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アクションゲームツクールMVで作ったゲームをNintendoSwitchで発売してみた

はじめに

アクションゲームツクールMVでゲームを完成させ、ニンテンドーストアで発売させるという、ちょっと珍しい(と思う)実績を作ったので、その体験談や感想を記事にしてみた。同じような目標を持つ人にとって、役立つ情報となればいいと思う。

開発に使用したツール

アクションゲームツクールMV

詳しくは検索してほしい。ツクールと言えば、誰でもRPGを作れるソフトRPGツクールがもっとも有名であるが、そのシリーズの中で、アクションゲームを作るために特化しているのがアクションゲームツクールであり、その最新版がMVである。

(最近のRPGツクールはプラグインによる機能拡張ができるため、アクションゲームの開発は可能である。熟練ツクーラーであれば、その方がアクツクを使うより圧倒的に早く開発できそうな気がする)

(ツクールシリーズは今後、海外での呼称MAKERシリーズとなり、"ツクール"の名前は消えそうである。悲しい。すでに売り上げのほとんどが海外という情報をどこか見た覚えがある。仕方のないことではあるが…)

SpriteStudio

こちらは2Dのアニメーション作成ツールである。胴体、頭などパーツごとに描いたドット絵を、SpriteStudio上で組み合わせ、腕や足の向きを回転させることによって、歩く、ジャンプするなどのアニメーションを作成した。こうしておけば、同じ動作をするような二足歩行ロボを何種類も作成する場合、画像を差し替えるだけで効率的に量産できるだろうという目論見があった。

どんなゲーム?

ゲーム内容は、Gotcha Gotcha Games様からPVが公開されているので見てほしい。重厚なストーリーはなく、複雑なアイテムや装備もなく、敵を倒したり跳んだり走ったりしながら、右端にあるゴールを目指すというシンプルなゲームだ。キャラクターをロボットとしたのは、前述のとおり単純に量産がしやすそうだったからだ。小学生が遊ぶことも視野に入れて、ロボットのモチーフは魚やカニなど海の生き物とした。ちなみに主人公機のモデルとしたのはダイオウグソクムシである。ゲームのボリュームとしては30分ぐらいでエンディングが見られる程度になった。ハイスコアの記録や、隠しパネルのコレクションなど、周回して遊べるようにもした。

そんなこんなで、実際にゲームを作り終えた…いや、とりあえず最後まで一通り遊べるようになった。プロジェクトファイルの作成日が2021年5月21日で、販売申請などを行ってるメールを確認すると2022年5月末~6月末ぐらいなので、おそらく1年ほどかかっている計算になる。並行して他の作品も制作していたので、感覚としては半年程度とみている。
(ちなみに私はほぼ毎日22:00頃~0:00にゲーム制作をしている)

販売申請するまでのロード

販売までの流れを確認

アクツクMVで作ったゲームをNintendoSwitchで販売するまでの、大まかな流れは公式サイトで説明されていた。閲覧するだけでもなぜかメールアドレスの登録が必要になっていた。
しかし、公式サイトが解説していたのは大まかな流れだけであり、「登録はこちらから!」みたいなボタンはなかった。
…販売申請はアクツクMVの機能として用意されていた。おそらく上記で登録した公式サイトとは連動していない。

※公式サイトは移転でミスったのか、登録ができなかった。
 問い合わせを投げてみたら修正された。ちょっと不安…
※公式サイトでは販売条件として画面解像度が指定されたりしているため、Switchでの販売を視野に入れて開発を進めている方は先に確認しておくことをオススメする。

開発者登録申請

実際の開発者登録はアクツクMVの機能として用意されていた。NintendoSwitchのメニューがあり、そこに開発者登録があった。
ここで必要項目を記入し、申請した。
今までの開発実績等を記載する欄があったので、以下のようにした。

"アンチベルフェタンのミスティと言います。
アクションゲームツクールMVで開発したゲームをNintendoSwitchで販売してみたいと思っています。
RPGツクールやUnityでの開発実績はホームページをご確認願います。http://kilisamenosekai.web.fc2.com/
アクションゲームツクールMVで開発中のゲームについては#ガンゾォーグでTwitter検索いただけると確認できると思います"

開発者登録申請を送信すると、認証コードがメールで送られて来たので、それをアクツクMV上で入力した。
登録申請は金曜の夜に出した。その結果は月曜の午前中にメールで来た。
メールにURLが示されているので、そこでまた登録を行なった。

※この時のメールはとても素っ気ないもので、利用許可の結果と理由のみ記載されていた。(理由についてはただ、"creator"とだけ記されていた)

ここまでやると、アクツクMVのNintendoSwitchメニューからログインできるようになった。

ゲームID発行申請

画面にしたがって開発中のゲームが登録すると、NintendoSwitch用にビルドしたデータをアップロードできるようになる。
(ダウンロードできるわけではない)

販売申請

ここからが本番の販売申請と言ってもいい。今まではインターネット上のサイトやPC上の画面で、システムとのやりとりしかなかったが、ここから生きた人間が登場した。

販売申請の機能では、アップロードするファイルを選択できるので、Windows用にビルドした一式を圧縮したファイルを選択した。
ここでさらに審査があった。

審査は翌日に結果が出た。
販売申請の中にスレッド(掲示板的なそれ)が作成されていた。
今後は、このスレッドにメッセージを書き込んでGotchaGotchaGamesの担当者様とやりとりをしていく。

