《翻訳》意志ある投資と生活:植物素材中心の食生活と環境保護について

仕事と育児が終わった夜中に翻訳してたら丸三日かかりましたが(^^;)、ツイッターで出会った、植物素材を中心とした食生活に関する素晴らしい記事をご紹介します!

アメリカでは、植物素材を中心とした食生活がここ10年程で浸透し、最近その勢いは更に増しています。ヘルシーでエコロジカルな製品が沢山あります。

@TylerMayoras 氏による記事をみなさんに是非読んでもらいたい理由は、実に客観的かつ多くのデータに基づいているからです。彼は、食品業界に長年投資をしてきた投資家です。お会いしたこともないアメリカの投資家の方に、あなたの記事を翻訳していいですか?と聞くのは勇気がいりましたが、ありがたいことにオーケーをいただきました!難しく感じる部分もあると思いますが、皆様それぞれの視点でお読みいただければ幸いです。

Dear Mr. Tyler Mayoras,

Thanks so much again for letting me introduce your article to Japanese audience.

All credit belongs to @TylerMayoras. Original article is here.

元記事はこちら。著者は@TylerMayoras氏です。

意志ある投資と生活:植物素材中心の食生活と環境保護について

2017年3月2日/コラム•投資家/タイラー・マヨラス


ベンチャーキャピタル、ファミリーオフィス、消耗品メーカーは、肉、乳製品、卵といった動物性食品の代わりとなる植物性食品への投資を続けている。

食品業界で起きている最も顕著な変化のひとつに、動物性食品(そして伝統的にそれを提供している企業)離れの現象がある。40代以下の年齢層では、畜産業がもたらす健康、気候変動、環境への影響について、懸念を抱く人が増えている。

消費者が長期的に持続可能な食を求める中で、そのニーズに応える商品を開発する企業への投資が増えている。

我々の健康、ポートフォリオ、我々の住むこの地球に、長期的に影響を及ぼすであろう、大きな変化が起きているのだ。


植物中心の食生活がここ10年で大きく変わった背景とは

インターネットの登場で情報へのアクセスが容易になり、すべてが変わった。

昔の情報源といえば、政府が発表する健康や環境に関する情報や、有料の産業リサーチレポートなどだった。しかし、これらは信頼に足る情報源ではない。インターネットの登場で情報がより身近になったことで、専門家が競い合って研究をするようになった。

過去10年間、洞察力のある本や記事が出版されるようになり、動物性食品の代わりとなる植物性食品が発売されるようになった。このトピックに関する重要なドキュメンタリーも発表された。今日では、こうした情報はインターネットを通じて世界中に瞬時に発信されているのだ。


食品業界の投資家として、私は食料や農業に関する大量の情報を得ている。過去5年間で、少なくとも6つの映画作品によって、植物中心の食生活は動物性食品に比べてメリットがある、ということが浮き彫りになった。私のお気に入りの作品は、Forks over KnivesFood ChoicesVegucatedCowspiracyだ(全作Netflixで観ることができる)。

タンパク質をとるために家畜を利用するのは、非効率的極まりない。その理由を簡単にまとめると:

1、植物からタンパク質を摂る代わりに、それらの植物を動物にエサとして与える(この過程で多くの水を使用する)。

2、消費のために動物を殺す、処理する、輸送する(この過程で化学物質で土壌や水源を傷つける)。

3、処理と廃棄のために数十億トンの動物廃棄物が出る。結果、かなりの量の温室効果ガスが発生することになる。


人間は肉食動物ではないのか?タンパク質を摂るために肉が必要なのでは?

人間は「タンパク質のために肉が必要」な訳ではない。

もちろん、人間はタンパク質が必要だ。しかし、多くの植物にはタンパク質が含まれている。タンパク質を多く含む植物もある。私たちは生存するために肉が必要なわけではないのだ。人間は、植物由来の食生活で、十二分なタンパク質をとることができる。

植物性タンパク質を多く含むのは、豆、レンズ豆、チキンパス、キノア、大豆(豆腐)、セイタン(グルテン)、ナッツ、種子、ホウレンソウ等がある。

実際のところ、責任ある医学のための医師委員会から発表された『タンパク質神話』という記事によれば、平均的なアメリカ人は現在、必要なタンパク質の2倍以上を摂取している。


そのハンバーガー、注文する前にちょっと待って

もっと野菜やナッツを食べるのは嫌だ、と思うかもしれない - それよりも美味しいハンバーガーを食べたい、と。

敢えて率直に言うと、そのハンバーガーを注文する前によく考える必要がある。

2005年、動物性食品が与えうる悪影響について、重要な研究結果が発表された。コリン・キャンベル博士のチャイナ・レポートは、コーネル大学とオックスフォード大学が共同で実施した20年間の研究に基づくものだ。この研究では、中国のさまざまな地域で、がんやその他の慢性疾患による死亡率を調査した。

中国は土地は広大で、地域によって様々な食生活や食習慣が存在する。中国の東半分の都市部では、食生活はより欧米化していた(動物性食品を多く食べている)。中国の西側半分の地方部では、ほとんどの場合、食生活は植物素材が中心だった。

その研究結果は、いまもなお、衝撃的である。

研究結果は、典型的な先進工業国における、喫煙関連でない慢性疾患(心臓病、糖尿病、乳癌、前立腺癌および腸癌)の発症と動物性食品を中心とした食生活との間に実質的な関連があるというものだった。こうした慢性疾患は、植物性食品のみの食生活をおくるグループではほとんど存在しなかったのだ!

