鼻中隔矯正手術を受けた話
こんにちは、藤田充です。
先日、手術を受けました。命に関わる病気ではありません。
同じ症状で悩まれている方、手術を受けようか迷っている方が、手術や入院生活がどんなものかイメージできるように、ぼくが受けた手術についてまとめておこうと思います。
1 困っている症状
それは「鼻づまり」です。もともと何年も前から鼻閉感は年中あったのですが、ここ半年〜1年で特にひどく感じるようになりました。
程度の増減はあれど、ひどいときは片方の鼻が完全に詰まってしまい空気が通らない、もう片方の鼻も通りが悪い状態で、口呼吸を余儀なくされました。特に食事中は息がしにくく、睡眠中は口の中が乾燥してカッピカピのパッサパサになってしまいます。その悪い状態になる頻度が次第に多く感じるようになってきました。
そして、ここ数ヶ月では明らかな鼻声状態が頻繁に起こるようになり、周りの人からも「風邪?」「いつ治るの?」と指摘されるようになりました。自分でもしゃべっていて違和感や不快感があり、歌いにくさも感じていました。
2 手術に至る経緯
現在はインターネットの時代ですのでもちろん検索して原因を調べました。(検索は症状が悪化する前からしていましたが)
そして出てきたのが【鼻中隔湾曲症】です。左右の鼻の穴の間の壁の軟骨が曲がっていて、空気の通り道を狭くしているという状態です。そこに、生理的なものや、アレルギー性鼻炎からくる粘膜の腫れも重なって、さらに空気が通りにくくなってしまうわけです。
ある程度原因を自分で確認したあと病院で診察をしてもらいました。やはり鼻中隔が曲がっており、粘膜も腫れているとの診断です。ちなみに、鼻中隔は半数以上の人がある程度は曲がっているものだそうで、僕の場合も極端に大きく曲がっているわけではないとのことでした。しかし、それによって本人が困っていて、生活に支障が出ていると感じている以上、治療の対象となります。
お医者さんからは、根本的な治療をするならやはり手術です、との回答でしたが、ひとまずは内服薬で粘膜の腫れを抑えることにしました。しかし、いくつかの薬を試してみましたが、どれも十分な効果を感じられず、ただ月日が過ぎていくだけでした。点鼻薬や鼻スプレーなど即効性のある薬も使ってみたところ、使用後には鼻の通りはよくなりましたが、結局のところ一時的なもので、またすぐに元の状態に戻ってしまいます。このような薬を常用するのはあまりよくないとのことだったので、最終的に手術をすることを決意しました。
3 3つの手術
今回受けた手術はつぎの3つです。
・鼻中隔湾曲症 に対して【鼻中隔矯正手術】
・両慢性副鼻腔炎 に対して【内視鏡下両副鼻腔手術】
・両肥厚性鼻炎 に対して【両下甲介切除術】
2つ目にしか内視鏡という言葉がついていませんが、ほかの2つも目で確認できない奥の方を見るときには内視鏡を使用します。手術は鼻の穴から行うので、外側(顔の皮膚)を切ったりはしません。
【鼻中隔矯正手術】で鼻中隔の軟骨を取り除いて湾曲をなくします。
【内視鏡下両副鼻腔手術】で副鼻腔の壁を破り鼻腔とつなげます。たまっている膿も吸い取ります。
【両下甲介切除術】で鼻の中の腫れやすい粘膜を切除して減量します。
(お医者さんからの説明の紙参照)
ちなみに、ぼくは看護師の仕事をしていて、過去に手術室にいたことがあります。そのときに耳鼻科の手術にも入っていて、今回の手術もたしか1度か2度(?)やった記憶があります。ですので、手術の内容や全身麻酔については理解はできていました。
4 入院(手術前日)
さて、外来受診のときに先生と手術日の決定(約1ヶ月後)をします。そして、入院の数日前に術前検査として、採血、採尿、心電図、肺機能検査、レントゲン、コロナ検査をし、特に問題がなかったので、そのまま手術日の前日の午後に入院しました。
大部屋を希望していたんですが、大部屋が空いていないということで個室に入りました。個室は部屋代が大部屋の何倍にもなるので、できれば大部屋が良かったんですが仕方ありません。でも術後のあの辛い状況を考えると今では個室で良かったと思ってます。せっかくなのでのびのび過ごさせてもらいました。
入院日は、看護師から入院生活のことや手術までの動きなどを説明されました。
手術開始は13時。
5分前に手術室へ到着するように準備をする。
手術前日の21時以降は水とお茶以外飲食禁止。
手術当日10時からは水もお茶も禁止、点滴の針を刺して固定。
