4. KORG Nutubeを用いたハイブリッド真空管アンプ

本節では、Nutube 6P1をバッファアンプと組み合わせたハイブリッドヘッドフォンアンプの回路図を示し、動作のシミュレーションを行ないます。

Nutube 6P1 (電源12V)とオペアンプを用いたハイブリッドヘッドフォンアンプ

ここでは、オペアンプと組み合わせてハイブリッド・ヘッドフォンアンプを作成します。ヘッドフォンとしては、インピーダンス100Ωと32Ωに対する出力のシミュレーションを行ないます。

インピーダンス100Ωの負荷に対する出力

まず、負荷として100Ωをヘッドフォンの代わりに付けた回路図を次に示します。

画像1

真空管Nutubeは出力インピーダンスが高いため、メーカーは出力にジャンクションFETをバッファアンプとして接続することを推奨していますが、ここでは真空管の出力にFETの代わりにオペアンプ4558を直結しています。

オペアンプのバッファ回路はボルテージフォロワ回路を使っています。オペアンプは通常、正負電源を使ってその中点のグラウンドを使用する必要があるのですが、ボルテージフォロワ回路の場合にはグラウンドが必要ないので、電源も簡単な回路で済んでいます。

入出力波形をシミュレーションすると次の図のようになります。

画像2

負荷100Ωに対しては、600mVppの入力信号を4Vppまで増幅できています。

インピーダンス32Ωの負荷に対する出力

次に、負荷として32Ωをヘッドフォンの代わりに付けた回路図を次の図に示します。

画像3

入出力波形をシミュレーションすると次の図のようになります。

画像4

負荷32Ωに対しては、300mVppの入力信号を2Vppまで増幅できています。

Nutube 6P1 (電源12V)とトランジスタバッファアンプを用いたハイブリッドヘッドフォンアンプ

次に、Nutube 6P1を用いた電圧増幅アンプと、トランジスタで製作したダイヤモンドバッファアンプを組み合わせたハイブリッドパワーアンプの回路図を示します。

まず、Nutube真空管アンプにダイヤモンドバッファを繋いだ回路を次の図に示します。このときの入力信号の振幅は0.15Vです。バイアスは2.3Vに設定してあります。

画像5

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。この場合も前回路と同じく、入力信号がきれいに増幅されて出力されています。

画像6

Nutube 6P1 (電源60V)とトランジスタバッファアンプを用いたハイブリッドパワーアンプ

次に、真空管の電源電圧を60Vに変更した回路を次の図に示します。

画像7

真空管アンプ部には60Vの電源を、トランジスタバッファアンプ部に±6Vの電源を用いています。これは、実際の製作の際に、12VのACアダプターを用い、真空管の電源には12Vを60Vに変換するDC-DCコンバーターを、トランジスタバッファアンプには12Vを2分割して仮想的に±6Vの正負電源を生成するレールスプリッターを、それぞれ使用することを想定しています。真空管の電源電圧を60Vまで上げることで、バイアス電圧が0Vで動作するため、バイアス回路が不要になります。

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。真空管のプレート電圧を上げることで、増幅率が上がっていることが分かります。

画像8

また、プレート電圧を上げることで、入力信号の電圧を上げることができます。次の図の回路では、0.3Vppから0.6Vppに入力信号の振幅を上げています。

画像9

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。

画像10

真空管のプレート電圧を上げることで、増幅率が大きくなるだけでなく、より大きい信号を入力することができるようになります。

Nutube 6P1 (電源30V)とFETバッファアンプ(2SK1056と2SJ162、電源±6V)を用いたハイブリッドパワーアンプ

本節では、FETバッファアンプを用いたハイブリッドパワーアンプを示します。回路図を次の図に示します。

画像11

真空管アンプ部には30Vの電源を、FETバッファアンプ部には$\pm$6Vの電源を用いています。これは、実際の製作の際に、12VのACアダプターを用い、真空管の電源には12Vを30Vに変換するDC-DCコンバーターを、FETバッファアンプには12Vを2分割して仮想的に±6Vの正負電源を生成するレールスプリッターを、それぞれ使用することを想定しています。

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。

画像12

出力に8Ωのダミー抵抗(スピーカーの代わり)を接続しても、入力信号がきれいに増幅されて出力されていることが分かります。この回路では、スピーカーの出力電圧を端子OUT+とOUT-から取り出しています。

Nutube 6P1 (電源60V)とFETバッファアンプ(2SK1056と2SJ162、電源±6V)を用いたハイブリッドパワーアンプ

本節では、FETバッファアンプを用いたハイブリッドパワーアンプを示します。回路図を次の図に示します。

画像13

真空管アンプ部には60Vの電源を、FETバッファアンプ部には±6Vの電源を用いています。これは、実際の製作の際に、12VのACアダプターを用い、真空管の電源には12Vを60Vに変換するDC-DCコンバーターを、FETバッファアンプには12Vを2分割して仮想的に±6Vの正負電源を生成するレールスプリッターを、それぞれ使用することを想定しています。

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。

画像14

真空管の電源電圧を60Vまで上げることで、バイアス回路なしでも入力信号がきれいに増幅できていることが分かります。

Nutube 6P1 (電源30V)とFETバッファアンプ(IRFP240とIRFP9240、電源$\pm$6V)を用いたハイブリッドパワーアンプ

次に、前節のFETバッファアンプのFETを2SK1056と2SJ162からIRFP240とIRFP9240に入れ替えた回路を示します。まず、真空管電源として30Vを用いた回路を次の図に示します。

画像15

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。

画像16

入力信号として600mVppまでうまく増幅できています。これ以上入力信号の振幅を大きくすると、出力信号の波形が歪んでしまいました。

Nutube 6P1 (電源60V)とFETバッファアンプ(IRFP240とIRFP9240、電源±6V)を用いたハイブリッドパワーアンプ

次に、真空管電源として60Vを用いた場合の回路を次の図に示します。

画像17

この回路の入力信号と出力信号を次の図に示します。

画像18

この回路では、入力信号として1Vppの信号がうまく増幅できています。バッファ回路の電源電圧が±6Vなので、±4Vまで出力できていれば十分かと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?