税金の未納と医療機関の未受診はたぶんほとんどパラレルで、

チュートリアルの徳井さんがズボラが祟って所得を申告していなかった話、今風に言えばわかりみが深すぎて、もはや安堵すら感じている自分がいます。

どういうわけか、ぼくは実際よりもかなり几帳面そうに見えるらしく、完璧主義者だとさえ思われることもしばしばありますが、たとえば住民税は毎年罰則金が発生したころに払いに行くくらいにはずぼらです。

もちろん払うつもりがないということでは全然ないのですが、とはいえ流石に俄然払いに行きたいという強いモチベーションも特にないので、積み上がった督促状(未開封)の圧力が面倒な気持ちをが上回ったあたりでようやく重い腰を上げる、という具合です。

いっそ最初から差し押さえてくれよ、と思います。税と社会保障の一体改革はどうなったのでしょうか。


ところで、公衆衛生領域やヘルスケアビジネスでは、しばしば未受診患者のことが話題に上がります。受診すべきだがしない潜在的な患者さんを、どう受診まで誘導するかという課題です。

これは医の倫理、あるいは公衆衛生の倫理で言えば、手遅れになるのを防ぎ生涯QOLを維持するという課題であり、ビジネスの倫理で言えば、潜在顧客をいかに発掘するかという課題です。このあたりは医の倫理とビジネスの倫理が、ある程度幸せにかみ合っている領域ではないかと思います。一部の方はお察しの通り、ここにフーコー的な議論が入ってくると単に幸せというわけにはいかなくなってくるのですが、ややこしいので今回は棚上げします。

さて、受診すべきタイミングできちんと受診すれば手遅れを防ぐことができるのに、人はなぜ手遅れになるまで医療機関を訪れないのか。この問いについて、医療業界にどっぷりつかっているとしばしばその出発点を見誤るのではないかという気がします。

僕は最近、そういう方々の気持ちがほんとうによくわかります。もしも医療者でなかったら、たぶん40代くらいで脳梗塞を起こして救急搬送されるまで、一度も病院に行かなかったのではないかと思っています。

医療機関に行かないのは、税金を払いに行くのと一緒で、まず面倒くさい、そのうえ行動を起こすことによって必ずコスト(納税、あるいは、受診料・投薬・待ち時間を含めた通院そのものの負担、等々…)が発生するからです。病院が嫌いなわけではない、とはいえ新たな厄介事を抱えることになるとわかっている場所に、俄然行きたいという強いモチベーションは普通ない。いっそ医者がうちにきてくれよ、と僕ならたぶんそう思います。

こういう問題の解決方法を考えるために、行動経済学の話をしてもいいし、産業医学の話をしてもいいし、もっとカジュアルなヘルスケアサービスの話をしてもいいし、あるいは遠隔診療の話をするのもいいと思います。ただ、そういう議論は、たぶん出発点をきちんと見極めてからやったほうが、よりいいに違いない。

ほんとうの核心は、「一体僕はどうしたら、喜んで住民税を納めに行けるようになるだろうか?」という問いにこそあります。住民税をなかなか納めにいけないことと、なかなか医療機関を受診できないこととはたぶん完全にパラレルで、医療関係者はそういうパラフレーズを介してしか、この問題のほんとうのところにはアプローチできないような気がします。いや、こういう言い換えでアプローチできるのは、僕のようなズボラだけかもしれませんが…。


ちなみに、ご存知の人はご存知だと思いますが、督促状が入った封筒は、段階を踏んでだんだんエグい感じになっていきます。この封筒が見るからにヤバいという雰囲気をかもしだすようになってくると、そろそろ行くか…となる。いっそ初めからそういうヤバいの送ってくれよ、と思います。

もしかしたら、症状が出ず危機感をもたないまま重症化に至った慢性疾患の患者さんも、似たようなことを感じたりするのかもしれない。いつもそんな風に思います。

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