手術が終わったら同じ部屋に戻ってくる。
術後3時間はベッド上安静、うがい禁止。
翌朝までは飲水禁止。
初めて歩くときと水を飲むときは看護師が見守り。
などなど。
あとで書きますが、この【術後から翌朝まで】が本当に辛かったです…
とにかく入院当日は、鼻づまり以外はいたって健康な成人男性なので、普通に過ごして18時には最後の食事をし、21時に就寝しました。
5 手術当日(術前)
当日の朝ごはんは無し。
肌着を脱いで1部式の病衣(浴衣みたいの)に着替えます。そして、深部静脈血栓症予防のため弾性ストッキング(膝まであるきつめのストッキング)を履きます。
深部静脈血栓症とは、いわゆるエコノミー症候群のことで、長時間同じ姿勢でいると足に血の塊(血栓)ができやすく、それが肺にとんでしまうと肺血栓塞栓症という重大な病気に繋がる可能性があります。
10時には看護師が来て、左腕に点滴の針が刺されました。手術に使う針は少し太めの針なので痛かったです。(人に刺すのはいいけど自分が刺されるのは苦手…)
ここからはもう水も飲めません。
その後、手術室看護師が術前訪問にきて手術についての説明や確認事項を話してくれました(オペナースだった頃を思い出します)。ぼくが手術室の看護師をやっていたことはもう知られているようで、「分かっている人に説明するのもなんですが…」と苦笑いをしていました。
手術予定時間は3時間(+麻酔をかける時間と醒ます時間)です。
手術1時間前(12時)。
手術当日には、術後の説明と、もし何かあったときの連絡のため、付き添いが必ず必要です。ぼくは独身なので母親(元看護師)が来てくれました。
そして12時55分、病室で待つ母を後にして、看護師とともに手術室へ向かいます。
直前までは、手術を受けることをどこか他人事のように思っていたけど、さすがに手術室へ歩いている最中は胸がザワザワしてきました。
そして手術室の入り口に着きます。
ここでちょっと余談なのですが、手術が決まってからこの日まで、手術を受ける夢を見たことがありました。その夢で見た手術室の入り口と、現実の手術室の入り口が酷似していたので、さすがに少しゾッとしました…。もちろんこの病院の手術室に来るのは初めてです。
やっぱり何かこう、現代の科学では証明しきれない何かが働いているんでしょうか…。
ともあれ、看護師が受付を済ませ、たくさんある手術室を横目に廊下を進み、実際にぼくが手術する部屋まで到着しました。患者間違いのないように本人確認を行い、手術台に横になります。心電図、血圧計、パルスオキシメーター(酸素測るやつ)、もろもろ体に付けられます。直前の本人確認、手術内容確認、麻酔器準備確認が終わると、麻酔の薬が点滴から流し込まれます。この薬、本当にすごくて30秒くらいで意識なくなるんですよね。手術室看護師をしているときにいつも(めちゃ早いなあ)と感心してました。
そんなぼくも御多分に洩れず、あっという間に眠りにつきました。ただ、最後の記憶を思い出すと、眠りに落ちる直前の頭重感がすごかったです。フワッと意識が飛ぶものだと思っていたので、かなり強烈です。2Gくらいかかってる体感。
(うぅ〜頭が重い〜)なんて考えているうちに僕の意識はなくなるのでした。
6 手術当日(術後)〜苦しみのピーク〜
((…ujiたさ〜ん、藤田さーん、手術終わりましたよ〜))
目を覚ましたときには手術は終わっていました(当たり前です)。
なんか名前を呼ばれていることは分かるけど意識が朦朧としていて何が何だか思考が働かない。正直、手術室から病室へ戻ってくる間の記憶はありません。呼びかけられないとまた意識が遠くなっていくのです。手術台からベッドへ「ヨイショーっ!」って移された感覚だけは覚えてます。
病室に戻ってきてからは本当に辛かったです。一番の山場でした。
まず術後の状態として、両方の鼻の奥に止血のためのガーゼがぎゅうぎゅうに詰められていて完全に鼻呼吸はできません。鼻の入り口にはさらに綿球が詰められています。
これは当初から説明もされていてわかっていたことなのですが、何が辛いって、ガーゼで圧迫止血しているとはいえ、それでも出血は続いていて、血が喉の奥に流れ込んでくるんです。しかもガーゼについている薬が混じっていてこれがとんでもなく苦い。
ここでみなさんに思い出しほしいのが、入院時に説明されたあの一文です。
『術後3時間はベッド上安静、うがい禁止』
うがい禁止……??
