シャボン
ついに、鬱を抜けた、気がする。
何をやっても上手くいかなくて、どうやって死のうかばかり考えていた私に、光を見せてくれたのはサンリオピューロランドだった。
思い返せば、わたしは小さい頃からサンリオのキャラクターに囲まれていた。
今でもよく覚えているのが、リトルツインスターズのおもちゃたち。子ども用のノートパソコンとドレッサーだった。
ドレッサーの鏡は星の形をしていて、引き出しに入っているマニキュアはいい匂いがした。
少しませたおもちゃで遊ぶのがたのしかったんだろうな、と思う。
いつもは給食だった保育園でのお弁当の日には、お母さんがキキとララの顔のおにぎりが入ったキャラクター弁当を作ってくれていて、嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。
そんな私が生まれて初めてピューロランドへ行った歳が20歳だったのは実に以外だったけれど、それも何かの因果だったのかもしれない。
それは、どこもかしこも可愛い世界。
夢のあるコスチュームを纏ったキャストの皆さんに、たのしそうなちびっ子たち。
私みたいな大人がキャラクターに会いに行っても、彼ら、彼女らは最後にぎゅうっと抱きしめてくれる。
なんて優しい空間なんだろう。
可愛いものってずっと好きでいてもいいんだ。
そう思えたとき、今まで自分の首をギリギリと締めてきた自分の手の力が弱まった感じがした。
そんな気持ちのまま、なんとなく時間があったので観に行ってみたミュージカルが『MEMORY BOYS ~想い出を売る店~』だった。
いわゆる"イケメン"なお兄さんたちがたくさん出てくる、という事前情報のみで向かったので完全なミーハー心。
でも、私のそんな安い気持ちはすぐに打ち砕いて、人生をくるっと変えてしまうのがこの『メモミュ』だったなんて、そのとき夢にも思わなかった。
もちろん出演する俳優さんはみんな若くてそれはもう、とてもお顔が整っている。
しかしそれは当たり前、とでも言うかのようなガツンと詰まったストーリー性。華やかで世界観溢れるセット。ぐっと脳に、心に響く音楽。
公演が終わった後、すぐに立てなかった。
誰かのために生きること。
自分を犠牲にしてでも守りたい人。
仲間への信頼。
どうしても許せないこと。
何も考えてないふりをして優しく見守ること。
現実逃避と、自分と向き合うとき。
想い出にすがりたい気持ち。
言いたくても言えないこと。
全部彼らが教えてくれたこと。
自分ひとりしかいない小さな空間に閉じこもって、自分に暴行を繰り返していることがひどく馬鹿げていることなのではないかと気づいた。
大げさかもしれないけど、あの時確かに私は6人とマイメロディちゃんに、背中を強く強く押されたのだ。
1日1日を大切に。
今日も彼らが吹くシャボン玉がふわふわと舞う。
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