『合わせ鏡の間』青ブラ文学部
最近引っ越した家にはクローゼット用に造られた部屋があり、そこには全身が余裕で映せるような大きな姿見が二つもある
この二つは向かい合うように壁に埋め込まれてあり移動はできないが、服装の前や後ろを確認するのに非常に都合がいい
ある日の夜のこと
そろそろ寝ようかという時間なのに、何かに誘われるように私はクローゼットにいた
何気に合わせ鏡を覗いた私はそこに奇妙な景色を見ることになる
両方の鏡には徐々に小さくなった姿や周りの景色がいくつあるのかは分からないほどに映し出されている
私が覗き込んでいる鏡には私の後頭部が延々映っている
多分後ろ側の鏡には私の不思議そうに覗き込んでいる顔が映し出されているのだろう
飽きずに後頭部の映る私を眺めていた時、一斉にこちらを向く顔に変わった
それから一つ置きにこっちを不思議そうに見る私の顔が現れた
つまり、後頭部、不思議そうな顔、後頭部と延々と続いていることになる
そういうことってあるの?って思っているとこっちを向いた私の顔が突然話しかけてきた
こっちにおいでよ
そう言って鏡の中から出てきた腕が私を手招きする
こっちにおいでよ
鏡の中へ行くことなどどうすればいいのか分からないのにその言葉に誘われるように私は鏡に突進した
ガシャーンという音とともに私はその場で頽れた
意識が途切れる間際 私の声ではない甲高い笑い声が聞こえた
3日後
連絡の取れないことを危惧した会社の上司と警察が、割れた鏡の前で血だらけになりこと切れている私を発見することになる
私は鏡の中でどうすることもできない
今週も何とか間に合いました
山根さま よろしくお願いいたします