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Predictive motor activation during action observation in human infants

Southgate, Victoria, et al. "Predictive motor activation during action observation in human infants." Biology Letters 5.6 (2009): 769-772.

【要旨】

ヒトの脳のある領域は行為の実行および観察の双方で活性化する.この所謂「ミラーニューロンシステム」により観察者は内部の運動シミュレーションを通じて行為を理解することが可能になると言われている.そのようなシステムは人生の早期から存在する推測されているが,今日まで乳児が行為観察において行為実行を含む脳領域を動員するという直接的なエビデンスはほとんどない.この疑問に答えるため,私たちは対象物へのリーチングを行う9カ月児の表面筋電図において感覚運動野のα波減弱の周波数範囲(frequency range)を特定し,この周波数範囲が他者の行為観察によっても調節されるのかどうかを測定した.

把握行為の観察により乳児の脳において運動野の活性化が見られたが,この活性化はいったんそれが予測できるようになると,行為の観察に先行して開始することがわかった.これらの結果は乳児が成人と同じように行為の実行と観察の双方において神経活動を重複させるというだけではなく,この活性化は視覚入力により直接引き起こされるのではなく,むしろこれから起こる行為を乳児が理解していることで駆動されることを示している.これらの結果は行為予測における運動システムに関連する理論をサポートする.


【私見】

実験の手続きに関しては要旨にほとんど書かれておらず,本文を読む必要があります(無料でダウンロードできます).脳波に関しては無知なので理解するのに苦労しましたし,今でもほとんど理解できていないように思います.ので,以下の私見は結果のみ捉えた断片的な個人の感想です.

Hadders-Algraが指摘しているように,行為が始まる前に予測する能力は予測的な運動コントロール(anticipatory motor control)の発現を示唆しています.9カ月児は補償的(reactive)な座位バランスが安定し,これからリーチ範囲が広がり,また,立位や歩く行為へ発達していく段階でもあります.予期的な姿勢コントロールによる座位バランスの向上を考えると,身体的な能力だけではなく,ミラーニューロンシステムのような認知的な能力にも評価・介入の必要性があるように思いました.

重要な点は乳児が経験した行為でのみ予測的な脳活動が見られる点です.発達における経験することの重要性をも示唆しています.同時に,私が普段かかわることの多い肢体不自由児のお子さんを考えると,他者の行為を見る・見続けることの重要性も加味してセラピーを考える必要があるように思います.

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