チャイナ・レポートに基づき、ベストセラーの本や数本のドキュメンタリー(上記)が発表されることとなった。

(注:あなたがこの研究を信じられない場合、疑うことには何の問題もない - 私はVegucated(ドキュメンタリー)を観ることををお勧めする。それを観れば、3人の普通のニューヨーカーたちが6週間植物性食品のみの食生活を行った結果どうなったかがわかる。彼らの体は変化し、重要な健康指標が劇的に改善された。)


植物素材中心の食生活は、どうして気候変動の進行を緩めることにつながる?

動物性食品を食べるのを減らし、生産資本をよりヘルシーな植物素材中心の食生活に投資することで、気候変動が進むのを緩めることができる。

アメリカが排出する温室効果ガスのうち、家畜産業が実際にどの程度を占めるのかについては激論がかわされている。企業による大がかりな調査やロビー活動がある一方で、政治的機関もあるので、家畜による温室効果ガス排出量(GGE)を正確に見積もることのは時に困難である。

しかし、論理的にある程度の割合を算出することはできる。率直に言って、それは恐ろしい数字である。

EPAは、2016年にアメリカでの温室効果ガス排出源に関する報告書を発表した。

報告書では、農業が温室効果ガス排出量全体の9%を占めると推定した。このうち、47%が家畜の腸内発酵(げっぷ、おなら)と肥料管理からきている(温室効果ガス排出量の約4.2%)。

残りの50%は、農作物の生産からきており、内容は肥料の使用、耕作および灌漑になる。アメリカで生産される穀物のおよそ70%は、家畜のエサである(温室効果ガス排出量の3.1%)。

上記から、控えめに見積もって、家畜はアメリカにおける温室効果ガス排出量の7.3%を占めることになる。

しかし、これだけではない。

アメリカの輸送システムにおいて、食料と農業は大きな割合を占めており、実に温室効果ガス排出量の26%を占めている。さらに、穀物と家畜は製造工程で加工プロセスが必ず入るため、アメリカの温室効果ガス排出量の21%を別途考慮する必要がある。これらのカテゴリーは業種別に分かれてはいないものの、畜産業はアメリカの温室効果ガス排出量の12-15%を占めると推定できる。

実際、国連食糧農業機関は、家畜は温室効果ガス排出量のうち14.5%を占めると推定している。

牛肉や乳製品を食べるのを週に2〜3日に減らせば、アメリカの二酸化炭素排出量を劇的に減らすことができるだろう。


家畜製品が環境に及ぼす影響

家畜飼育はdirty businessである(訳者補足:和訳が難しい言い回しでそのままにしました)。資源に与える影響の強さは温室効果ガスだけではない。もうひとつの環境への重大な影響は、家畜の飼育に使われる膨大な量の水である。 2016年のアメリカ地質調査所によると、使用された合計355兆ガロンのうち2兆ガロンが直接家畜に使われ、115兆ガロンが農業灌漑に使われたと推定されている。そしてその農産物の大部分が家畜飼育に使用されている。

David Pimentalらによるコーネルの研究では、アメリカの家畜生産は年間66兆ガロン以上の水を使用していると推定されている。これは、アメリカ人 1人当たりに換算すると203,700ガロンに相当する。

最後に、肥料だ。 EPAは、アメリカの家畜肥料によって年間61億キロの窒素と18億キロのリンが排出されると推定している(USDAの人件費データに基づく)。家畜の糞尿処理はEPAによって規制されているものの、そういった規制は意図した通りにはなかなか機能しないものだ。毎年、その肥料の一部が私たちの水系に流れ込んでいる。

ご安心を:よい効果を生むために必ずしも「ビーガン」になる必要はない

1990年代に、私はBoca Burger(訳者補足:植物性バーガーのブランド)に投資し事業の成長を助け、後に同社はKraft Foodsに買収された。当時の菜食主義者として言えるのは、肉を一切食べない生活を送るのは相当難しかったということだ。今日では、それがずっと簡単になった。 Amy's KitchenからBeyond Meat、Ripple、Gardein、Daiya、Impossible Burger、Boca Burgerなど様々な加工食品がある。

Snap Kitchen、Protein Bar、Native FoodsCafé、Veggie Grillなど、ベジタリアンやビーガンに対応するレストランチェーンも豊富にある。

現実的に考えて、ビーガン生活をおくるのは簡単ではない。肉、乳製品、卵、すべて食べることができない。ほとんどの人は、そこまですることはできないだろう。

しかし、健康面や環境面において大きな効果を生むために、食生活を100%植物性に変える必要はない。わたし自身を含め大半の人は、もっと柔軟なライフスタイルを選択している。動物性食品は避けてはいるが、完全に避けているわけではない。また、より健康的な食品や健康的な食品加工を促進する持続可能な企業に投資することもできる。

私は牛肉と豚肉をやめて、多くの乳製品を避けている。 "月曜日は肉を食べない日"と決め、毎週完全にビーガンな日にしている。

午後5時以降に肉を食べるのを控えている人もいる。また、週に2〜3日間、肉と乳製品を食べないようにする人々もいる。

つまり、本当にあなたに合ったスタイルを見つけることだ。このようにして、あなた自身にプラスの変化をもたらし、我々の住む地球の未来を築くことができる。

私は投資家として、確実にこのトレンドは続き、今後数年間成長し続けると確信している。


タイラー・マヨラス氏について(原文サイトより)
食料や農業産業に焦点を当てたプライベートエクイティ投資家。Financial Poiseに関する記事で食糧革命に関する識見を発信している。同氏のコラムでは、食品、持続可能な農業、栄養などのトレンドについて学ぶことができる。
続きを読む