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短編小説

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僕の短編小説集です。
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2022年12月の記事一覧

無料の君

 テーブルの上のスマホのアラームが鳴った。 「じゃあこれで」  と言って僕は席を立った。 「ちょっと待ってよ。これでって何?」 「だって時間だから」 「時間ってさあ、確かに最初の30分は無料だって言ったけど、30分で帰るわけ?」 「うん、だってこれで充分だから」  僕はデート・クラブに申し込み、彼女を選んだ。  最初の30分はお試しで無料、それ以降が有料になる。  僕は喫茶店で彼女に会い、会話をした。そして30分が経ったのだ。 「だから待ちなさいよ。こっからはプライベー

ドンキで殴られた

「ドンキで殴られたんだけど」  と彼女は僕に言った。 「え? 鈍器で殴られた? 大丈夫? 警察に行った?」  僕は彼女を心配した。 「いや、そんな大袈裟なことじゃ無いんだけど」 「え? だって、鈍器で殴られたんだよね?」 「うん、ドンキで買い物していたら殴られた」 「何だ、そのドンキか」 「何だって何よ? ドンキって言ったらドンキでしょ。他にある? そりゃあ海外じゃあドンキホーテのことをドンドンドンキって言うけど、ドンキに他の呼び方あった? ああ、マクドナルドのことをマック