韓国BLキリングストーキング、愛はあったのか?
注意
この作品は本当に良く出来ていて、人の痛み苦しみがとてもリアルです。
なので、必要以上に心を持っていかれない方のみ読める作品だと感じています。
多くの方と語り合いたいけれど、本当に人の心を支配してしまう程のパワーも持っていますので、ご注意ください。
(私はメンタル強めですが、10日くらい引きずりました)
はじめに
こんなにも遣る瀬無い想いになるなんて・・・
キリングストーキングを読み終わった時の余韻は、波紋ではなく大波として私の心をえぐってきました。
予想外に引き込まれ、下手くそな感想文まで残そうとしている始末!
これで、君らから卒業させてくれ、勘弁してくれという気持ちと、作品へのリスペクトを持って・・・
この稚拙な感想でも、どなたか同じ沼にはまった方に寄り添えたらと思います。
ウジンとサンウの間に愛はあったのか
キリングストーキングの最大の論点ではないでしょうか。
最期まで直接的な愛の言葉は無いし、そもそも正気でないし、『愛』を確信できるものは無かったと思います。
読者は彼らの関係に愛を見出したのか、彼らの関係は一体何だったのか、とても気になるテーマです。
今回は「愛はあったのか」を焦点に書いてみたいと思います。
(感想何度書き直したことか、今度こそ完成させて自分)
結論から言うと、私の考えは愛はあった派です。
二人ともタイプは違うけれど、自分本位でしか人と関われないし、精神を病んでいる常態にあります。
とんでもない虐待受け、愛を知らずに育ち、自分事で精一杯、他者と関係を構築することなんて当然できないわけです(一人は他人をぬっころしで自分を維持している程)
そんな彼らは、彼らなりにお互いに愛情をもっていた「瞬間はあった」とそう思っています。
(クギ先生が、その解釈を読者に託して、チープに「愛してる」とか言い合わないのが良いんですよね)
愛を感じたエピソードを紹介
■遊園地デート
このエピソード切なくてとっても好きです。
3部冒頭のエピソードで、この頃にはすっかり共依存関係に落ちています。
関係はサンウが支配していますが、サンウはウジンを遊園地へ連れていくし、プレゼントもしてあげるんです。
(1部では殺人の共犯にし、恐怖と暴力で支配してきた男がウジンを喜ばせようとするなんて大進歩!しかし、DV男の典型ではある!)
そして、デート中、サンウが二人で撮った写真を捨てようとします(毎回ここで泣いてしまう~)
ジェットコースターで「俺のことを信じるな」「めちゃくちゃになっちまうぞ」とウジン(写真)を一瞬手放そうとするんですね。
自分といたらダメだと、正気なサンウが見せる一瞬の優しさに心が締め付けられます。
これはウジンに対しての情なのです。
笑顔のウジンがサンウに「気持ちいいですね!」と無邪気に声をかけると、
当然、次の瞬間には不安定なサンウは母親とウジンを重ねているため手放せなくなります
(この辺は読み返すと残酷で、母ウジンが必要だったんだよなと・・・)
破滅に近づいていくんですね。
■クリスマスおうちデート
これも私の好きな地獄ピソード!
騎乗位プレイ中にサンウがウジンを「母さん」と呼んでしまう・・・
ウジンは自分が母親の代わりだなんて知りませんから、「母さん」と呼ばれて戸惑います。
サンウも母親を求めていたことがばれて居たたまれなくなって数日家出。
今までだったら逆向して暴力を振ってもおかしくない展開だったのに、「もう怒ってないか?」とウジンの顔色を伺うようになります。
やっぱりウジン自身に変に思われたく無いという想いがあったと思います。
■スンベVSサンウ肉弾戦、ウジンの裏切りとサンウの怒り
これはラストに向けての切ないエピソードです。
スンベがサンウを倒しにやってくるんだけど、ウジンと共謀しているとサンウは勘違いしてしまいます。
最終的にスンベでなくウジンを殺そうとするサンウ・・・紛れもない愛憎です。
愛したからこそ憎くて仕方がないんだけど、ウジンはサンウを愛していても理解はしていないため「殺されそうになった!愛されていなかった!」とトラウマになってしまい、その後サンウの顔を思い出せなくなってしまうのです。
以上3点のエピソードからみてもサンウからウジンへの愛はあったと考えます。ウジンからサンウはストーカーをするくらいですから不健全ですが、それも愛・・・(ごめん、ウジン全然掘り下げてなくて・・・)
二人の歪んだ愛で感じたこと
そもそも、愛って綺麗じゃないし、滅茶苦茶利己的なんですよね。
完璧な人間の恋愛模様しか物語にならない、承認されないなんて違うよね?
誰だって人を愛して、完璧な終わりを迎えなくても、こんなに濃厚な愛の物語になるのよ?
読者だって歪んでるでしょ?
そんな風にこの作品を読みました。
だから、私は、二人の間に愛はあったと承認します。
苦い人生だったけど、奈落の底で愛してくれる人はいた!本当に不幸だったけど、愛されていた!
愛については以上で、他にも語りたいことはあるんだけど、一旦「最期」についてだけ書いて終わらせます
二人の最期について
サンウはスンベとの戦いの末、重度の火傷を負い、搬送先の病院でモブおばあちゃんに枕を押し付けられて亡くなりました。
ウジンは被害者として保護されるため、サンウから卒業するつもりでいるのですが、最期の時にサンウが自分の名前を呼んでいたと聞かされ、再びサンウに執着してしまいます。
そしてサンウの幻影を追いかけて赤信号の横断歩道を進んでしまい(おそらく)絶命することになりました。
とても遣る瀬無いけれど納得のラストシーンでした。
二人には未来も希望も最初からありませんでしたから。
何度嚙み締めても辛い現実です。
苦い作品ですが、救いなのではと解釈していることがあります。
横断歩道の信号機、赤が点滅しているんだけど、歩けのイラストになっているんです・・・
サンウが望んでいた愛は「一緒に死んでくれること」でした。
だからサンウがウジンを迎えに来たんだと解釈しています。
妄想なのか現実なのかわからない世界を二人は脱出しました。
もう終わったよ、楽になってねと言ってあげたいです。
余談
現代的な問題をテーマにした作品でした。
精神疾患って触れにくいんだけど、ここまで分析してリアルに描ける圧倒的な才能に脱帽です。
嫌悪感からキャラ愛を誕生させてくれるとは・・・自分でもサンウ好きになってしまった時、怖かったです。
BLというジャンルでは納まらないので、エンタメ好きな方全体に読んでほしい作品だと思いました。
もしキリングストーキングにIFがあるなら、恵まれた環境で育った彼らが出会う事なく、笑顔で生きているところがみたいです。
サンウジは奈落でなければ成立しないカプなので、それが爆誕するより、生き生きとしたサンウ、ウジンが何より大切です。
読んでくださった方がいたら、ありがとうございました。
スンベに触れずだった・・・!
また機会があれば感想追記したいと思います。
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