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郵便局員

娘の大学受験の願書が入った封筒を幾つも抱え、郵便局に向かった。

窓口で、いかにもベテランという感じの郵便局員が対応してくれた。
書留にしてもらうようお願いして待っている間、自信の無さそうな娘の顔を思い出し、「どれかひとつでも合格するといいなぁ」などと考えていた。

支払いのタイミングで郵便局員から「受験は大変ですよね。でも、合格してからはもっと大変ですよ。」と声を掛けられた。
確かに合格できたとしても、入学手続き、引っ越し、毎月の仕送りと親の負担は大きい。

ところで、どうしてこの局員はわたしの考えていることが分かったのだろう。
わたしの不安な気持ちを大きな手で優しく撫でてもらったようで、心が温かくなった。

この時、ふと20年前のことも思い出した。
郵便局で結婚披露宴の招待状に貼る切手を買ったときも、若い局員から「おめでとうございます。」と声を掛けてもらいうれしかったったことを。

市役所で働くわたしは、果たして同じことができているだろうか。
出生、進学、結婚、転居、離婚、死亡など、市役所職員は市民の人生の節目に関わる。
わたしの放った声掛けにより、相手の心を温かくすることもできるし、逆に怒らせてしまうこともある。
相手の心を温める声がけは、とても難しい。

郵便局では電子メールやオンライン手続きの普及により、先月から郵便物の翌日配達を廃止にした。
近い将来、市役所も全ての手続きがオンラインでできるようになるかもしれない。
便利だが、窓口での心温まる声がけは、ネットやAIにはできまいと思った。

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