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赤ちゃんの行くところ:ハイハイ・よちよち歩きの赤ちゃんが移動探索するときのリアルタイムなダイナミクス(Where Infants Go: Real-Time Dynamics of Locomotor Exploration in Crawling and Walking Infants) その1

Hoch, Justine E., Jaya Rachwani, and Karen E. Adolph. "Where Infants Go: Real‐Time Dynamics of Locomotor Exploration in Crawling and Walking Infants." Child development (2019).

【要旨】

赤ちゃんはどこへ行くのだろうか?きっと赤ちゃんは動いていないときに見えた目的地へと向かってハイハイもしくは歩くのだろうと長年考えられてきた.しかし,自発的に始まる移動の多くは新規のヒト,場所,モノで終わることはない.研究1では,ハイハイをする10ヶ月児と13ヶ月児(N=29)の約半数が歩く赤ちゃんよりも目的地でその移動を終えることがわかった.研究2では,赤ちゃんは一貫して何かしらの目的地へ行くわけではないものの,12ヶ月のハイハイする赤ちゃんは同月齢の歩く赤ちゃん(N=16)と比べてより目的地へと移動していることがわかった.頭に付けたカメラにより,ハイハイする赤ちゃんも歩く赤ちゃんも手の届く範囲にモノがある場合でさえほとんど目的地もなくその場でステップを踏んでいることがわかった.赤ちゃんがまさに目的地へ向かうときは,動いていないときにターゲットを捉え直線での最短経路でそこへ向かっている.

【本文一部抜粋】

Why Go?

なぜ赤ちゃんはハイハイしたり歩いたりするのだろうか?1世紀以上もの間,研究者はこの問題を発達における移動の始まりという観点から調べてきた.しかしながら,赤ちゃんの移動についてリアルタイムでその衝動を調査したものはほとんどない:つまり,いったい何がモチベーションとなってハイハイまたは歩くことがすでに出来る赤ちゃんを起き上がらせる・移動させるのだろうか?

Locomotor Exploration

何十年にもわたり,赤ちゃんは見ている世界にあるヒトや場所,モノをハイハイや歩いて探索していると研究者は考えてきた.しかし,移動探索の研究の多くはこの仮説をテストできるデザインではなかった.実際,多くの研究は移動のための探索に焦点を当ててきた.

この研究では探索のための移動に焦点を当てている.

実際,近年の研究から移動探索は終点へ向かうための手段というよりも,それそのものが目的であることが示唆されている.

Study 1: Locomotor Exploration in Novice and Experienced Crawling Infants

研究1ではこれまでの研究で生じているギャップ,移動探索はハイハイのスキルが発達するときに変化するのかどうかを調べている.

Method

Participants

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ハイハイをしている10ヶ月児(15人)と13ヶ月児(14人)でテストした.

Procedure and Playroom

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赤ちゃんは実験室となる遊び場で保護者と自由に遊んだ.

Bout terminations

新しい目的地とはそれまで手の届くところになかったモノ(例えばオモチャ),保護者隆起(例えば階段),環境に含まれる特徴(例えばカーペットの縁や床のくぼみ)である.終着点がなく終える移動とは何もない空間でのステップ(例えば部屋の真ん中,もしくは手を伸ばせば届く終着点の前),または室内を広く歩くものの特定の終着点(部屋の真ん中や隆起)に手が届かないところで立ち止まることである.最後に,赤ちゃんが転んでしまい(バランスを崩し床に転がってしまう)終わるものや保護者に抱きかかえられて終わるものもある.

Result and Discussion

Amount of Locomotion

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10ヶ月児・13ヶ月児は同じぐらい動いていて転ぶ頻度も同じで,時間あたりに行う移動の数も同じであった.

Destination  Versus No-Destination Bouts

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先行研究において歩く赤ちゃんはどこかの目的地に向かうことは少なかったが,ハイハイの赤ちゃんでは目的地に向かうハイハイと目的地に向かわないハイハイが同程度であった.これにより移動するときの姿勢が移動探索に影響を与えていることが示唆される.全体として,53%のハイハイが目的地へと向かっていた.

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10ヶ月の赤ちゃんは13ヶ月の赤ちゃんと比較してモノや保護者へと向かう割合が大きく,高低差のある場所で終わる割合は少なかった.

目的地のないハイハイではその多くが何もない空間でステップを踏んでいるものであった.

Summary of Study 1

歩く赤ちゃんと比較してハイハイの赤ちゃんは目的地へと向かう移動の割合が多かった.

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