真夜中ビアガーデン 好きな本ぷれぜんをやったんですよ。

 過日行いました、好きなゲーム音楽ぷれぜんに続く第2弾として「好きな本ぷれぜん」を行いました。
 今回は、当日紹介した本及び内容並びに放送で紹介できなかったことをご説明させて頂ければと思います。

1月2日からなにやってんだか。

(1)はじめに

 私が本に意識的に触れるようになったのは,大学生の頃だと思います。
 今はこんな感じですが,大学ではかなり成績が良かった方+自分の専攻分野(社会学)がかなり自分と相性がよかったことから,社会学分野の本を色々と読みあさり,今に至る・・・そんな感じです。
 多分これが,興味の無い学科とかに進学していたら,本とは縁遠かったのではないかとも思う様になるのです。
 さて,今回は,主に大学生の頃に読んでいた本から数冊紹介させていただくことになりました。

(2)紹介した本

① 佐々木玲仁,2012『結局、どうして面白いのか ── 「水曜どうでしょう」のしくみ』フィルムアート社

 HTB(北海道テレビ放送)で放送されていた番組「水曜どうでしょう」。番組が終わった今でも根強い人気があるが、いざ「なぜ面白いのか」を説明しようと、その説明に苦慮する者も少なくありません。
 この課題に対し「水曜どうでしょう」を「番組の企画」と「番組の企画を撮影する者達の物語」の2層に分解することによって、その面白さを説明することを試みた文献です。
 筆者は、九州大学大学院 人間環境学研究院 佐々木玲仁准教授。専門は、臨床心理学。そのため、本書籍では、心理学の理論を用いて、事象を説明する場面もあるが、かみ砕いて説明されていることも多く、初心者にも親しみやすい本であると思います。
 今回紹介した本の中では,出会ったのが1番古い本です。
 なんでこの本と出会ったのかは,今や覚えていませんが,当時(高校生?)にしては珍しく完走した本だったと思います。
 テレビ・ラジオ番組を紹介する本は数多くありますが,かなり学術的に踏み込んだ記述も観られます。だからこそ,理屈づけられて,面白く腑に落ちる内容になっているのではないかと思います。

② 大石大,2019『シャガクに訊け!』光文社

 第22回ボイルドエッグズ新人賞受賞
 単位不足により、留年の危機に瀕していた社会学部1年次生「松岡えみる」は、社会学部の中で人気の無い上庭良明講師のゼミに所属し、学生相談室の補佐をとおして「生きた社会学」を学び、社会学基礎力を充足することとなりました。
 学生相談室で行われる悩みは、多種様々なものがあるが、上庭講師は、社会学の理論を用いて解決していく。
(例)弟が非行に走るようになり、家庭が崩壊している。
   →ラベリング理論・スティグマ
 この本との出会いは,とある社会学入門書の「ブックガイド」に,この本についての言及があったことがはじまりでした。
 物語中に言及されるとおり「理論」での社会学のみではなく「生きた」社会学という感覚を掴むにはオススメです。専門的な言い方をすると「社会学のものの見方と考え方」ってやつです。
 社会学は,その名のとおり,社会について研究する領域です。即ち,今,ここに生きる私たちも例外ではありません。言ってしまえば私たちも研究対象,モルモット君なのです。
 逆に言っちゃえば,目の前に広がる全てがサンプル,即ち研究対象ともいえます。目の前で繰り広げられるドラマ・生き様,全てが「社会」「研究対象」「事例」なのです。
 といっても,なかなか現実でそれを実感するのは難しいのも事実。
 そんなときに,こういった類いの本で「生きた社会学を観ている人」を観ることによって「こんな感じなんだな」ということがなんとなく判る化と思います。(専門書ではないので,なんとなくで十分かとおもいます。)
 ちなみに,各章で紹介される社会学用語は、きちんと辞書から引用されているレベルでは、マジ。

③ 佐藤多佳子,2019『明るい夜に出かけて』新潮社

 第30回山本周五郎賞受賞作品
 人間関係のトラブルで大学を休学し、少し離れたところでコンビニアルバイトをしている富山は、ラジオの深夜放送を聞くことが趣味であった。
 富山がアルバイトをしているコンビニに客の少女(佐古田)がやってきたが、その少女のリュックサックに「アルコ&ピースのオールナイトニッポン(アルピーANN)」で優秀な投稿をしたリスナーのみに贈られるノベルティ「カンバーバッチ」が2つもついている事に気づいた。
 このことから、関わりを持つ様になった富山と佐古田(ペンネーム:虹色ギャランドゥ)の物語である。
 物語自体はフィクションであるが、ラジオ自体は実際にあるもの。

