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♯3 各種サックスの特徴と最初の楽器の選び方


はじめに

サックスは、様々なジャンルの音楽で使われる楽器です。ジャズやクラシック、吹奏楽、歌謡曲など、魅力的なサックスの音色やスタイルがあります。それから、サックスにはソプラノ、アルト、テナー、バリトンなど、いくつもの種類があります。初めてサックスを選ぶとき、どの種類のサックスを選ぶべきなのでしょうか?この記事では、サックスの種類や特徴、ジャズやクラシックの違いや歴史、吹奏楽の楽しさなどについて、私の体験や感想も交えながら紹介します。サックスに興味を持たれた方の参考になれば幸いです。どの種類のサックスを選ぶのか?

初めてサックスを選ぶ際に考慮すべきポイントについて説明します。一番重要なのは、自分がどのサックスを吹いてみたいかということです。好きな音楽や演奏家の影響も大きいでしょう。ただし、あえておすすめするならば、アルトサックスが良いと思います。アルトサックスは重さや音域のバランスがよく、男性のテノールや女性のアルトの声域にも近いため、(実音で下はDb3〈へ音記号第3線レ♭〉から上はA5〈ト音記号上第1線ラ〉まで)吹きやすい特徴があります。また、現在のほとんどの新製品やパーツもアルトサックスをベースに開発されています。
サックスは奏方が確立すればどの種類でも演奏することが可能なのですが、それぞれに異なる特徴や難しさがあります。以下に、ソプラノ、テナー、バリトンなど他の種類についての特徴を簡単にまとめます。

  • ソプラノサックスは、きらびやかな高音が魅力的ですが、繊細なコントロール力が必要です。また、直管型のものが多いので、慣れるまでは楽器を支える親指や腕も痛めやすいので注意が必要です。

  • テナーサックスは、力強く吹いても音が出しやすく個性が出しやすい楽器です。ジャズの中では花形楽器のひとつです。しかし、魅力的な音を出すには、時間がかかることが多いです。

  • バリトンサックスは、高音部の弦楽器のような美しい音色と低音の迫力が魅力です。吹奏楽やビッグバンドでも重要な役割を果たします。しかし、息の量が最も必要で、重いので持ち運びや演奏時に首や身体に負担がかかります。体格によっては向いていない場合があります。


ジャズサックス奏者とメインの楽器

ジャズの名手達

ジャズでは、音色やスタイルの個性が尊重されるため、メインの楽器を一本に絞る奏者が多いです。もしくはソプラノなどの持ち替えを含めて2種類です。フルートやクラリネットを吹きこなす奏者もいます。(ビッグバンドでは異なる種類の楽器の持ち替えが求められることもあります)
私は興味深く感じることなのですが、ジャズの名手の演奏を聴くと、アルトサックス奏者のリー・コニッツやアート・ペッパーは、テナーサックスを吹いてもアルトサックスのように聴こえます。リー・コニッツの音はウォームで、アート・ペッパーの音はドライでキレがあります。逆も然りで、テナーサックス奏者のジョン・コルトレーンやチャールズ・ロイドは、アルトサックスを吹いてもテナーサックスのように聴こえます。ジョン・コルトレーンの音は骨太で、チャールズ・ロイドの音は怪しく深みがあります。 ジェームス・ムーディーやソニー・スティットといった両方とも演奏するジャズの名手の音は、どのように聞こえるのでしょうか?
 私はサックスの種類だけでなく、奏者の音楽性や個性、影響を受けた演奏家や時代背景なども関係していると思います。例えば、リー・コニッツはクールジャズの代表的なアルトサックス奏者ですが、若い頃はレニー・トリスターノのもとで学びつつも、スタイルやサウンドはレスター・ヤングの影響を強く受けています。アート・ペッパーはウエストコーストジャズの代表的なアルトサックス奏者ですが、レスター・ヤングやベニー・カーターの影響を受けて、特に後期は自分の生き方や感情をそのまま音に表現しています。(インタビューではコルトレーンの影響を受けたと言っています)そのジョン・コルトレーンはハードバップやモードジャズ、フリージャズなど、常に革新的な事に挑戦したテナーサックス奏者ですが、初期のスタイルはチャーリー・パーカーの影響が強く、サウンドはレスター・ヤング、ジョニー・ホッジス、アール・ボスティックなどの影響も受けていると思います。チャールズ・ロイドはワールドミュージックやスピリチュアルな要素を取り入れたテナーサックス奏者で、ジョン・コルトレーンやオーネット・コールマンの影響も受けています。ジェームス・ムーディーやソニー・スティットは、アルトサックスとテナーサックスの両方を得意とするジャズの名手で、チャーリー・パーカーの影響を受けながらも、自分の個性を発揮しています。

これらの例からも分かるように、サックスの種類だけでなく、奏者の音楽性や個性が音色やスタイルに反映されているように思います。


クラシックサックス奏者とメインの楽器

クラシックサックスの偉人達、左上から順にマルセル・ミュール 、ジャン=マリー・ロンデックス、ダニエル・デファイエ、シーグルト・ラッシャー、ユージン・ルソー、坂口新

クラシック音楽の演奏家は、サックス四重奏や様々な楽曲で演奏することが多いので、メイン楽器がある場合でも、全てのサックス(4種類以上)を演奏できる方が多いです。
ソプラニーノやバスサックスなども魅力的な楽器ではありますが、メイン楽器として専門的に演奏する奏者はほとんど見られません。これらは主にアンサンブルの一部として使われたり、作品やアルバムの中のいくつかの曲で持ち替えて演奏することが多いです。 クラシックサックスの特徴としては、音程の安定性や、全音域の響きの均一性などが必要なだけでなく、細かい表現力や技巧も求められます。また、室内楽やオーケストラなど、アコースティックな環境での演奏が多いため、生音で他の楽器とのバランスや調和をとることも大事です。