地獄です。本当に地獄でした。
麻酔から覚めたばかりで完全に意識もはっきりせず、体も重く十分に動かせず、酸素マスクも付けられているなか、口呼吸のみで息がしづらい、喉には血と薬が垂れ込み「苦い!気持ち悪い!」と涙目でムセこみながら、口をゆすぐこともできず、なんとか体を横に向けてティッシュに血を吐き続けること3時間…
あれは現実だったのか、今考えるとよく分からなくなります(現実です)。
ちなみに病室へ戻って来たのは18時頃だったので5時間くらいかかったみたいです。予定時間が3時間(麻酔入れてもまあ4時間)のつもりで待っていた母はさすがに少し心配したそうです。
そんな母も帰っていき、病室で1人悶え続ける男。
21時になると看護師がやってきてうがいの許可がおります。同時に歩きチェックもしてベッド上安静からも解放。口の中をゆすいでホッとします。
このときトイレにも行ったんですが、ここでまた術後の苦しみが始まります。
長時間の手術をするときはバルンカテーテルという尿の管を入れるのですが、今回ぼくもそれを入れられました(入れるのは麻酔で寝た後です)。術後の尿の管は入れたままのことが多いのですが、ぼくは鼻の手術で術後は比較的すぐ動けるので、手術が終わったあと目が醒める前に抜いてもらっていました。
看護師が、しっかり尿が出たかの確認もするのですが、
おしっこ、出たは出たんですが…
《激痛》
おそらく管を入れた時か抜いた時に尿道が少し傷ついたんだと思います。もうこれはしょうがないことなんですが、それでも
『おしっこするたびにこの痛みに耐えなければいけない』
という絶望で頭がいっぱいになりました…
ただ、人間の自然治癒力はすごいもので、何もしなくてもだんだんと回復して痛みも弱くなっていきました。それでも完全に痛みがなくなったのは術後3日目、退院した日の夜でした。
さて、うがいができるようになったとはいえ、鼻の痛みもある中、血液の垂れ込みによる喉の不快感は変わらずです。
その日は一晩中、喉の不快感で起きてはうがいをしてベッドに横になり、また不快感で起きる、の繰り返しを15〜30分おきしていました。
7 術後1日目
朝6時、看護師がやってきて熱や血圧を測って、水飲みチェックをします。特に問題なく飲めて飲水も可となりました。
このとき鼻の痛みがまだ辛かったので、ようやく痛み止めをもらいました。この日は結局朝昼夜と3回飲みました。痛みは我慢してはいけません。
7時半には朝食が運ばれ、食事も開始となりました。ただし術後最初の食事は「おもゆ」「みそ汁(具なし)」「ゼリー」「たいみそ」「牛乳」以上。
こういう感じなんだ…とちょっとがっかりしつつも、なんだかんだ体があまり受けつけず、少し残してしまいました。(7割以上食べないとメインの点滴が継続になってしまうのでがんばって食べました)
お昼ご飯はお粥にレベルアップし、夕食にはもう普通のお米でした。食欲も戻ってきて、微熱が出てて微妙なだるさはありましたが、体もだいぶ普通に動けるようになりました。
ただやっぱり鼻の奥に詰まったガーゼが気になって息がしにくくて仕方ないのと、軽くなってきたとはいえまだまだ喉の垂れ込みが続いているのと、おしっこの痛みで憂鬱な時間が続きます。
