終曲:明るいもの

私は根っから陰気でニヒリスティックな人間だ。陽だまりのただ中にあって、それを暖かい眩しいと感じるのではなく、やや暗がりにいてそこから陽を眺めて陽だまりというものを感じるような人間だった。それはそのまま「社会」という単語に置き換えても通用するもので、私は周縁に存在することを好む。
疎外を通して、初めて人は自分の顔を眺めることができる。それは決して美しいものではなく、満たされざる者、虚しい色合いを浮かべている。それを見ないがために、半ば強迫的に人はまた別の誰かを求めて塊になる。踊り続けることをやめられない、革命に散ったロココ末期のフランス貴族のように、腐り落ちていくものだ。
そんなものだ、そんなものだと静かに思いながら、それでも私は無数の生と共に生きていかなければならない。
私の言葉を真に理解した者はなく、また私も真に理解をした他人というものはいない。行方不明者のための棺を見るような、空洞が私の骨を満たして、皮肉にも肉体を支えている。

生きた人間の言葉は不思議と届かない。

ただ死人のみが、私の友人であり、これからもそうあり続ける。

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