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2 真奈美が死んだという連絡を受けて、香津子はとてもショックを受けていた。 僕は何もしなかった。 僕は何もしないことで、真奈美を殺してしまったのかもしれない。
3 ベッドの中で、僕は背中から香津子を抱きしめた。 パジャマの裾から手を入れて、胸を触った。 そしてその手を滑らせて下の方へと移動すると、香津子の手がそれを止めた。 「生理だから」 と彼女は言った。
「他の女と寝ているんでしょう?」 と香津子が僕に尋ねた。 「寝てない」 僕がそう答えると、香津子は「嘘つき」、とつぶやいた。
6 僕は人事異動で、開発部門から生産部門ヘと異動になった。 異動先は、海外生産のサポートをする部門だった。 仕事の環境が変わることで、僕は香津子のことを忘れることができそうだと思った。
10 「君の元カノに会ったよ」 と藍崎は僕に言った。 僕と藍崎は駅前の居酒屋で飲んでいた。
11 「マリエです」、と彼女は言って僕は彼女から名刺を受け取った。 彼女はエリカだった。
12 台湾からの来客があった。 取引先のメーカーの人たちだった。 英語が話せる女性の営業担当と中国語しか話せない技術者の2名だった。 僕は中国語が話せないし、英語も会話となるとあまりできなかった。 英語が話せる同僚と、中国語が話せる同僚の存在はありがたかった。
13 男がまた僕のアパートに訪ねてきた。 男は大山明と名乗った。 以前の僕だったらそのまま追い返していたところだが、僕は変わった。 僕は大山を誘って、居酒屋で飲んだ。
14 僕はエリカに電話をした。 電話をするつもりなんてなかったのに。 エリカは僕の電話に出ると、「同伴出勤してよ」と言った。
15 「中に入れてよ。濡れているのよ」 と香津子は言った。 僕のアパートのドアの前に立つ香津子は、雨で濡れていた。 僕は香津子を部屋の中に入れた。
16 朝、目を覚ますと、裸の香津子が隣で寝ていた。 香津子は僕を見て、「おはよう」と言った。 僕は香津子と初めて結ばれた日にタイムスリップをしたかのような錯覚をおこした。
17 僕は初めての中国出張が決まり、その準備で忙しくなった。 パスポートを取ったりスーツケースを買ったり、中国語を勉強したり。 同僚とキャバクラに行ったが、そこにはもうエリカはいなくなっていた。 エリカはどこに行ってしまったのか?