吹奏楽(ブラスバンド)について

日本でも人気のある吹奏楽(ブラスバンド)という音楽のジャンルは、学校の部活動や社会人の団体などで広く行われており、そこで活動する方や、聴く機会も多いと思います。演奏する楽曲は吹奏楽のために作られた曲も多いですが、クラッシックやジャズ、ポップスなどさまざまなジャンルの曲も取り上げます。それだけ間口が広く、多様なスタイルに対応できるジャンルでもあると思います。サックス奏者にも、幅広い表現力が必要です。
本格的に興味を持った方は、ギャルド・レピュブリーケーヌ吹奏楽団(セルマーの創始者のアンリ・セルマーも所属していた)やイーストマン・ウインド・アンサンブルなどの世界的な楽団の演奏もおすすめです。日本にも、東京佼成ウインドオーケストラや、大阪市音楽団などを初め素晴らしい楽団があります。
 そんな吹奏楽で演奏することは、とても楽しく充実した経験ですが、もっと興味を持った方は演奏した曲の原曲も聴いてみると良いと思います。クラッシックの曲ならオーケストラの演奏、ポップスの曲ならオリジナル曲を歌うアーティスト、ジャズの曲ならオリジナルのビッグバンドの演奏などを聴くと、より深く広い音楽の楽しみ方ができます。

吹奏楽界の偉人達



私の場合のクラシックとジャズへ出会った経験談と現在の活動

私は中学生になった時に兄に勧められて吹奏楽部へ入りトロンボーン初めて、管楽器の合奏の楽しさを知って、クラシックやブラスアンサンブルに興味を持ち、その当時は、エムパイアブラスアンサンブル、カナディアンブラスアンサンブルや、関西のスターリングブラスアンサンブル(後にジャズ科でお世話になった奥田章三さんや宗清洋さんも在席していた)などを聴いていました。その頃から吹奏楽でのサックスに興味を強く持っていて、高校吹奏楽部でサックスを始めました。名門吹奏楽部の中に初心者で入って周囲のメンバーのレベルが高かったので、劣等感も感じながらも、自分で選んだ好きな楽器だったのでよく練習して、よくコンサートも聴きに行っていました。クラシック奏者のジャン=イヴ・フルモーを聴いた時は、表現力や音に圧倒されました。
同じ頃、セルマージャパン(野中貿易)主催のクラッシックとジャズ合同のサックスキャンプのジャズコースへ参加しました。クラッシック奏者では、石渡悠史さんや武藤賢一郎さん、宗貞啓二さんなどをはじめ、多くの方の演奏を聴く機会がありました。クラッシックのサックスの厳格さや奥深さを感じました。そのキャンプの時に、元々ファンだった土岐英史さんに会い、ジャズを習いました。その時、中村誠一さんや藤陵雅裕さんにも出会い、多くのことを教えてもらいました。楽しく刺激的な数日間でした。それが、後から思えばジャズをやることになる一番大きな起点となった出来事です。
その頃はサックスを真剣にやりたい気持ちを持ちつつも、まだ具体的に何をやりたいか定まっていなかったので、最初は大阪音大のクラッシック科を目指しました。クラッシック奏者の飯守伸二先生に、厳しく愛のあるレッスンを受けながら、ピアノやソルフェージュ、楽典も勉強しました。高校の吹奏楽部も続けました。
ジャズも実家で父が持っていたレコードや自分で少しずつCDを買い集めたり、レンタルしたりして、その頃から良く聴いていました。大阪ブルーノートへも良く行きました。ジャズフェスティバルへも何度か行き、様々なジャズのアーティストのライブを聴きました。神戸のジャズクラブへも父に何度か連れて行ってもらいました。そのようにジャズの生演奏を聞く機会が増えて、だんだんとジャズを本当に取り組んでみたいと思うようになりました。
そのようにしながらもジャズを本気でやるのは、大学に入ってからでした。音の出し方や発音のしかた、タイムの感じ方など、クラッシックとの違いが多く、不器用なこともあり、奏法だけでも慣れるまでに多くの時間を費やしました。一年以上はかかったと思います。ジャズのアドリブの事はその何倍もの時間がかかりました。
私は現在、サックス講師とジャズサックス奏者として活動しています。サックス講師としては、生徒さんにサックスの演奏の楽しさを体験していただき、お一人ずつの方と向かい合い、やりたいことをより深く、効率良く上達するためのアイデアを話し合いながら、教えてるよう心掛けています。また、ジャズサックス奏者としても、技術や感性を磨きながら、多くの方にジャズの魅力を伝えることを願いながら演奏しています。




さいごに


以上のことが、皆様の最初の楽器を選ぶヒントになれると幸いです。
お伝えしたかった事はサックスは、情熱と愛をもって取り組んで続けて頂ければ、より深い楽しみがあると言う事です。年齢や周囲の人の上達度などと比べるのも全く関係ありません。思い通りにいかないことや、好きなことを見つける過程も含めて楽しんでみてください。サックスの音色やスタイルは奏者の個性や好みによって大きく異なりますので、好きな音色やスタイルを見つけるためには多くの音楽を聴くことが大切だと思います。シンプルに、この曲が吹けるようになりたいという目標でも良いと思います。出したい音もイメージしやすくなると思います。 効率良く上達を望まれたい方は、専門の先生に習うのがお勧めです。きっと全力でサポートしてくれると思います。好きな音楽や、やりたいこと、疑問に思うことを伝えて上手に先生を使ってください。

次回の記事#4では、サックスの発明から現代までの、名門メーカーと名手達の愛用楽器についての記事です。興味を持たれた方は、引き続きお読みくださると嬉しいです。














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