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最後の仕上げ

おーい大丈夫か? くそ、まだ生きてやがる。

あれだけやったのにまだ生きてるだって?

こいつ不死身か?

ホントにやっちまっていいんすよね?

頭はそう言ってたぜ。だがパチンコとか匕首あいくちは使うなってよ。

それで集団リンチっすか。あんたもついてねえなぁ。

じゃあ、そろそろ最後の仕上げと行きますか。

おう、さっさとやっちまおうぜ。



明日は葬儀だというのにやったヤツはまだ見つからんのか。

4~5人に囲まれてたそうなんですが、同業なのか素人さんなのかまでは。

やるせねぇなぁ。残ったもんには十分に頼むぞ。

かかあや好きな娘はいなかったようですが、年老いたお袋さんが一人いらっしゃったんで高級車一台分くらいは奮発してやろうかと。

そんなことしたら新たな事件が起こるんじゃねえのか。

ダメっすかねぇ。

後々に問題が起こらないようにしれくれりゃ、お前の裁量でやる分には文句はねえよ。

俺の弟分の舎弟だったんでつい。

それでやったヤツが見つかったらどうするつもりだ。

素人さんなら腕の1本くらいで矛を収めますが、同業なら同じ道を辿ってもらいますよ。

4~5人いるって言ってなかったか。

この際人数は関係ないっしょ。

まあそう力むな。

そうっすね。まずは見つけないと始まりませんからね。それにちょっと不思議なことがありますから。

不思議なこと?

オジキはヤツのこと御存じで?

数回声掛けてやったことがあるくらいだ。

俺は何度も会ってるし飯なんかも一緒に食いましたから何となくヤツのことは分かってるつもりなんですけど、どう考えても自分からは手出ししてねえんですよ。還ってきた姿見ましたけど拳なんかキレイなもんでしたからね。

ということは堅気の衆ってことかい?

最初の一撃で手出しができなくなったってことも考えられますからそこは慎重に。ただどこからも噂が流れてこねえんですよ。普通、素人さんであろうが、同業のヤツらであろうが、俺がやったって言いふらすバカが表れるんですけどね。

それがねえって言うのか。

そうなんすよ。だからこっちも深く潜らねえと無理かなって思ってまして。

なんか危険な臭いがしてきたな。

危険など一緒に生活してるようなもんですから。それに通夜に行った時にヤツに「お前の悔しさは俺が晴らしてやる」って言いましたから。

お前は下っ端思いだな。

下っ端がいてくれないと俺たちは成り立ちませんから。俺たちがふんぞり返っていられるのも、暴言吐こうが少々の暴力を振るおうが許されるのは下っ端がいてくれるからですよ。ヤツらには何でもアリっすからね。オジキもそう思いませんか?

俺にとっちゃ下っ端は下っ端だよ。俺も下っ端の時があって上を見ながらこの野郎とよく思ったもんだ。だから伸し上がろうとするヤツは嫌いじゃねえが行き過ぎは良くねぇ。カッコばかりつけてるとケガするぜ。

それ俺のこと言ってます?

お前は俺によく懐いてるじゃねえか。だから身内だと思ってるぜ。

じゃあ誰のことを。

一般論って言うのか、特定の人物のことじゃねえよ。

それにしては具体的でしたけどね。

まあいいじゃねえか。

そうっすね。そういえばオジキんとこ若い衆が増えたそうですね。今度顔合わせも兼ねて飯にでも連れ出そうと思うんですけどいいっすか?

そりゃいい、俺がどんな人物かしっかり叩き込んどいてくれ。

それじゃあ近いうちに若い衆お借りしますね。



やっぱりオジキんとこの若いもんが暴れたそうですね。

何の話だ?

この間オジキんとこの若い衆を飯に誘いましてね、さんざ飲み食いさせた上で鎌かけてみたら、ペラペラとくっちゃべってくれましたよ。最後には自慢話になってましたけどね。それでそいつ今ウチで預かってますから。

俺は何にも知らねえぞ。大方ウチの頭が出過ぎた真似をしたんじゃねえのか?

ええ確かに若い衆も頭の指示だと吐きましたから、今探させています。見つけ次第拉致とけってね。

おめえそんな勝手が許されると思ってんのかい?

この前話したじゃないですか、やったヤツには同じ道を辿ってもらいますって。ひょっとしたらオジキんとこずいぶん人が減るかもしれないと思って事前にお知らせしてるだけですから、怒らないでくださいね。それからこれは老婆心ですけど、オジキの名前が出でこないこと祈ってますから。

てめえいい加減にしろよ!

オジキんとこと俺んとこでドンパチ始めますかい?

てめえ。

俺はヤツの悔しさを晴らしたいだけでオジキを潰そうとは思ってませんから。だからオジキの名前が出ないように祈ってるんですから。

それで遺恨は残らねえのか?

オジキがOKなら、こっちはこれでケリつけるつもりっすよ。そうそう、今連絡が入って拉致ったそうです。第3倉庫に入れるように言ってありますが、オジキも一緒に来ますか?

いや、お前に任すよ。

そうっすか、じゃあこれで失礼します。

無事に戻ってくりゃ俺はお前の風下についてもいいぜ。

オジキはオジキっすから、そんな心配は無用ですよ。じゃあちょっくら借りを返しに行ってきますわ。
(2015文字)


11月に大流行した20字物語の自身最初の作のその後を書いてみました。


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