また喉が乾くまで飲み続けた日


年に数回会う程度の知り合いがいた。仕事上の付き合いで、あるイベントの受付をしている人とそのイベントの運営が僕という関係だった。彼女は一回りほど上の人で、よく喫煙所で一緒になって出会って一年が経つ頃には愚痴を言い合う関係になっていた。

「今日もしんどいねぇ、みつばくん。早く飲みたいわね」
1度だけ、イベントの打ち上げで彼女と一緒になったことがある。彼女は長い髪でよく早口で話す人で、その飲み会でもあっちこっちで多くの人と話しており、個人的に2人で飲んだことは無かった。
「そういえば、今日は全体の打ち上げないみたいなんですけど、僕らだけで飲み行きません?この辺だとイベント終わりにはやってるお店少ないから神田まで出たらありますかね」
「いいねぇ、ちょうどみつばくんとそろそろ飲みたいと思ってたのよ。私かなり飲むし荒れるから気をつけてね」
その日の仕事終わりにボクらは神田にあるチェーンの居酒屋に入った。
僕らはビールを飲んで、一通りあれこれ愚痴った後に恋愛事情について話した。

彼女には27歳から今まで続いている年下の彼氏がいて、彼氏には結婚願望が無い。今年で32歳になる彼女とそれを平気で捨てられる感性を持っていて、無自覚にキープしている彼に悩まされているというのだ。
では、別れたらどうなんですか?と僕が聞くも、そう簡単に人と人は付き合わないのよ、少なくとも私は、と返されぐうの音も出なかった。

お酒が進み、僕らは酩酊気味になっていた。
彼女がバーに行きたいと言い出したので僕はは宛もなく店を出た。彼女は何も言わずに歩きだし、僕はただついて行くように彼女の少し後ろを歩いて、彼女が大通りでタクシーを拾った。
彼女は笹塚を目的地として運転手に伝え、僕には何も言わずに携帯を触り始めた。翌日は何も無かったので僕も取り敢えず彼女に合わせるように携帯を触っていると彼女はいきなり口を開いた。
「これ彼氏どう?素敵でしょ。でもね、彼浮気してるの。年下の男の浮気って女はすぐ見抜くのよ」
彼にとってはまだ遊びたい年齢であるとしても、付き合う相手の年齢的にある程度考えて生きてもらいたいですよね。
「私、多分彼が遊び終えて私ときちんと向き合うのを待ってるの。どこまでおばさんになろうとも、その最中で彼に別の女ができて乗り換えられる危険があろうともそういうのを見て見ぬふりしてあげてるという対応がいかに結婚に向いているかまで気付いてくれるって勝手に信じてるの。でも、私だって我慢ばかりは無理だから、時に彼に秘密を作るの。」
彼女の顔は僕に近づき、僕らはキスをしていて手を繋いでいた。
タクシーが笹塚に着いた時、笹塚は彼女の家がある所だと知った。彼女はCOACHのバッグからCOACHのキーケースを取り出しオートロックの鍵を開け、エレベーターで家にゴムあるけど、使わなくてもいいからね、と僕に伝えてきた。

彼女の部屋はとてもじゃないが綺麗とは程遠く、本棚には難しそうな本が雑多に羅列されておりテーブルには確かにコンドームが置いてあった。
「よく、こういうことあるんですか?」
「よく、の頻度がどのくらいのイメージなのか分からないけど全く無いわけじゃないし、毎日という訳でもないわ。でも、大丈夫かなり久しぶりよ」
酔っていた僕は彼女の優しい口調と大丈夫という言葉の響きから安心して付けなくてもいいという彼女の言葉を素直に受け取り生でした。

一度目の後、僕は眠気が限界になり目をつぶってベッドで寝ていると彼女は泣きながらもう一度よと僕を起こしてきた。
僕は眠気と酔いが醒めるまでその日彼女とした。

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