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行為の計画:道具使用における発達学的進歩(Planning an Action: A Developmental Progression in Tool) Use

Keen, Rachel, Mei-Hua Lee, and Karen Adolph. "Planning an action: A developmental progression in tool use." Ecological Psychology 26.1-2 (2014): 98-108.

【要旨】

どのようにして道具を拾い上げるかを見ることで子どもが最終的なゴールを心に描いて行為をプランニングする能力がわかる.スプーンの持ち手を子どもの利き手から離して置いたとき,乳児から8歳までの間に子どもはぎこちない尺側握りで食べ物がスプーンからこぼれてしまうところから一貫した橈側握りまで成長する.4歳の時点で子どもの把持戦略は非常に変化に富み,そこにはぎこちない赤ちゃんの握りや非利き手の使用が含まれるが,乳児期には見られなかった大人がするような握りも同時に行っている.8歳までに赤ちゃんのような握りは完全になくなり,それに代わってより成熟した効率的な握りとなり,それは最終的なゴールに向けたより良いプランニングを示唆している.

【本文一部抜粋】

手を使った行為は幼児が微細な指のコントロールが出来るようになる2歳でより複雑なものとなり,より認知的に順序だった行為を要求されるようになる.幼児はスプーンやおもちゃのハンマー,そして熊手を使って即座ではない目標を達成することでこの非常に複雑な行為を表現する.

この論文はいかにして子どもが効率的で,成功へとつながる把持でスプーンを拾い上げるようになるかに焦点を当てている.

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上手の撓側握り(a),上手の尺側握り(b),下手の撓側(c),そして指先(d)の握り.(a)と(b)のみが赤ちゃんと幼児で見られる.園児は大人でも見られる2つの新しい握り(cとd)を示す.

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14ヶ月から赤ちゃんは他者指向的(self-directed)課題よりも自己指向的(other-directed)課題において高い割合で尺側握りよりも撓側握りを用いる.

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18人の4歳時(平均4.06歳,SD=0.11歳,女児12人)でスプーンを使い自分で食べる,膝上の人形に食べさせる,向かい合った人形に食べさせるテストを行った.園児との対照群として,11人の8歳時でもテストした.

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図は各条件下および年齢群での「難しい」課題における撓側握り・尺側握りの割合を示している.

(※難しい課題とはスプーンの柄が向かって「左側」に置かれた条件下です.なぜなら右利きの子どもにとってこの向きはどうスプーンを取るかの判断が要求されるからです.スプーンの柄が「右側」に置かれた条件は「簡単な」課題であり,この場合は自然に右手を使った上手の撓側握りとなります.)

自己-他者での差異が4歳時でも残っているのかを確かめるために撓側握りの割合を3つの条件下で比較した.どちらの年齢群でもこの比較で明確な差異は出なかった.しかしながら,左手による上手握りのみを考慮した場合,行為の方向で差異があり,条件による明確な効果が4歳時・8歳時で見られた.幼児と同じように,4歳時は膝上の人形や対面にある人形に食べさせるときよりも自分で食べるときの方が左手を使っていた.8歳時ではこの違いは人形が対面にあるときのみ見られた.このように,ゴールの空間的位置によって完全に影響を受けるわけではないが年長になっても傾向の名残があった.

2つ目の論点は園児が利き手である右手の下手握りを使うのかどうかを探ることである.答えはイエスだ.難しい課題で下手の撓側握りを使うことはなかった幼児とは違い,4歳時はときどき(試行の20%)で全ての条件においてそのような握りをした.どの条件下でもこの握りは多数派ではなかったが,2歳から4歳でときどきこのより成熟した握りが解決策として現れ,利き手が新しい行為に用いられていた.

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上の図は18人の4歳児(左パネル)と11人の8歳児(右パネル)の個々のデータである.個々のデータで最も印象的なのは子どもがどのように「難しい」指向性の課題を解決しようするのかに変動性(variability)があることである.

4歳児は1/3は先に述べた下手握りを発見しており,加えてグループの半分は大人様の指先握りを示している.8歳児のうち5名は他の握りよりも指先握りを好んで使っている.

結論として,4歳児は幼児期から比べて道具使用の多くの面をマスターしている.道具を拾い上げるとき,園児は新しい2つの握りを示しており,それは下手のポジションと指先の握りである.


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