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短編小説

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2023年8月の記事一覧

君と花火

「夏の恋って花火みたい。どきどきして、わくわくして、たのしくて。だけどたのしいのはそのいっときだけで、さいごにどかんと胸の高鳴りがくると、突然に終わってしまうの。いつもそう。はげしく燃え上るけど、あっけなく、簡単に終わってしまうの」  と彼女は言った。 「恋多き女の宿命だね。楽しければそれでいいんじゃない?」  僕は彼女に感想を述べた。 「うん。だけどね、こんどの恋はどかんと来る前に終わってしまったの。肩透かしなの。がっかりなの。失敗の恋なの」 「失敗の恋?」 「そう。夏の