🌳「平和とは何か？」原作版のナウシカを読んで平和とは何か？について考える

原作版のナウシカは知らない人も多いと思います。実はナウシカは映画の前に漫画として今から40年前の1982年に『アニメージュ』に連載されています。後に映画が1984年に公開（映画は原作の2巻の途中までの物語）されたので一次中断していますが、原作は全７巻から形成されており宮崎駿が12年余にわたり描き続けた本作になっています。

原作には７巻全てに最初に以下の内容が記載されています

ユーラシア大陸の西のはずれに発生した産業文明は数百年のうちに全世界に広まり巨大産業社会を形成するに至った。大地の富をうばいとり大気をけがし生命体をも意のままに造り変える巨大産業文明は1000年後に絶頂期に達しやがて急激な衰退を迎えることになった。「火の七日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有毒物質をまき散らして崩壊し、複雑高度化した技術体系は失われ地表のほとんどは不毛の地と化したのである。その後産業文明は再建されることなく永くたそがれの時代を人類は生きることになった。

原作とアニメの違い

原作には映画と違って、腐海の森が地面を覆う世界における2大強国、トルメキアと土鬼（ドルク）の戦争をめぐる物語です。しかし、話が進むにつれて、戦いは単なる人間同士の争いにとどまらず、世界の成り立ちをめぐる抗争にまで発展していきます。

トルメキアと土鬼（ドルク）の両国による腐海の森を利用した戦争や、巨神兵の蘇生（オーマ）、そして大海嘯（だいかいしょう）という蟲（むし）たちの大移動による世界の崩壊、それを止めようとするナウシカ……また両国どちらにも属さずに腐海の森の中で生活する「森の人」という人たちも登場します。登場人物の想いや野望が複雑に絡みあい、ナウシカは腐海の森が生まれた原因、人類の正体、王蟲（オーム）の役割について知ることとなっていきます。

①物語の登場人物：原作には土鬼（ドルク）という巨大宗教国家が登場

映画では、風の谷以外に、ペジテ（アスベル）トルメキア（クシャナ）だけでしたが、原作では土鬼（ドルク）とトルメキアという大きな2国の戦争に風の谷とペジテが巻き込まれていくことになります

土鬼（ドルク）には兄のナムリスと弟のミラルパという兄弟の皇帝がいて、高度な文明の旧世界の人が造った「墓所」を守る変わりに高度な文明の知識を得ていた

土鬼（ドルク）帝国の首都シュワにある「墓所」には、世界の歴史や秘密が墓標に刻まれていて、ヒドラ（不死の人造兵士）がその墓所を守っている。毎年冬至と夏至に一行ずつ文字が現れてその文字を解読している。ドルクの皇帝はその墓標を解読した知識で不死の力を得ていた

②巨神兵の位置づけ：映画→世界を滅ぼした兵器　原作→裁定者（裁判官）

③墓所：地球が浄化された後に復活させる争わない人間の卵や高度な文明の知識が保管されている場所。

墓所の手間にあるシュワの庭：不死の番人（ヒドラ）がいる

④その他の登場人物：森の人（セルム）チクク

ラストで明かされる驚愕の真実

腐海も人間も旧世界（高度な文明）によって作られた人工物だったという事

浄化された世界にどんなに憧れても
浄化された世界では人も生物も生きられない

ナウシカがずっと不思議に思っていた事（伏線）

・地下100メルテから汲んだ水で腐海の植物を育てると毒は出さけれど逆に大きく育たないし、谷の草木も育たない

・ナウシカの村ではその水をいったん貯水池にねかせてから畑に入れたり湧かして飲んだりしていた

・池で水は汚染されるはずのなに、その方が生物が増える

旧世界の高度な文明の人達の目的と計画

・火の七日間の前後、世界の汚染が取返しのつかない状態になった時に人間や他の生物を毒があっても生きられるように造り変えた人がいた事→（1000年前の高度な技術をもっていた巨大産業文明の人達）

①汚染された地球を浄化させるために、有毒物質を結晶化させて安定させる方法として腐海を人工的に造った事

②地球の全ての浄化が終えた時のために争わない人間に遺伝子操作された人間の卵を墓所に保管する事

③地球の浄化が終えた時に毒がないと生きていけない動植物は死に清浄の地で生きていける生物のとっかえ計画を行う事

ナウシカの想いと考え方

1000年前の高度な技術をもっていた巨大産業文明の人（墓所の主）の考え方として、人間は改心しても同じ事を繰り返してしまう愚かな生き物であるから、地球を守るためには争わない人間を作って清浄な地を造るしかないという考え方に、ナウシカは一定の理解はしつつも世界を清浄と汚濁に分けただけでは真実は見えてこないと考えていた

人間は確かに愚かだが、1000年間これまで腐海の瘴気と共にそれなりの知恵を絞り人間は自然と共存して生きてきた経験がある。
その知恵と経験を否定されてる事の憤りもあったのだ

光だけの世界を作ろうとする墓所の主に対して、命とは闇の中の瞬く光であると考え、生命とは清浄と汚濁の中で生きていくからこそ人は成長出来るし、美しく尊いのだという考えをナウシカは持っていた

また、光と闇は表裏一体であり、善悪とは同じものを違う角度で見ているだけで本質は変わらないのだという考え。

腐海がその役割を終えた時に、それまでに人間が変わらずにたとえ滅亡したとしても、それを受け入れる事が生きるという事なんじゃないか

この1000年の歴史で、それでも人は変わりながら生きてきたはず。これまでの瘴気と共に生きてきた人間の知恵と学びを信じ、最後の結末はそれが出来るか決めるのはこの星であって私達はその星にすべてを委ねるという考え

原作版のナウシカを読んで「平和」とは何なのかを考えてみよう

ナウシカの言葉

食べるのも食べられるのも同じ
地球全体がひとつの生命だから

世界を敵と味方だけに分けたら
世界を焼き尽くす事になってしまう

強い力をもつものは
力の恐ろしさも学ばないといけない

個にして全　全にして個　ある偉大なオームに教わりました。一部は全体を含んでいる

浄化された世界にどんなに憧れても
私達はそこでは生きてはいけない

人間が世界の調和を崩すと
森は大きな犠牲を払ってそれを取り戻そうとする

戦争は憎悪と復讐の繰り返し
憎悪と復讐は何も生み出さない

私の中にも闇はある

蟲や腐海にとっては突然変異体の粘菌ですら仲間なんだ