視線追従を伴わない共同注意:赤ちゃんと両親は目と手の協調を通じてモノへの視覚的注意を協調させる(Joint attention without gaze following: human infants and their parents coordinate visual attention to objects through eye-hand coordination)
【要旨】
社会的パートナー間での視覚的注意の協調はヒトの振舞いおよびその発達における多くの構成要素のうち中心的なものである.これまでの研究では社会的パートナーによって一方向に行われる見るという行為の協調,つまり視線追従に焦点が当てられてきた.非常に幼い赤ちゃんでも他社の視線を追うことは出来るものの,それは空間的な文脈が非常に限られた場合でのみ起こるというエビデンスがある.視線の方向というものはターゲットの位置に対する正確な手がかりとはならないため,空間的に複雑な相互作用においては簡単に使われるものではない.私たちの知見では,1歳の赤ちゃんとその両親がオモチャで遊んでいるときの眼球運動を時々刻々と得ることによって,目標指向的な活動における目と手の協調というもう1つの経路についてのエビデンスを提供している.目標指向的な活動において,行為者の手と目は時間的・空間的に強く協調されており,そしてそれゆえ,手を使ったモノの操作を含む文脈において,手の動きや目の動きは目がどこをどこを見ているのかについての冗長な情報を提供している.私たちの知見では,このような文脈において1歳の赤ちゃんはめったに両親の顔や目を見ることはなく,むしろ赤ちゃん・両親は視線追従を行うのではなく,自分もしくは相手が手に持ったモノに注意を向けることで見るという行為を協調させていた.この目と手のカップリングという経路により視覚的注意における協調的な切り替えが共有され,全体として同じタイミングで同じモノを見る割合が高くなる.そしてこの経路は身体的に活動的な幼児が見るという行為を社会的パートナーと合わせるのに最も有力なものかもしれない.
【本文一部抜粋】
図5.共同注意へとつながる複数の経路.(a)共同注意は他者の視線追従によって行われる.(b)共同注意は手の動きを追跡(点線)することで達成される.なぜなら行為者の目-手の協調(実線)は視線および手の活動いずれを通じても同じモノと保証されているからである.
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