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「私、彼のことを愛さないようにしているのよ」 と真奈美は唐突に言った。 僕は缶コーヒーのプルタグを開けた。 「どうして?」 僕は缶コーヒーを一口飲んでから彼女の顔を見た。 僕らは公園のベンチに腰かけている。 休日の公園で、僕は真奈美の姿を見かけた。 真奈美は僕が今付き合っている彼女の友人だ。彼女とは何度か顔を合わせた事はあったが、これと言って直接言葉を交わした事が無いし、お互いの事をあまり知らない。しかしながら公園のベンチに座って空を眺めている彼女の姿を見つけて
2 真奈美が死んだという連絡を受けて、香津子はとてもショックを受けていた。 僕は何もしなかった。 僕は何もしないことで、真奈美を殺してしまったのかもしれない。
3 ベッドの中で、僕は背中から香津子を抱きしめた。 パジャマの裾から手を入れて、胸を触った。 そしてその手を滑らせて下の方へと移動すると、香津子の手がそれを止めた。 「生理だから」 と彼女は言った。
「他の女と寝ているんでしょう?」 と香津子が僕に尋ねた。 「寝てない」 僕がそう答えると、香津子は「嘘つき」、とつぶやいた。
6 僕は人事異動で、開発部門から生産部門ヘと異動になった。 異動先は、海外生産のサポートをする部門だった。 仕事の環境が変わることで、僕は香津子のことを忘れることができそうだと思った。
7 「ねえ、東京に連れて行ってよ」 とエリカは僕に言った。
8 エリカはアルバイトを見つけて働き始めた。 僕のアパートに居候をしていたが、ほとんど言葉を交わすことも無かった。 セックスもしなかった。
9 ある日、僕のアパートに男が現れた。 男はエリカの幼馴染なのだという。 男はエリカを地元に連れ戻したいのだと言うのだ。
10 「君の元カノに会ったよ」 と藍崎は僕に言った。 僕と藍崎は駅前の居酒屋で飲んでいた。
11 「マリエです」、と彼女は言って僕は彼女から名刺を受け取った。 彼女はエリカだった。
12 台湾からの来客があった。 取引先のメーカーの人たちだった。 英語が話せる女性の営業担当と中国語しか話せない技術者の2名だった。 僕は中国語が話せないし、英語も会話となるとあまりできなかった。 英語が話せる同僚と、中国語が話せる同僚の存在はありがたかった。
13 男がまた僕のアパートに訪ねてきた。 男は大山明と名乗った。 以前の僕だったらそのまま追い返していたところだが、僕は変わった。 僕は大山を誘って、居酒屋で飲んだ。
14 僕はエリカに電話をした。 電話をするつもりなんてなかったのに。 エリカは僕の電話に出ると、「同伴出勤してよ」と言った。
15 「中に入れてよ。濡れているのよ」 と香津子は言った。 僕のアパートのドアの前に立つ香津子は、雨で濡れていた。 僕は香津子を部屋の中に入れた。