翌朝の診察でガーゼ抜去ということでしたが、この日の夜もまとまった時間寝ることができず、目が覚めるたびに(あと8時間… あと5時間…)と、朝が来るのが本当に待ち遠しかったです。
あとこの日にしたことは術後の採血と、抗生剤の点滴の開始です。手術はたくさん針を刺されます。
8 術後2日目
8時半、診察室で鼻のガーゼ抜去をしました。鼻用の小さめの長方形のガーゼなんですが、右に5枚、左に4枚つまっています。これを引き抜くときがまた辛い。
痛い、っていうか、鈍痛、っていうか、、とてつもない不快感って感じです。ガーゼは1枚ずつ引き抜くので、9回も我慢しました(涙目)
ここが辛いポイント最後の山だったと思います。
ガーゼがなくなり通りのよくなった鼻を実感し感動に浸るのもわずか、まだ出血は完全に止まっていないので、鼻の入り口の綿球は、退院後の次回の診察まで詰めておいてくださいとのこと。ようやく息苦しさから解放されると思っていたので少し残念でしたが、まあ綿球はいつでも自分のタイミングで外せる(交換できる)し、ぎゅうぎゅうガーゼみたいに完全に空気の道が遮断されてるわけじゃないので、少しは気が楽になりました。
夜には抗生剤も終了となり、点滴の針も抜去。かなり身軽になりました。
ときどきうがいをしたり、血の滲んだ鼻の綿球を取り替えたりしながら、この日も長い夜を越すのでした。
9 術後3日目(退院日)
この日も朝8時半に診察室へ。先生が鼻の確認をします。血を掃除するために吸引されてるときはちょっと辛かったけど、今までのことを思うと屁でもありません。
病室に戻り着替えをして荷物をまとめます。
10時には親が迎えにきてくれて、お世話になった病棟をあとにしました。
10 退院後診察(術後7日目)
退院してからは自宅や実家で静かに過ごしました。鼻の綿球は食事とお風呂の時だけ外して、あとはずっと詰めてたんですが、やっぱり息はしづらい。相変わらず夜は口の中が乾いて目が覚めます。
鼻の処置としては綿球の取り替えのほかに、朝夜の点鼻薬のみ。お薬は2日ぶんだけ処方されました。
鼻の出血と浸出液はまだ続いていましたが、綿球に染み付く量は少しずつ減っていきました。痛みは変わらず、小さく鈍い刺激が続きますが我慢できないほどではありません。
退院後4日目の朝10時、病院の耳鼻科外来で診察を受けます。綿球をとって少し鼻の中を確認したら、ボスミンとキシロカインという薬を浸したガーゼを詰めます。これで診察時の出血と痛みを抑えます。10分後、ガーゼを取って、先生がカメラを使って鼻の中(奥まで)を確認し、血液の残りがあれば吸引していきます。(鼻の壁に当たるとちょっと痛い)
これで診察はおわり。鼻の綿球はもう詰めなくてよくなりました。
次回の受診までのお薬の処方と、鼻うがいの指示が出ました。
11 おわりに
これで今回の鼻の手術の記録を終わります。
まだ鼻は完全に完治したわけではないですが、綿球が終了になったことで、ほぼ普段の生活に戻ることができました。術後一週間ほどで仕事も再開です。
鼻の空気の通りは劇的に良くなって、ほんとうに爽快です。きついこともあったけど、今後の人生のQOLを考えると、やっぱり手術して正解だったと思います。
冒頭でも書きましたが、鼻づまりに悩んでいるかた、手術を考えているかたにとって少しでも参考になれば幸いです。