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PSV 23/24シーズン総括

PSVが6シーズンぶりのリーグ優勝達成!!!
年明けのフェイエノールトとの直接対決で踏みとどまり、4月頭のAZ戦を制したあたりでほぼ手中に収めていたものの、スパルタ戦でついに決着。

いつ決定するか、フェイエノールトの戦績がいつも以上に気になったここ数週、トロフィーリフトをするならホームで決まって欲しいと思っていたので、長引いたなと思いつつも最高の光景でした。

晴れてシーズン最終戦を終えたので、今回は、PSVの23/24シーズンの総括を綴りたいと思います。

欧州戦線での冬超え。そして、ランズカンピューン(オランダ王者)‼︎

成績で言えば、今季は大成功でした。

前年王者のフェイエノールトをシーズン前のヨハンクライフスハールで下すと、長く越えられなかったCLプレーオフを勝ち抜き、久しぶりのCL本戦。

アーセナルとの開幕戦は、同じくCLへの復帰となった彼らの祝砲を浴びて4-0。得失点差で大きなビハインドを負うスタートになりましたが、その後しぶとく勝ち点を稼いで運命の第5節セビージャ戦。歴史に残る大逆転を果たしてグループリーグを突破。

リーグ前半戦は見たことのない快走。リーグ最初の山であったアヤックスとの対決を制し、混沌にある彼らを最下位に叩き落とすと、その勢いはノンストップ。2023年のリーグ戦を全勝で終えて、冬休みへ。

冬明けも流石に全勝は途切れたものの、長く無敗を堅持。
2月中旬にはCLベスト16、対戦するはドルトムント。しかし、ホームでも相手に縋り付くような引き分けが精一杯で、2ndレグはかの有名な黄色い壁に勇気づけられた今季のファイナリストを前に撃沈、CL敗退。サンチョがえげつなかったですね。

同時期、国内でもフェイエノールトとの頂上決戦に敗れてベーカー敗退。リーグ一本に集中。2位フェイエノールトのペースが落ちなかったのもあり、勝ち点を積み続けるものの5月まで優勝決定が延びて、残り2試合でようやくの優勝決定。

振り返れば順位表の頂上に立って以後一度も譲ることなく完走。チームスタッツ、個人賞も独占と、文句なしの優勝でした。おめでとう!!!

得失点ともにリーグベストの数字を残しての優勝
(引用: https://eredivisie.nl/competitie/stand/)
ゴールランクトップタイにはルーク、アシストトップはフィーエマン
(引用: https://eredivisie.eu/stats/attack/)

前2政権で築いた基盤の上に、夏のオペレーションがハマる

今回の優勝は、中核選手の成長(フィーエマン、ボスカリ、テゼ)、決定的な補強(デスト、スハウテン)、タレントの成長(バカヨコ、サイバリ、ティルマン)がもたらしたもので、とても嬉しく感じています。

もちろん、近年の国外での指揮は失敗続きとは言え、新監督ペーター・ボスのその豊富な監督キャリアに見える経験の厚みは、エールディヴィジでは別格でした。

ピッチではバック4と6番を絡めた後ろ5人で相手のズレを作り、両WGへどれだけオープンな状態でボールを受けさせるか、攻撃から守備へのトランジションでどれだけ早く奪回するかの2点に、特に強いこだわりが現れていたように見えます。

そんな構築の上で生まれたボール回しの果てに生まれたゴールをBoszballという造語で公式が紹介するほど、今季は彼の手腕で様変わりしたように見えるチーム。

しかしながら、過去の2政権での模索も大きな役割を果たした感じられる点に、ひとしおの嬉しさを覚えるのです。

ボスが目指す攻撃的なフットボールにあるハイプレスへの順応に困る選手が見られなかったのは、3年前にやってきたロガー・シュミットが、彼の代名詞ともいえる高いインテンシティ主体のサッカーをチームに求め、フィーエマンやボスカリ、テゼといった今季の中核選手たちを起用しはじめた彼の功績を思い出します。

また、ノア・ランの怪我、ロサーノのシーズンを通じての低調がありながらも山ほどゴールが決まったのは、ヨングPSVの選手たちを抜擢してある程度使うクラブの文化の勝利の賜物でもあります。

バカヨコとサイバリ。前任のファンニステルローイが少しでも長くプレー時間を与えようと、リードした試合で最後の5人目の交代でよく投入していた2人が活躍し、歴史的な試合においても大きな役割を果たしたことは、関係破綻でクラブを去った彼であっても、少しは誇らしくすら思っているはずです。

今季は、ババディが時々交代で使われる程度、気まぐれにウニケンらがデビューしたりと、若手の起用はやや控えめでしたが、それは前倒しで花開いた彼らの充実ゆえであり、アカデミーからの突き上げをまた楽しみに見守りたいと思います。

