見出し画像

奈良クラブ【外野の観戦記(vsF.C.大阪)R3.10.24】

はじめに

 この日は「生駒山ダービー」と呼ばれる試合で、奈良クラブの試合の中では負けられない一戦、内容よりも勝敗にこだわる一戦という位置づけだ。FC大阪は場所も近く、JFLに参戦した時期も近く、そして共にJリーグ入りを目指す上でライバルと思えるチーム。
 ところが、昨年(R2.11.22)のFC大阪との試合は、人数が少なくなったFC大阪にまさかの逆転負けを喫してしまい、試合の内容も完全に気持ちの上で負けてしまっていて、とてもダービーとは言えるような試合内容にならなかった。(林舞輝監督の進退が発表された時期もあり、奈良クラブの選手は試合に集中出来てなかったように思う。)
 そして、今年のFC大阪は毎試合ダービー並みの強い気持ちと集中力で戦い、逆に奈良クラブは前半は、チームの戦術が充分に浸透せず、なかなか勝ち星に恵まれず、「ライバル」と呼べるのかどうか分からない状況になっていた。
 
 だからこそ、勝たねばならなかったのだ。FC大阪とのライバル関係を続けねばならぬし、奈良クラブが地道にやってきたことをこの試合で示すには絶好の機会なのだ。
 
 そして、嬉しかったのが、この「生駒山ダービー」に向けて、選手がSNSで意気込みを発してくれたこと。監督が特別な試合と発言してくれたこと。そしてサポーターの熱量🔥がいつもよりも大きかったのが嬉しかった。

    生駒山を背に、試合前から「今から戦うぞ!」とばかりの太鼓🥁の音が聞こえました。

奈良クラブの時間

 前半は奈良クラブの時間であったように思う。金子雄祐選手が鬼気迫るプレスをかけていた。あんなに気合が入っているのは今まで見たことがない。相手との距離を一瞬にして0にして動きを止めていた。いつもよりも一歩早く、一歩深いプレスをかけていたように思う。一本、これが繋がればというパスがあったが、あれが繋がれば、奈良クラブは前節の鈴鹿戦のようにスペースを狙えるチームになっていくだろうが、残念ながらカットされてしまった。
 そして、田中奏一選手がことの他調子がよく、体のキレがいい。今季の中で一番動けていたのではないかと思う。前半のリズムを作り出してくれていたように思う。1点目のシュートもよく振り抜けたと思う。主導権を握っていた時に点が入って本当に良かった。
 森俊介選手のシュートも入った時は、今日の試合は出来過ぎだと思ったし、さらに前半最後に相手シュートがポストにあたってゴールにならなかったのは、「今日は奈良クラブの日だ!」と思えるような内容だった。
 そして何よりも今日は選手達の集中力がすこぶる高かった。気の抜ける瞬間は一度たりともなかったように思う。今季のいわき戦の時のような集中力を魅せてくれたように思う。

F.C.大阪の時間

 後半からFC大阪の時間になった。逆転されてもおかしくないような早い攻撃をサイドからしかけられた。どんどん深いところまで攻め込まれ、何度も危ない場面を迎えた。今日は最初から木匠選手が何度もチャンスを演出していた。坂本選手も最近は攻撃の方にいることが多い。この2人が前にいると脅威だった。前半の奈良クラブと同じようなミドルを決められ、勢いは完全にFC大阪のものとなった。その後、田中選手が交代で入ってきた。この選手はスピードがあって、後半の嫌なところで入ってくる。個人的には滋賀の松本翔選手のように得点に絡んでくる選手だと思っている。

 同点になるのは時間の問題と思えるような試合内容に点が入らないで欲しいと祈るように応援していた。

    初めて、音の鳴るものを手にして応援しました。(貸してくださった「たかっすぃ~さん」ありがとうございます。)

F.C.大阪の不運

 完全にやられた。。。同点だ。。。と思うシュートがあった。
 なぜか線審が旗を上げてくれた。自分は何が何だかわからないけど正直「助かった」と思った。あのヘディングシュートが得点となれば、試合の流れからして、逆転されてもおかしくない状況で、またもや昨季の試合と同じ逆転負けをHOMEで喫するのかと不安が頭をよぎった。それだけは勘弁して欲しい。

奈良クラブの幸運

 後半、完全に相手の流れのなかで一瞬、寺島はるひ選手が抜け出した。前節においても、左サイドからダイレクトで浜田幸織選手に繋いだ正確なパスでチャンスを作った。今回は桑島良汰選手にパスが繋がりゴールを決めてくれた。ここ一番での値千金のゴールだった。

