軌跡

ちぎり絵みたいな文字の羅列が
ノートを埋める夜
どれも同じ思いから出た言葉なのに
バラバラでひとつの文章にならない
文字をひとつずつ丁寧に縫い留める
少しずつ繋がる文字が形になっていく

吐露されたものは
胸をぎゅっと締めつける


人はひとりでは生きていけない


誰もに響く詩(うた)でなくていい
ほんの一節でも
君の心に響くものがあれば
僕の何かが救われる



人は生きる上で取捨選択を迫られる

僕は感情をそぎ落としてきた
生きることが難しかったから

感情を麻痺させてきた

最初は意識した
自分を傷つけるものから身を守る為

見ない・聞かない・感じない
それが僕の処世術だった

だんだん無意識にできるようになった
見えない・聞こえない・何も感じない

それでも油断というのだろうか
ふと心許してしまい
呼び覚まされることがある

そのとき感情の振り幅が大きくなると
僕の電源はオフになるようになった

気を失ったように、眠る、眠る…
少しずつ記憶が抜ける時間が多くなった





1日が24時間では足りないと
毎日泣くように過ごす日々があった

ずっと、眠っているときですら
全力疾走をしているようで…必死だった

でも
頑張っても、頑張っても
足りない、まだ足りないって
自分で自分を追いつめているようだった

ある日、僕という木が
根元からぽっきりと折れてしまった

そこから7年間、記憶がない

滲んだような輪郭の曖昧な世界で
長い間ずっと
川辺で何かを探し続けているようだった

ほんの少し長い夢をみていた、
まどろんだ朝のように
何のきっかけもなく目覚めた僕は…
立ち尽くしていた

僕の前に道はなく
後ろを振り返れば道は遙か遠く
足もとは今にも
ガラガラと崩れ落ちそうだった

孤独が忍び寄る

ひとりぼっちに気づかなければ
ずっとひとりで良かった

この気持ちを意識しなければ
こんなにも不安に怯えることはなかった

空白のときを経てどうしてまた
苦しい思いを繰り返すのか

感じないと思いこんだ感情は
僕の心を深く深くえぐっていたのだ

見えないんじゃない
見ないふりをしただけ

聞こえないんじゃない
聞きたくなかった

感じないんじゃない
耐えられなかったんだ



言葉は、僕にふれる手は、
痛いものでしかなかった
だから自分の言葉は
優しいものでありたい
自分の手は安心させるものでありたいと
…願うのだ

それゆえに、言葉選びも
誰かにふれる手も臆病になる

それでも
人と関わっていきたいと思うのは
人と接することで
自分の輪郭をたもつからだ

わかってる、わかってる
例え傷つく結果が待っていても

人はひとりでは生きていけない



欠けた僕の人生はこれからも続く
眠れない夜に僕はまた文字を綴るだろう





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僕の紡ぐ物語が心に響いた君へ

水の中をもがくような
苦しさを抱えていると思う
それでも正気を保ちながら生きる君を
尊敬する

そして僕は
君という存在に救われるのです

君が君らしく生きられる世界を
穏やかな気持ちで過ごせる世界を
願っています

ありがとう


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