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小人の旅便り(2) イオニア海を見ながら

イオニア海というのは、イタリア半島のブーツの靴底のラインとギリシアの島々のラインが作る三角形にある海です。なんと歴史の深そうな。ブーツの靴底を列車で走ってみたいという気持ちに駆られて、決行しました。北イタリアの人々からは、「違う国みたい」と言われる南イタリア。私の知り合いのドイツ人はずいぶん前に、「貧しい人が夏の休暇で行く所」と言っていました。散々な言われよう。どんな海なのか、周りはどんな風景なのか、どんな人たちが住んでいるのか。
本当はこの海岸線のどこかの町で1泊して海に足を浸したかったんですが、電車のあまりの本数の少なさに断念。通過だけして、あとは目指すマテーラ(Matera)にその日のうちに到着することにしました。
爪先のレッジョ・カラブリアから鈍行で北東のクロトーネに向かうが、途中のカタンツァーロ(Catanzaro 人口8万5千人)に着くまで2時間半、本当に小さい村しかない。カタンツァーロを過ぎると海はますますきれいになっていく。レッジョ・カラブリアの博物館にあった「リアーチェの戦士」の銅像が発見されたリアーチェ沖のリアーチェとはこの辺りだ。この町のの現在はどんなものなのだろうと、検索してみたら、市長だったドメニコ・ルカ−ノという人が、2010年に世界ベスト市長賞の銀賞を受賞し、更に2017年にはドイツのドレスデン平和賞を受賞したそうだ。人口1,800人の町に難民450人を受け入れ、インテグレーションを促進し、更にそれによって廃校の危機に晒されていた学校を救ったのが功績らしいです。南イタリアというと、高い失業率ですが、どのように解決したんでしょうね。後日調べてみたいと思います。
7月、8月のハイシーズンには、海の家などが出て、賑わうそうです。調べてみたら貸別荘も色々あるようです。海は、海亀が産卵に来るほどきれいで、波は穏やかで、天気が良くて、ビーチには高層ホテルなんか無くて、最高じゃない?旅行中、治安の悪さを感じなかったし、ゴミの山も見なかったし。
ただ、相変わらず経済的に弱いし、人口過疎地帯なので、公共の交通機関が充実してないのが難点かもしれません。(列車の発着時間はドイツより正確でした。)先を急がない旅がお勧めです。
私は、今回残念ながら先を急がなければならなかったのです。右にイオニア海、左に荒涼とした乾いた山々をずっと見ながら。線路の一部が不通になっていて、代わりにバスが走って、駅を繋いでいました。乗り換えのためにスーツケースをゴロゴロ引っ張りながら走ったりと気を揉みながら、最後の乗り換えバスに乗ったのは午後4時半でした。そこから更に4時間半バスに揺られるわけですが、もう乗り換えが無いのと、革張りの椅子で脚を伸ばせて、冷房、wifi付きの快適バスだったので、気持ちがほぐれました。4時間半走って、運賃はなんと2ユーロ(320円くらい)!   目的地 マテーラよりずっと東に位置するターラントに今回行くつもりはなかったのですが、バスルートは大回りで、ターラントも遠目に見ることができました。時間がかかっただけのことはあります。

海岸近くの潟沿いにある街、ターラント

ターラントから北上して、東のアドリア海側にあるプーリア州の州都バーリに寄りつつ、終着地マテーラに着いたのは夜9時で、移動に11時間もかかったのでした。
宿を予約していなかったので、不安でした。バスが着いたところのすぐ近くにタクシーが何台か止まっていたので、先頭の車の運転手さんに声をかけたところ、若い女性でした。観光業の免許も持っている人で、要領よく、感じのいいホテルに案内してくれました。タクシーは、駅からだと普通の都市部を走り抜け、旧市街に至ります。「マテーラは有名な洞窟住居しかないのかと思ってた!」と驚いたら、彼女は笑ってました。旧市街の素晴らしい夜景を前にして、私の乗り物疲れは吹き飛びました。これまで写真ではその魅力があまり理解できなかったのですが、3次元でパノラマが広がると、迫力が全く違いました。是非足を運んでみてください。

マテーラの夜景

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