 ここ一番で決めてくれる桑島選手にスタンドは大興奮だった。
 拍手が鳴りやまなかった。
 みんな不安で仕方がなかったんだろう。
 
 桑島選手は今季滋賀戦で初ゴールを決めてくれた。アウェーHondaFC戦で同点弾を決めてくれた。前回のHOME刈谷戦で決勝ゴールを決めてくれた。大事なところで決めてくれる。本当にいつもありがたいが、今回のゴールが、今までのゴールで一番嬉しかった🎉🎉🎉

 桑島選手は、時にはアンカーの位置まで下がりビルドアップの一躍を担ったり、時には相手ディフエンスに喰らいついて裏拳もらって倒されたり、時には自分のパスミスを自分で追いかけて奪いにいったり、時にはゴール前逆サイド良い位置でボールを受けアシストをしたりと、ゴールだけではなく随所でハードワークを惜しみなくしてくれている選手だ。
 その選手がまたもや大事なところで決めてくれた。本当に嬉しい。

タイムアップ

 2点差で勝っているのに、最後の笛がなるまで、選手はみな緊張感と集中を切らさなかった。2点差で勝っているのに、最後の最後までその2点を必死に守ろうとした。金子優希選手が何度もシュートを止めてくれて、そのたびに拍手が起こっていた。前線の選手も体をはって相手を止めてくれた。そしてタイムアップの笛がなった。
 
 勝った瞬間にこれだけ拍手が起こったのは初めてじゃないかな?
 
 よかった。生駒山ダービーが名ばかりにならないで済んだ。FC大阪もこれから奈良に来る時はライバルとして来てくれるだろう。そしてまた私達もFC大阪が生駒山を越えて奈良に来る時は迎え撃つ気持ちでスタンドに足を運ぶことが出来る。そういう緊張感のある試合がシーズンの中にあるのは良いことだと思う。
 
 絶対に負けられない試合と言いつつ、勝てるかどうかなんて分からない。でも今日は不思議な力がいっぱいフィールドに巻き起こったような気がする。奇跡とまではいかないが、スタンドの想いがフィールドに伝わったと思うような試合内容だった。
 
 今シーズン一番の情熱のある試合だったと思う。

    どちらの選手も今日は良い試合をありがとう。

おわりに

 ここからは、あくまでも個人の感想です。
 「勝たなければならない試合・結果が要求される試合」というのはシーズンに何度かは必ずあると思う。そういう試合に結果を出せたことは大きい。個人的には「ホームの生駒山ダービー」と「天皇杯奈良予選決勝」はそういう試合だと思っている。

 今日の試合、そういう試合だからこそスタジアムは歓喜に包まれた。
 
 だけど、これからの試合、全てが「負けられない試合か?」と言えば、自分はそうではないと思っている。自分達がそういうことを求めて、毎試合、毎試合、ダービーのように気持ちを前面に出して戦うことを期待したら、チームの戦術は歪んでくるように思う。

 チームに戦術を浸透させなければならないフリアン監督もそのあたりのことは勝ったからこそ危惧しているかもしれない。サポーター・ファンが毎試合そのような試合を臨んだら、戦術の積み上げはどうなるのか?
 そんなふうになってしまうと、一つ一つの戦術の積み上げが出来ず、集中を保てない試合は残念ながら敗戦を喫する可能性が高い。強いチームは、戦術の積み上げがあり、調子がよくなくとも勝ち星をとっている。きっと今はそういうことを大事にしてチーム作りをしているんじゃないかと試合を観ていて感じている。

 


 浜田社長もラジオで、刈谷のスタンドは観客が少なくてもサッカーをよく知っている人が多くて、印象的だったと言っていた。勝手な解釈で恐縮だけど、「今、自分達がやろうとしていることを理解して欲しい。奈良クラブのサッカーがこれから良くなるので、奈良クラブのサッカーもどんどん知って欲しい。」という意味合いにも聞こえる。
 
 奈良クラブはこれからシーズンを通して、様々なテーマを持って戦わなければならない。「天皇杯奈良予選敗退」「ホーム勝てない問題」など、今季は様々な問題が浮き彫りになった。そのなかで、今日の勝利は奈良クラブにとって大きな前進だと思っている。
 
 きっとこれから奈良クラブは良くなっていく。
 そう信じさせてくれる一戦だった。

 

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?