3.段間結合方法
通常アンプでは最低、電圧増幅段、電力増幅段の2つの増幅回路を用いてアンプ全体を構成しています。本節では、これらの各段の結合方法について解説します。
直接結合(直結)
次の図のように、前段の出力と後段の入力の間にコンデンサーを挟まずに結合する方法です。
最も簡単な結合方法ですが、設計する際に考慮する必要のある点が存在します。まず、前段の出力電圧に後段のグリッド電圧が等しくなるため、後段の入力バイアスを高くする必要があり、後段のB電圧として比較的高い電圧が必要となります。これらは設計する上で難しい点となりますので、設計の簡単な次のCR結合がよく用いられます。
CR結合
次の図のように、コンデンサーと抵抗を用いて前段の出力と後段の入力を結合する方法です。
上に述べた直接結合における後段のB電圧の高さを考慮する必要が無いため、よく用いられます。
ただし、この方法にも欠点があります。信号がコンデンサーを通るため、コンデンサーと抵抗によってローパスフィルターが形成されます。このため、十分な静電容量のコンデンサーを用いないと、高域特性が悪化してしまいます。また、信号がコンデンサーを通ることによって、音に変化が出ます。これを嫌って、前に述べた直接結合を用いる場合もあります。
トランス結合
次の図のように、前段の出力と後段の入力の間を、トランスを用いて結合する方法です。佐久間駿氏によって設計された佐久間式アンプで良く用いられている方法です。
高音質を目指そうとすると、段間トランスの値段が数千円から1万円以上となってしまい、制作費が高価になるという問題点があります。
ただ、トランスにはインピーダンス変換という役割があります。出力段とスピーカーを接続する際には、出力段の出力インピーダンスを、スピーカーのインピーダンスまで下げる必要があるため、次のように、この方式が用いられることが多いです。
ただし、コンデンサーと同様、トランスも音に変化を与えます。トランスは入力側と出力側にコイルがあり、これらの相互誘導を用いて信号を伝送しているため、信号がこれらのコイルを通る際、十分な大きさのトランスを用いないと、周波数特性が悪化してしまいます。しかし、実は真空管アンプの音は、このトランスによって影響される部分が大きく、聴感上の良し悪しと数値データとしての良し悪しは必ずしも一致しないので、一概に悪いとは言えないかも知れません。
参考文献:
佐久間駿、直熱感アンプの世界ー失われた音を求めてー、紀伊国屋書店、1999年1月.
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