図4

神経細胞群選択説:発達運動障害の理解と治療にとって将来有望な原理原則(The neuronal group selection theory: promising principles for understanding and treating developmental motor disorders)

Hadders-Algra, Mijna. "The neuronal group selection theory: promising principles for understanding and treating developmental motor disorders." Developmental medicine and child neurology 42.10 (2000): 707-715.

今回はNGSTをリハビリテーション、子どものセラピーにどう応用できるのかをHadders-Algraが述べています.今回も要旨はありません.内容を追っていきます.

脳性麻痺や発達性協調運動障害などの発達運動障害領域へのNGSTの拡張は,この種の障害のメカニズムについて新しい見識をもたらすかもしれない.
NGSTと発達性運動障害:あらゆる年齢で重度脳性麻痺の臨床像は,サポートなしに座ることが出来ないことを含む重度の姿勢障害,極めて定型的なほとんどバリエーションのない運動行為によって特徴づけられる.重度脳性麻痺の子どもは主要な皮質(下)の神経ネットワークに関する機能的な活動がない,もしくは極めて少ない.
軽度から中等度の脳性麻痺,つまり一人で座ることは出来るが日常生活活動は阻害されている子どもの運動行為もまた,常同によって特徴づけられる.生後最初の1ヶ月間におけるバリエーションの乏しさはジェネラルムーブメントのレパートリーの制限で表現される.軽度から中等度の脳性麻痺を伴う子どもには主要な皮質(下)の神経ネットワークのレパートリー減少が見られる.軽度から中等度の脳性麻痺を伴う子どもは基礎的な機能レベルでの姿勢コントロールは無傷である,つまりこの子どもたちは方向特異的な調節が可能である.しかし,研究によってこの子どもたちは方向特異的な姿勢調節のレパートリーが明らかに少ないことがわかっている.
脳性麻痺を伴う子どもはまた,様々な形での求心性情報(例えば固有感覚の障害,皮膚感覚の障害,もしくは視覚機能障害)にプロセス障害を持っている.感覚障害により,主要なネットワークから最も効果的な神経ネットワークを経験依存的に選択することが障害されるとわかっている.
おそらく,軽度から中等度の脳性麻痺を伴う子どもは第二の神経レパートリーを発達させているのだが,それはゆっくりとしたペースで制限を受けた形であろう.第二のレパートリーの段階においても,感覚プロセスの障害が選択のプロセスつまり特異的運動課題に関する最適な運動による問題解決の選択に干渉している.

NGSTに基づく介入への提言:NGSTに基づく介入は感覚運動障害,これは発達性協調運動障害を伴う子どもの核となる問題であり,脳性麻痺を伴う子どもの大きな問題である,の軽減を目的としている.
第一の変動性増加,そして選択の向上を目的とした介入:生後早期における脳障害はその後の驚くべき可塑性へと続いている.NGSTの観点からは,脳損傷後の早期介入は第一のレパートリーを増やすことを目指すべきである.これは乳児を多様性のある,しかし範囲の広すぎない経験を提供することにより達成される.運動経験のバリエーションは,例えば乳児の姿勢に多様性を持たせることにより獲得できる.なぜならこれこそが運動性の基盤となるからである.
主要なレパートリーを増やすために多様性ある経験をすることに焦点を当てるとともに,NGSTでは早期介入において選択(selection)にも照準を当てるべきである.試行錯誤の頻回な経験は選択プロセスを強化する.神経学的障害を伴う乳児は運動スキルを自発的に発達させる機会を十分に与えられることで利益を得るだろう.
このタイプ(軽度から中等度の脳性麻痺,発達性協調運動障害)の障害は能動的な練習による利益を受け,これにより選択プロセスが強化され,より適応的な運動行為の産生をも強化する.
結論:NGSTは生後早期に運動機能障害をともなう子どもへのセラピー介入は多様性ある感覚運動経験に焦点を当てるべきだと提唱している.親しみのある,楽しい設定にポジティブなフィードバックを添えて子どものモチベーションを強化することが重要である.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?