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新生児における探索道具としての手の周期的な活動(Manual cyclical activity as an exploratory tool in neonates)

Molina, Michèle, and François Jouen. "Manual cyclical activity as an exploratory tool in neonates." Infant Behavior and Development 27.1 (2004): 42-53.

【要旨】

触覚によるテクスチャの知覚を生後3日の赤ちゃんで調査した.滑らかな,もしくはザラザラしたモノへの慣化に続いて,赤ちゃんは慣化を起こした,もしくは新奇のモノを把持した状態で触覚テストを受けた.2つの従属的な測定(two dependent measures)を記録した:(1)把持時間を用いて新奇なモノに対する反応および慣化を評価し,(2)モノに作用する手の圧周波数(Hand Pressure Frequency: HPF)を用いて新生児がモノのテクスチャに対して操作を調節する能力を調べた.2つの評価からともに新生児がモノのテクスチャを触覚的に知覚できることが明らかになった.結果から,HPFによって記録された新生児の周期的な手の活動はテクスチャに関する知識を得るために必要で十分な探索道具であると結論づけることが可能である.

【本文一部抜粋】

慣化パラダイムを用いた研究により,新生児は形状および重さの知覚に必要となる特異的な手の運動を行うことが出来ないにもかかわらず,重さの特性における変化や形状の特性における変化に対して反応することが明らかに示された.

新生児の手の活動は融通のきかない古風な反射的活動でも単なる握るパターンでもない.それどころか,新生児の手掌握りは硬さやテクスチャといったモノの特性に応じて調整される周期性の活動である.

新生児における運動の制約は触覚による知覚を障害するものではない.その代わりとして,新生児の手掌握りという活動は周期性の活動で,モノの特性に関する知識を得るための大切な探索道具として赤ちゃんが使っていると私たちは提言する.

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滑らかなおもちゃ・ザラザラしたおもちゃにおける慣化試行での最初2つ・最終4つの平均把持時間と標準偏差.なめらかなおもちゃでの慣化後(上パネル)およびザラザラしたおもちゃでの慣化後(下パネル)での既知おもちゃと新規おもちゃでの2回のテスト試行における平均把持時間および標準偏差.

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滑らかなおもちゃ・ザラザラしたおもちゃにおける慣化試行での最初2つ・最終4つのHand pressure freaquency(HPF)と標準偏差.なめらかなおもちゃでの慣化後(上パネル)およびザラザラしたおもちゃでの慣化後(下パネル)での既知おもちゃと新規おもちゃでの2回のテスト試行におけるHand pressure freaquency(HPF)および標準偏差.

テスト期において既知のおもちゃを持っている赤ちゃんについて,HPFは慣化試行よりもテスト試行の方が低くなっている.その一方で,テスト期において新規のおもちゃを持っている赤ちゃんは慣化試行よりもテスト試行の方がHPFが高くなっている.

この結果から,HPFにより記録された新生児の周期的な手の活動は,主としてモノの知識を得るためになくてはならない・非特異的な探索道具であると結論づけることができる.

初期の運動レパートリーとして,手の周期的な活動は手の力学的な制約を受けているに過ぎず,基本的には経験によって制約を受けているものではない.結論として,新生児の手の運動活動における制限は運動発達にともない段階的に克服されるような触覚知覚にとっての障壁とは見なされない.

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