストップで繋ぎ続けるスタイルをとっています。相手投手交代時にも専用の曲を使ってつないできます。音楽と歌声を全開にして球場を包み込むのがホンダ鈴鹿の応援スタイルなのです。

この流れを違和感なく心地よく作り上げるには、応援団・ブラスそれぞれが試合の流れと応援席のムードを把握して「言われんでもわかっている」自動運転モードになるように鍛え上げることが必要です。

このギアチェンジがスムーズ過ぎることで、意識することすら忘れてしまったのかもしれません。

そんな心地よい空間を生み出すホンダサウンドを作り出したのが長谷川道治氏です。
冒頭のコメントを頂いたときも職場の皆さんと生産技術に関するお話をされていました。
「まぁ、なんでも企画屋やな」
社業でも応援でも他所ではやらないことを作り出すイノベーターなのです。
「平成に入ったあたりで応援スタイルを変えたんや。」
昭和の後楽園都市対抗から平成の東京ドーム都市対抗に変わった時期の変革。

新時代への変革のタイミングで応援もまた変革していったのです。先陣を切った長谷川氏の他にも、いまでは当たり前のように見聞きしているスタイルが当時は革新的なものであるケースがたくさんあるはずです。

「実はまた次のプランがあるやけどな」
イノベーションを止めない長谷川氏。

私も見習って社会人野球文化の掘り起こしを続け、未だみぬスーパースターを見つけ出していきます。

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