 実際に放送されていたニッポン放送のラジオ番組「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」のリスナーを取り巻く奇跡の物語です。
 とにかく着眼点が秀逸だと思いました。
 話自体はフィクションですが,その中にリアルに存在する番組(アルピーANN)を入れ込むことによって「実際に自分たちも知っていることを知っているキャラクター」と対峙することが可能になっています。言い換えると「フィクションのキャラクターと共通知を持っている」という感覚です。
 もちろんゲームのキャラクターでも「リンゴは食える」とか「ナイフを人に投げると怪我をする」といった共通知はあるんでしょうが,そういうことではなく「たしかに同じ共通言語,同じ時を過ごしたと言える」知識があるのです。
 だからこそ物語の外,アフターも色々と思いを巡らせられるのかなとか思ったりもします。(結局アルピーDCG聴いてるのかなとか,radicoでチョコナナ聴いてるのかなとか,すっごい友だち見たいな感覚だよね。)
 

④永山薫,2014『増補エロマンガ・スタディーズ――「快楽装置」としての漫画入門』筑摩書房

 各々一度は目にしたことがあるであろう「エロマンガ」だが、マンガの「利用」を行うことはあっても、それを越え、エロマンガの「文化性」にまで考えが巡ることは少なかったのではなかっただろうか。
 現在、日本の隠れた文化となっている「エロマンガ」がどのような歴史を経たのか「エロ漫画」の歴史並びにSM・巨乳及び陵辱と言ったいわゆる「各ジャンル」について研究されてまとめられている文献となっている。
 「教養としての性」を学ぶ上では、十分知的好奇心を満たす事が出来る本になっている。
 元々は、本を読み始めたきっかけは、早い話が大学時代の研究のためでした。
 先述のとおり,ミスリルスター氏は、社会学を専攻としており,所属ゼミナールは「性現象」に関する領域のところでした。
 基本的には,性差別を中心に検討をしていましたが,差別は,言動等のみではなく,表象物(≒創作物)にも現れることがあります。
 よく,リメイク作品とかで,本編の映像・構成・台詞に、現代の社会通念や今日の人権意識に照らして不適切と思われる表現が一部ございますが、制作当時の時代背景と作品のオリジナリティを尊重して、原版のまま収録しておりますことを予めご了承ください。 とかいった文章があるかと思います。星のカービィとか。
 こういった文章から読み取れる意図としては「この作品は,今の社会通念上はよろしくない」というのと同時に「作品が作成された当初は,一定程度の理解を得られていた(と推定される)」ことも判ります。
 即ち,創作物を見取ることで「当時,一定程度共有されていた価値観」がわかる・・・といったことにも繋がります。
 こういったことから、一時期「性文化」に関する文献を読みあさっていた終わっていた時期があり、そのときに出会った本です。
 アダルトビデオ・風俗店,一とおりの性文化に関する文献には当たりましたが(実際には活用してないけどな!色んな意味で!)その中でも印象に残っているのがこの文献でした。
 普段,シコるために観ている作品も,結構歴史というか,理論だてて説明できる事もあるんだよ。ということで。
 あまり深追いすると,この記事がR-18になりかねないので,詳細は自分の目で確かめてみてください。

(3)まとめ

 以上,今回は「好きな本ぷれぜん」でした。
 振りかえって見ると,やはり社会学の影響を大きく受けている事が分かりますね。特に性領域。
 本当は,卒業研究でDLSiteのジャンル数変遷とかやりたかったんですけど,データの取り方が思いつかなくて,めんどくさくなって辞めた経緯とかも思い出しました。やっぱり大学って本腰入れて勉強するにはうってつけの環境だったのかなと。修士課程行きたかったなぁ。
 ということで,今後も,真夜中ビアガーデンとして,色々放送があるかと思いますが,その際はよろしくお願いします。
 すきな○○ぷれぜんシリーズももうちょっと続きます。

(4)補遺・結局紹介しなかった本

 今回も,都合上紹介が出来なかった本がありました。
 思い出したら色々追記します。

澁谷知美,2021『日本の包茎――男の体の200年史』筑摩書房
 日本人のおちんちんの話です。
 日本人の6割が仮性包茎ですが,なぜ「包茎は恥」とされてきているのでしょうか。美容クリニック陰謀説とか,いろいろありますが,その謎に迫ります。

中島弘象,2017『フィリピンパブ嬢の社会学』新潮社
 フィリピンパブ嬢の研究をしていたら,いつの間にかフィリピンパブ嬢と付き合っていた研究者のお話。
 研究としては,自身の手で研究対象(今回はフィリピンパブ)をかき乱す割と禁忌を犯している気もしますが,読み物としては,リアリティがあって面白かったです。

(5)他の人の紹介

 真夜中ビアガーデン他のメンバーの記事です。記事が出来たらリンクします。

↑soraki_tさん

まだだよ
↑ヨンクタスさん

まだだよ
↑きっずさん

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