選手評

MVP: ルーク・デヨング(FW/元オランダ代表)

利き足は頭(死語)
(引用:https://x.com/PSV/status/1792288365968347479/photo/1)

今季のルークは、これまでPSVが優勝したときにいたルークそのものでした。スタッツも29ゴール(トップタイ)15アシスト(2位)と文句なしの活躍。リーグで史上初の全試合得点を達成し、史上最多得失点差記録、最多勝ち点の更新にも迫った今季のPSVの中心は間違いなくルークでした。

もう以前のように前線からボールを追いかけ回すのは厳しくなりましたが、彼を目掛けて蹴られるロングボールの脅威は健在。その大きな上背だけで落下点で競り勝つのはもちろん、最高のタイミングで点に飛び込んでくる彼のヘディングは、欧州はもちろん世界に誇れる名人芸と言える域にいます。

また、得点だけでなくマークを自分に集めてフリックしたり、DFを背負って胸で落としたりと、アシストに繋がる基準点としてのプレーも効果抜群でした。

エールディヴィジ通算得点2位のヨハン・クライフの記録まであと40ゴール。身体が許す限り、まだ直ぐには辞めるつもりはないと語った彼。
やや遠い数字ですが、この調子ならもしかすると、もしかするとしれません。

大活躍:
イェルディ・スハウテン(MF/オランダ代表)、セルジーニョ・デスト(DF/アメリカ代表)

バカヨコやフィーエマンも遜色ない大きな貢献をしてくれたと思いますが、継続性が特に際立っていたこの2人を取り上げたいと思います。


アスリートとして優れているわけでも、キックが一級品というわけでもない。見た目も含めて全てが素朴、悪く言えば地味。
しかし、チームメイトが預けたい時にベストのポジションにおり、預かったボールは滅多に失わず、フリーの味方に託すことができるメトロノーム。それがスハウテンです。

彼の素晴らしさは、主に守備から攻撃へ転じる場面で最大化されます。埋めてほしいスペースに必ず立ち、相手の長くなったトラップを悠々と絡め取ったり、相手の横パスを攫い次第、フリーで前を向いてる味方に託すまでのスピードが尋常ではなく、その姿は長らくチームが求めていた中盤の重鎮でした。

デストはシーズン序盤の試合勘の失われっぷりが不安になりましたが、秋以後は、ノア・ランの欠場やロサーノの不調で迫力不足になった左サイドで躍動。
アップダウンを繰り返す彼が全てを補い、後半戦は彼をいかにボックスに近い位置でプレーさせられるかが試合の鍵を握るほど、チームでも際立った存在になりました。

不幸にも、シーズンの終わりに膝の十字靭帯をトレーニング中に負傷。
この上り調子の中で、コパアメリカや来季の活躍の機会が絶たれてしまったことは、今季素晴らしい活躍をした彼には全く相応しくない結末であり、辛抱強く怪我の完治と復活を願うばかりです。

サプライズ:
イスマイル・サイバリ(MF/モロッコ代表)、マリク・ティルマン(MF/アメリカ代表)

サイバリは、今季トップ下でブレイク。元々WGとして期待されていただけあって足元には不安はなく、オフシーズンの努力が垣間見える太くなった身体がコンバートされた先で存分に活かされていました。

今季、彼が輝いたのは、ファイナルサードでボールを受け取ってゴール前までボールをゲインすることでの好機に演出や、中盤からエリア内に駆け込んでくるマーク外しのアタッカーとして挙げた得点の数々。それらがチャンピオンズリーグ(レンジャース戦、セビージャ戦)やトッパー(アヤックス戦、フェイエノールト戦)で発揮された勝負強さは、充実のルークすら上回る勢いでした。

トップチームで通年スタメンを争った初めてのシーズンで、小さな怪我に何度か祟られ欠場が度々ありましたが、不在を嘆くほどの存在まで成長するとは開幕前には全く予想sれていなかった彼こそ、今季のPSV最大のサプライズです。

バイエルンからのレンタルで夏の終盤にやってきたティルマンは、いかにも才能だけでサッカーやってきた大器という感じで、恵まれた体躯と、見た目に反して細かいタッチが得意なロマンあるMFです。デビュー戦で強烈なシュートを突き刺すと魅せると、ボスが何かを感じたのか、直ぐにスタメン争いに加わって、左ウィングとトップ下で起用されながら、9G10Aの大活躍。

とはいえ、サイドでは窮屈そうで、行き場を失って相手を背負ってどうにもならなくなったり、中央でプレーすれば無謀な突破やもたつきでボールロストを招くなど、プレー判断の悪さはまだまだ多く、トップチームでの経験不足を感じるあたりに掘り出し物感がありました。

