見出し画像

赤ちゃんの生後1年間にわたる道具使用の観察(Infants' observation of tool-use events over the first year of life)

Libertus, Klaus, et al. "Infants’ observation of tool-use events over the first year of life." Journal of experimental child psychology 152 (2016): 123-135.

【要旨】

目標指向的な行為を赤ちゃんがどのように観察しているか,は他者行為に対する赤ちゃんの理解へのユニークな窓口となる.本研究では,行為者がモノに対して道具を使うというイベントを赤ちゃんが観察している間の注視パターンを調査した.4ヶ月,7ヶ月,10ヶ月,12ヶ月の赤ちゃんと成人との比較から赤ちゃんの見るパターンが月齢とともに変化していることが明らかとなった;赤ちゃんの視覚走査の経路は最初に顔を見る傾向があり,最終的には行為者の顔と行為されるモノとの双方へのダイナミックな統合を示した.このシフトは道具使用というイベントにおける重要な構成要素の理解,および他者行為の理解における移行を示している.

【本文一部抜粋】

経験が少ないなかで,赤ちゃんはどうやって観察している一連の行為の構造を学習しているのだろうか?

Learning by observing

直接行為を経験するということは学習にとって明らかに重要ではあるが,観察した行為を赤ちゃんが生後1年間で理解する方法はそれだけではない.日常において,他者が目標指向的な活動に取り組んでいるのを観察する機会が赤ちゃんには多くある.重要なことは,赤ちゃんは自身ではまだ遂行できない行為も観察によりその意味を理解することが出来るらしいことである.観察した行為を意味のあるユニットへと分解する赤ちゃんの能力は,その行為を自身が直接経験したことに完全には依存していないようである.

The current study

本研究では,高いレベルでの複雑性を持った自然な刺激を用いて,一連の道具使用に対する赤ちゃんの自発的な観察を調査した.この問題を調査するために,いくつかの構造を共有している様々な一連の道具使用を観察する際の赤ちゃんの注視を記録した.

Method

Participants

本研究の参加者は8名の4ヶ月児,7名の7ヶ月児,8名の10ヶ月児,8名の12ヶ月児および11名の成人である.

Materials

画像1

参加者はある行為者(actor)が道具を使って問題を解決するビデオを5つ見た.それぞれのビデオは3つのイベント構成要素が含まれている.1つ目は行為者がモノ(the "goal")を取り上げ,手を使ってそれに何かしようとする(goal establishment).2つ目は行為者が道具を取り上げ,その道具を使い目的のモノを変形させる(tool transformation).3つ目は目標が達成され,結果が明確にスクリーンに映し出される(goal resolution).

Results

画像2

画像3

Goal establishment

Goal establishmentの間,目標となるモノへ向けられる注意は4ヶ月から7ヶ月の間と7ヶ月から10ヶ月の間に増加した.顔への注意は7ヶ月から10ヶ月の間に減少した.道具への注意は12ヶ月と成人との間で増加した.

Tool transformation

目標となるモノへの注意は4ヶ月と7ヶ月,7ヶ月と10ヶ月の間に増加した.顔への注意は7ヶ月と10ヶ月の間に減少した.道具への注意は7ヶ月と10ヶ月の間に増加した.

Goal resolution

目標となるモノへの注意の増加は4ヶ月と7ヶ月との間でANOVAでは有意に,多重比較(planned comparison)ではその傾向が見られた.顔への注意の減少は7ヶ月と10ヶ月の間で有意に減少したが,ANOVAではそのような差異は見られなかった.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?