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クリエータ紹介(17) Pang Lixinさん、Xiang Weiboさん、Chen Binさん - 貪欲に技術を学ぶ三人による「顔の検出」への挑戦

このnoteでは、福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称・福岡未踏)のプロジェクト採択者について、プロジェクトの詳細や福岡未踏にかける思いをご紹介します。

今回は、下を向いて完全に顔が見えない状態でも顔を検出できるシステムの開発に挑む、Pang Lixinさん、Xiang Weiboさん、Chen Binさんの挑戦をお伝えします。

プロフィール

  • プロジェクト名:Face-Down Detection System

  • 支援プランと期間:Solve (23年11月〜24年1月)

  • クリエータ:Pang Lixinさん(九州大学 大学院 システム情報科学研究院 修士1年生)、Xiang Weiboさん(九州大学 大学院 システム情報科学研究院 修士1年生)、Chen Binさん(九州大学 大学院 システム情報科学研究院 博士3年生)

左)Chen Binさん、中央)Xiang Weiboさん、右)Pang Lixinさん ブースト会議での様子

これまでの歩み、来歴

中国出身のPangさん、Xiangさん、Chenさんは、いずれも母国での仕事を辞め、本当に興味のある領域を学び直し、視野を広げようと来日しました。その学びの対象となったのが、九州大学の情報理工研究科でのプログラミングだったのです。

Pangさんは現在、九州大学 大学院 システム情報科学研究院の荒川研究室に所属し、自動運転におけるモーションプランニングを研究しています。もともとはプログラミングと関係のない分野で中国の大学を卒業し、同じくプログラミングとは関係のない仕事に就いていたPangさん。以前からプログラミングには興味があった彼は、新たな挑戦を求めて日本に留学を決意しました。

XiangさんもPangさん同様、中国での大学時代に全く異なる分野を専攻していましたが、卒業後に興味がある仕事を見つけられず、家業を手伝う日々を過ごしました。彼はプログラミングに対する関心と日本の文化への愛着を背景に、留学を決意しました。現在は、九州大学 大学院 システム情報科学研究院の桜井研究室に所属し、顔の匿名化に関する研究に取り組んでいます。

Chenさんは、元々IoTに関する技術に興味を持ち、中国での仕事を辞めて日本への留学を選択しました。特にスマートホーム技術に関心があり、これが彼の研究の方向性に影響を与えています。現在は、九州大学 大学院 システム情報科学研究院の荒川研究室に所属し、ビデオキャプション生成に関する研究を行っています。中国でのスマートホーム関連の仕事に携わった経験が彼の現在の研究テーマに直接的な影響を与えています。

PangさんとXiangさんは、九州大学合格後の留学生サポートグループで知り合いました。また、Chenさんは、Pangさんの所属する研究室の先輩で、Chenさんの技術力が必要となったPangさん、Xiangさんからの熱い誘いによって、プロジェクトを三人で一緒に進めていくこととなりました。

プロジェクトの概要

  • 課題提供:Olive株式会社

Pangさん、Xiangさん、Chenさんが取り組むプロジェクト「Face-Down Detection System」は、Olive株式会社から提出された課題に基づいています。

このプロジェクトは正確な学生の顔の検出が目標です。特に、授業中に学生が頭を下げている場合にも、顔を効率的に検出できる必要があります。現在の技術では、わずかに下を向いている程度であれば顔の検出が可能ですが、完全に頭を下げている状態での迅速かつ正確な顔の検出は課題となっています。

この課題に対し、彼らのチームはヒストリーデータの利用と顔のキーポイント検出に基づくアプローチを採用しています。具体的には、顔が見えている間にできる限り多くのデータを収集し、これを基に顔が下を向いている状態でも検出できるようなシステムを開発しています。顔のキーポイント(目、鼻、口、耳の6つの位置)を利用して、顔の位置情報を把握し、これらのデータを活用して、顔が下向きの状態でも識別する技術などを用います。

このプロダクトは、Olive株式会社が提供するシステムの一部として機能します。Olive株式会社は、人のセンシングを目的としている会社です。最終目標は、このシステムを利用して学生の注意状態や感情をより正確に把握し、教育システムにおける学生のパフォーマンス向上に貢献することです。

