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赤ちゃんの行くところ:ハイハイ・よちよち歩きの赤ちゃんが移動探索するときのリアルタイムなダイナミクス(Where Infants Go: Real-Time Dynamics of Locomotor Exploration in Crawling and Walking Infants) その2

【本文一部抜粋】

Study 2: Real-Time Dynamics of Crawling and Walking

研究1で移動するときの姿勢が移動探索に影響を与えていることが示唆された.研究2ではこの仮説を同月齢のハイハイする赤ちゃんと歩く赤ちゃんを比較することにより直接的に確かめた.12ヶ月児に焦点を当てたが,その理由はこの月齢の赤ちゃんの約半数が歩くことが出来て,約半数がハイハイしかしないからだ.

研究1や先行研究では赤ちゃんが移動を止めたとき何が手の届く範囲にあるのか-赤ちゃんは何か新しいところに行くのか・そうでないのかを分析していた.しかし,目的地に到着して終わる移動の数では何が移動を起こさせるのかはわからない-ギブソンが言うように,赤ちゃんはじっと止まっているときにこっそりと見つけ出した魅力的なゴールに向かってハイハイしたり歩いたりするのだろうか.

Study 2の第一目的は移動探索における姿勢の影響を直接的に比較することである.

Study 2の二つ目の目的は目的地へと向かう各移動をリアルタイムでその動機を調べることである.

Participants

12ヶ月の誕生日から1週間以内のハイハイする赤ちゃん8名(女児3名,男児5名)と歩く赤ちゃん8名(女児5名,男児3名)でテストした.

Head-Mounted Eye Tracker

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Positive Science head-mounted eye trackerを使って赤ちゃんの眼球の動きを記録した.トラッカーは赤ちゃんが見ている風景を記録する小さなカメラと,もう1つ赤ちゃんの右目を記録するカメラからなる.

Results and Discussion

Amount of Locomotion

歩く赤ちゃんはハイハイの赤ちゃんと比較してより多くの時間で動いていて,より頻回に転び,1時間あたりの移動回数とステップ数が多かった.しかしながら,移動時間とステップ数の平均はハイハイする赤ちゃんと歩く赤ちゃんとで違いはなかった.

Destination Versus No-Destination Bouts

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全体として,多くの移動(63%)は目的地の近くで終えることがなかった.しかし,Study 2ではハイハイする赤ちゃんは歩く赤ちゃんよりも目的地へと向かう移動が多いことがわかった.

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ハイハイする赤ちゃんも歩く赤ちゃんも,もっとも魅力的な目的地はモノ-概してオモチャであった.

何もない空間でのステップが歩くハイハイの赤ちゃんでも歩く赤ちゃんでも一番多きな割合を占めていた.

Real-Time Looking and Locomotion

赤ちゃんが立ち止まった場所からはその移動が目的地によって引き起こされたものかどうかはわからない.私たちは頭に取り付けたアイカメラによって目的地へと向かう移動か,途中で目的地を発見した移動か,目的地のない移動かを比較した.

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図はそれぞれの赤ちゃんの各移動で,その移動が最初から目的地へ向かうものか(destination directed)か,結果的に目的地を見つけたもの(resulted in a discovery)か,目的地がなく移動を終えたもの(ended at no destination)かを示している.ハイハイの赤ちゃんと歩く赤ちゃんとで目的地で終える移動の割合が違うのは最初から目的地へと向かう移動によるものである.

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目的地へと向かう移動を行っているとき,赤ちゃんはターゲットを見つけたとほぼ同時に動きはじめ,動いている間もそのターゲットを引き続き見続けている.魅力的なターゲットはそこへの移動を引き起こしている.

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赤ちゃんが移動の途中で目的地を見つけた場合,目的地を見る割合はそこへ近づくにつれて増えていく.移動の途中で目的地を見つける移動よりも,最初から目的地へと向かう移動の方がより多くの時間を使い赤ちゃんは目的地を見ている.

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私たちは赤ちゃんが目的地で終わらない移動においてどこを見ているのかについても調査した.赤ちゃんが何もない空間でステップを踏んでいるとき,彼らはすでに手の届く範囲にあるモノを見ていることが多かった.

赤ちゃんが部屋の真ん中で移動をストップしたとき,彼らは多くの場合部屋の中をスキャンしたり,見つけたターゲットに近づいたりしていた.頭部に取りつけたアイトラックから,赤ちゃんは気が散ってしまったりよりよい眺めを得られるところに行こうとしたりして目的地へ到達する前に移動を止めてしまうが,それと同じぐらい頻回に,赤ちゃんはとくに理由もなく立ち止まり何も見ていないことがあることが示唆された.

Target Height and Starting Posture

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赤ちゃんが移動するときの姿勢は目的地を見つける可能性に影響を与える移動を開始するときの姿勢もまた目的地へと向かう異動に影響を与えている.

歩く赤ちゃんにとって,起立姿勢,座位,腹臥位といった開始時の姿勢はどれも同じぐらい目的地を見つけられるものである.ハイハイの赤ちゃんにとっては座位や起立姿勢の方が目的地へと向かう移動が起こりやすい.

General Discussion

Where Infants Go

ハイハイの赤ちゃんは半分ぐらいは目的地へ向かっていたが,半分ぐらいはそうではなかった.歩く赤ちゃんが目的地へとむかうのはさらに少なく-約30%であった.先行研究にあるように,赤ちゃんは遊ぶためのなにかがなくとも環境のなかで探索するモノを見つける-床にある小さな窪みを突いたり,ドアノブを軽く揺すったり.赤ちゃんにとってはほぼ全てのものが目的地になりうるようである.

Why Locomote?

その目的地に関わらず,すべての移動は新しい情報を生み出している.たとえ何もない空間でステップを踏んだり,部屋の真ん中で立ち止まったりするときでさえも赤ちゃんは依然として情報を集めているのである-手の届かないところにあるモノを見たり,見つけたターゲットに近づいたり,そして部屋の中をくまなく見たりといった具合に.

しかし赤ちゃんはただ単に情報を探し回っているのではない.彼らは遊んでいるのだ!ときどき赤ちゃんは特定の目的地が視界になかったり手の届くところになかったりしても部屋の中をグルグルとまわっている.なぜか?目的地や目標のない移動がただ単に楽しいのかもしれない-楽しむための手段なのである.そう思う根拠は合理的なもので,なぜならもし移動が内的報酬のないものであれば,赤ちゃんは文字通り決してどこにも移動することはないであろう.

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