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ヒトの胎児における身体性脳モデル(An Embodied Brain Model of the Human Foetus)

Yamada, Yasunori, et al. "An embodied brain model of the human foetus." Scientific reports 6 (2016): 27893.

【要旨】

身体の運動による感覚運動体験を通じて起こる皮質学習は胎児期より始まる.しかしながら,どのような感覚運動経験によって皮質学習が促されるのかという学習メカニズムは技術的・倫理的問題により明らかになっていない.このようなギャップを埋めるため,我々は解剖学的/生理学的データを統合させたヒト胎児の身体性脳モデルを脳-身体-環境の統合システムとして提示する.このモデルを用いることにより,身体の運動に伴う子宮内の感覚運動経験がどのようにして体性感覚フィードバックとして特異的な統計学的調整(statistical regularities)を引き起こし,身体表象の皮質学習とそれに続く視覚-体性感覚の統合を促しているのかを示す.感覚運動経験に基づき身体,環境および神経系での複雑な相互作用により調整される皮質学習のメカニズム理解に対して,この身体性脳モデルは新しい計算処理的なアプローチとなるであろう.

【本文一部抜粋】

ヒト胎児の身体性脳モデルの概要.(a)子宮環境内の胎児身体モデル.(b)胎児筋骨格系モデル.各線は身体における単軸の筋動作器(muscle actuator).(c)関節の位置と向き.円柱は関節軸を表している.(d)身体を通じた皮膚感覚センサー.この配置についてはヒトの二点識別覚のデータに基づいている.(e)早産児の脳MRIスキャンの典型的なトラクトグラフィーおよび区分.左側の色づけは線維の終点間の空間的関係を示している.赤:左-右;青:背側-腹側,緑:前方-後方.右側の色づけは地図上の脳領域を示している.(f)皮質モデルにおけるモデル神経.ドットはニューロンを示している.(g)脊髄回路モデル.矢印と丸はそれぞれ興奮性および抑制性の連結を表している.S0は感覚の介在ニューロンである.

Cortical learning of body representations

子宮内における身体性の感覚運動経験は皮質の身体表象形成にとって有利であることが示唆される.

Sensory information structures of the intrauterine and extrauterine embodied interactions.

異なる環境下(三浦注:つまり子宮内と子宮外)では身体性の相互作用を通じた感覚フィードバックは異なる統計学的調整をなされることが示された.

Effects of sensory information structures on the learning of body representations.

子宮内での身体性相互作用により,皮膚感覚における同一身体部位での高い相互関係,固有感覚における異なる身体部位での低い相互関係が特異的なある身体部位での身体表象の学習を促していることが示唆される.

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