福岡未踏への応募理由

Pangさんの応募は、主に荒川先生からの推薦と自身の好奇心に基づくものでした。彼は、自分の能力がどの程度社会や企業の実際の問題解決に貢献できるかを試したいと考えていました。未踏プロジェクトの中で、特に今回から始まったSolveの部門が彼の関心を引き、自身のスキルと知識を社会的な課題に適用する機会を好意的に受けとめていました。

Xiangさんは、もともとPangさんからの誘いを受けて応募しました。彼は自身が好きなものづくりを追求し、異なる文化や分野の人々との交流を通じて視野を広げることを望んでいました。未踏プロジェクトは、彼にとって新しいアイデアや技術を学び、異なるバックグラウンドを持つクリエイターやメンターと交流する貴重な機会となりました。

そしてChenさんは、Pangさんから「ぜひこのプロジェクトに力を貸してほしい」と誘われ、このプロジェクトに合流しました。実は、以前Chenさんが取り組んだ研究テーマと、今回のプロジェクトが似ていて、彼の過去の研究経験と知識を活かして、より洗練されたシステムを開発できると考えたのです。さらに彼は、このプロジェクトを通じて自分の技術をさらに発展させ、一歩進んだものにしたいと考えていました。

彼らが福岡未踏に応募した理由は、彼らのキャリアにおける成長と実践的な問題解決への貢献への願望から生まれています。彼らはそれぞれ、研究における自己実現、異文化間の交流、そして過去の経験を活かした新たな挑戦を求めていました。福岡未踏プロジェクトのSolveは、彼らにとって自身のスキルを試し、実際に社会にどう活用するかという機会を提供しています。

成果報告会の様子

福岡未踏で得られたこと

Pangさんは、残りの期間で、プロジェクトの成功と技術的な改善を目指しています。彼は、プロジェクトにおけるシステムのさらなる洗練とデバッグに重点を置いており、特に企業が求める計算速度の最適化に取り組んでいます。これまで、ここまで本格的な開発経験がなかった彼にとって、福岡未踏の取り組みは、新たなキャリアのスタートとなりました。

Xiangさんは、Raspberry Piの実装部分とプロジェクトの発表を担当しており、まずはこれを成功裏に導くことを目標としています。また、彼は、プロジェクトを通じて得た経験を活かし、将来的には自らのシステムを開発したいと考えています。彼の目標は、技術的なスキルと創造性を組み合わせ、実践的なアプリケーションを生み出すことにあります。

Chenさんは、プロジェクトの技術的な側面に重点を置いており、特にシステムの完成と成功を目指しています。彼は、自身の専門知識を活かし、プロジェクトを通じてより実用的で影響力のある成果を出すことを目標としています。さらに、プロジェクト終了後には、日本での就職を目指し、ものづくりに関わるキャリアを追求する予定です。

おわりに

一度は仕事に就いたものの、それぞれがプログラミングへの興味、憧れを追い求めて留学。その先での出会いが、福岡未踏への挑戦に繋がっています。インタビューをしていると、そもそも三人とも挑戦を続けてきた人生であり、新たなことを始めるのに抵抗がなく、常に「もっと良くしたい」と貪欲にチャンスを掴んでいるように感じました。

今回、三人にとっては異国である日本の企業と具体的な要件に関するコミュニケーションなども行いながら、ひとつのものを完成させようとしている三人。技術的な経験に加え、そういった実務経験も、彼らの今後の人生にとって大きな価値となるのではないかと思います。

後列左)担当PM福嶋政期氏、後列中央)BillyDawton氏、後列右)SaidMohamed氏 と3名

福岡未踏とは

福岡未踏的人材発掘・育成コンソーシアム(通称、福岡未踏)とは、福岡県在住の若手クリエータを発掘・育成し、クリエータの「何かを作るための第一歩」を支援し、また、IPA未踏と同等の支援に加え、複数のIPA未踏経験者からなるPM・メンター陣にて、プレ人材向けの支援を行います。