湯船

朝起きての第一声が「疲れた」の人なんてもう生きるの向いてねぇよ。社会人なんてみんなそうだろうけど。朝が疲れたなら夜はどういう状況だ。ギリギリ息してるくらいなものなのだろうか。

ぼーっとしちゃだめだろうがぼーっとしないと動けない。なんか朝コップ一杯の水がいいと言うから何となく飲んでみるが、食道が開いてないからかごくごくも飲めない。苦しく飲んでる。コップ一杯の水に溺れてる。

お風呂が嫌いだが今日はさすがに入らないとと思いつつ、猫を見てた。懐いてない猫。必ず1.5メートル程は距離をあける家猫。もはや飼っているかも怪しい。そんな猫がゆっくりゆっくり外に出ていった。その姿を見ようと窓辺から覗いてついて行くとそのまま太陽の下で伸びをしたら行ってしまった。私は風呂場近くの窓に立っていた。そのまま嘘かのように浴槽に流れて行った。自分で決意するには50分も無駄にしたのに、他人に動かされたら秒で動いた。他人というか猫だが。結局自分なんてない。

頭を洗うのがめんどくさくて、とりあえず湯船に浸かるだけでステージクリアにしよう。昨日おばあちゃんが入れた湯船、誰かは入ってるから少し濁ってる。でも、もう暖まれたらなんでもいいので関係ない。入ったらなかなか出られない。体が溶けていくように思い、動けない。で動けないついでに頭まで付けて、そのまま顔も水中に。背中を浴槽床に付けて。

さすがにお湯がにごっていたので目を開ける勇気はなかったが、鼻つまんで目を瞑って水中を漂うと心音が聞こえる。温かさもあって、普段そんな飾った表現はしないのだがものすごく母胎だった。母胎にいた。ずっと居れる気がした。何分か分からないが息のもつ限りいて、上がった。死にたくはない。綺麗にシャワーだけ浴びて無事湯船から出産された。

気持ちよかった。しゃきっとはしないのでお茶を呑みゆっくり動こう。眠いなあ。

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