先日、買取オプションが行使され、バイエルンに買い戻しオプションが付帯するものの、晴れてPSVへ完全移籍。来季は組み立てにも絡み、背番号10の映える不動の主力としての活躍を期待しています。

来季に期待:
ノア・ラン(FW/オランダ代表)、イルビング・ロサーノ(FW/メキシコ代表)

オランダでの覇権奪還、CLでの上位躍進の中心を担うはずだった超エールディヴィジ級の2人は、終わってみれば不発。

ノア・ランは、プレーしている日は別格。まさにエースにふさわしい選手で、開幕戦で早速ニアぶち抜きのオープニングゴールで強烈な自己紹介。左サイドのタッチライン際、ボールをアウトサイドでトラップし、1対1を挑む姿には雰囲気があり、3回チャレンジさせれば必ず大チャンスを作っていました。チームでも絶大な信頼をすぐに得ると、チームは彼を探して彼に何度もボールを託していました。

10月以後は負傷に次ぐ負傷で、年明けから出場がほとんどないままシーズン終了。元々前所属でも怪我での離脱が多かったため驚きは少ないものの、新エースに違いない彼のプレーがもっと観たかったというのは偽りようがありません。

離脱中、精神的な問題も伴い難しい状況にあったことを告白したり、優勝パレードの最中に突然、怪我の件でクラブと若干の見解の食い違いがあることをインタビューで話したりと、躁鬱の激しさが心配になる振る舞いが絶えないのが気がかりですが、ゆっくり休んで、来季はフルシーズンでピッチ上での大暴れを期待しています。

チームが歓喜に包まれる機会が多かった今季、煮え切らない笑顔でその輪の中にいたのが、前回優勝時の大エース、イルビング・ロサーノ。10月のアヤックス戦でハットトリックを達成したのをピークに以後は失速。

特にCLでの数少ない好機に、ファーにフリーの味方がいるのに無理に撃ちに行く、単独突破を図ってボールを簡単にロストするなどを繰り返したことで徐々に信頼を失い、冬には怪我で離脱。怪我から復帰後はベンチスタートも増え、絶対的な立場になるとの目論見は崩壊。今がキャリアのピークの年齢にある彼に、自分も周りも活きるプレーを皆が期待していたのですが、片鱗だけで本領が見られることはありませんでした。

来季からMLSに参戦するサンディエゴFCが目玉選手として彼の獲得を目指していると多く報じられており、最近では交渉はかなり具体的な段階にあり、来季の前半戦を戦った後に、年明けからMLSへ移るという話まであがっています。このまま、かつてのエースの復帰はほろ苦い結末になってしまいそうで、残念でなりません。

夏の展望

PSVを見ていて避けられないのは、毎夏の選手の入れ替わり。
特に今季のような成功の後には、スハウテン、フィーエマンら中核かつ上を目指す選手たちの流出が見込まれ、厳しい夏になる可能性が高いです。

中盤の新しい才能として、トゥヴェンテのスタインや、ユトレヒトのフラミンゴ(サッスオーロから貸出)といった次の才能を狙うのか、それともババディにプレータイムを与えて解決を図るのでしょうか。

大きなテコ入れが必須なのがバックス。

優勝したとは言え、CBはシーズン通じて全員がミスを連発し、なぜこの守備でこんなに結果が残ったのか、少々信じられません。
スタメンを任せられるCBの選手は必須で、ミスを頻発しスタメンはもう苦しいと言わざるを得ないラマーリョ、いまひとつ主力になりきれないオビスポの現状を考えると、2人は新たに迎えたいというのが願いです。

また、レンタルで加入したデストもこの夏で一旦バルサに帰還。リハビリ後、仮にPSVでプレーするとしても帰還は年明けの見込み。ファンアーンホルトに多くを望むわけにもいかず、現状のままではマウロ1人に依存することになる左SBの補強にも動くでしょう。

バカヨコがステップアップした場合にはアタッカーの補強もありそうですが、彼自身、昨夏に残留を決断したように、大きな関心を集める今夏もまだ地に足がついた選択をするように思います。

来たるEURO2024でサプライズとなり、自信をつけて挑戦に転じる可能性もありそうですが、その時にはバブル価格での売却も見込める上に、無理な引き留めはあまり行わないのがこのクラブなので、本人の背中を押すのではないでしょうか。

まだまだ再建に長い忍耐を強いられそうなアヤックス、スロットの栄転による新サイクルへ突入するフェイエノールトと、相対的にライバルたちが困難に直面するであろう来季。PSVは、来季も優勝の本命としてシーズンを戦うことになるでしょうが果たして今季のような素晴らしい立ち回りを夏の市場で見せられるかどうか、期待したいと思います。

あらためて、シーズンを通じて戦い抜いた全てのRood-en-Witのみんなに、PSV、優勝おめでとう!
<了>

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