まずは販売許諾契約書。
これはスレッドに添付されたので、記入したものを添付して返した。
それから、本人確認書類と取引口座通知書の送付。
こちらはメールで、とのことなので、そうした。
添付した書類は本人確認書類をスキャンしたJPG画像だった。
書類はdocxやxlsxのファイルになっているので、それらを編集できる環境が必要。(いや普通はあるか…)

次は、正式な契約書を交わす前に、挨拶を兼ねて顔出しでオンライン面談をすることになった。使用したアプリはgoogle meetだった。予定を合わせるため、スケジュールの調整などを行った。

※面談当日、アプリを起動して時間になったが、面談が始まらなかった。
10分経っても始まらない。おかしい。試しに参加ボタンを押してみたら既に始まっていた…すみません。アプリの仕様を知りませんでした。

…自己紹介の時、アンチベルフェタンの○○ですと、本名を名乗った。アンチベルフェタンと実際に口に出すことは今までなかったので、何か変な感じがした。今思えばちょっと恥ずかしかったのだろうか。

面談の参加者は私と、GotchaGotchaGames様が2名。面談の内容は、主に契約書の確認と、その内容や販売に関して質問があれば聞く、というようなものだった。

販売するゲームには「ツクールシリーズ」が前につくことになるとの説明を受けた。これはツクールシリーズとして売り込むとともに、何か問題が起こった時に開発者を守るためにもそうしているとのことだった。イヤでつけなかった開発者もいたそうだが、基本的にはつけることをオススメされた。私はなんの問題も感じなかったのでつけることにした。

契約書はGMOサインを通して行われた。メールが来るので、指示通りにサイトにアクセスして入力をおこなった。

契約書の締結が終わると、NintendoSwitchでアクツクMVのゲームがテストプレイできるソフトのコードがもらえた。このコードを手持ちのスイッチにアクツクMVプレイヤーをダウンロードして起動すると、ゲームID発行申請でアップロードしたゲームがSwitchでテストできる。

ここまでやって、気付けば8月となっていた。

実機テスト

ようやくSwitchで自分のゲームを動かしてみたのが、思ったより動作が重く、快適ではなかったので、処理の軽量化を図った。具体的には、1度に登場するオブジェクトの数を減らしたり、ステージを分割したりした。

担当の方からは作品の完成予定のざっくりしたイメージと、週1程度で進捗を%で報告するように求められた。10月中の完成を目指し、年内販売予定となった。

※アクツク販売契約を締結された方限定のディスコードにも招待された。わたしがディスコードを使い慣れていないのもあるが、あまり活発ではない印象を受けた。

翻訳作業

9月初め、軽量化作業にも目途が立ち、次の翻訳作業に移行することになった。
日本語と英語で販売するため、ゲーム内の各テキストを翻訳する必要があった。

ゲーム内の各テキストの一覧を作成した。アクツクMVは一覧としてテキストリソースを取り込む機能はないため、手動で作ることになる。文字の表示枠などの限度があるため、字数制限などの情報も付与した。

翻訳は、GotchaGotchaGames様から、別の専門の会社に依頼して頂く形になっていた。ゲームで使うのに適したテキストに翻訳していただいたと思う。

翻訳して頂いた英語をゲーム内に入れ込むのはこちらの作業となる。
場合によっては、表示枠を広げないと表示しきれないことがあるため、英語に切り替えての実機テストを繰り返し、表示を確認した。

一度翻訳を終え、後になって翻訳が漏れていたテキストが2,3個あり、追加でお願いをしたが、特に問題なく翻訳していただいた。

翻訳後の作業

9月中旬。この辺りの工程は並行して行なっている。

ストア画像・文言の準備

eSHOPに登録するための準備作業が始まった。Nintendoのサイトを見ていただければわかるが、日本語用、英語用で、色々な解像度の画像が必要なため、これはなかなか手間がかかった。eSHOPに表示されるゲーム紹介用の文言は、最初はGotchaGotchaGames様が用意くださったが、ゲーム内容に沿っていないと思ったので、こちらで全文考え直して連携した。

動画素材の準備

Nintendoのサイトや公式youtubeで流れるゲームのPR動画(上の方でリンクしていた動画)は、GotchaGotchaGames様が制作することになっているが、そのための素材となる動画や画像、音楽はこちらで用意することになっていた。
(PC上でゲームを動かしたものを録画したが、これも容量やら録画ソフトの設定やらで手こずった…)

デバッグ

ゲーム中に進行不能などの致命的なバグがないかのチェック作業が始まった。これもまたデバッグ専門の会社で行われるようになっていた。
バグの一覧はgoogleのスプレッドシートでやりとりをした。
一通りバグがすべて挙がってから、挙がってるものを全部確認してもらうような形となっていた。怪しい動きをしていても、こちらが仕様と言い張れば仕様とすることも可能だった。これもなかなか大変な作業だった。
(私も想定していないほど簡単にスコアをカンストさせているような感じだったで驚いた)

ラスボス Nintendo

デバッグも終わり、11月の初め。販売価格と発売日の相談があった。これは特に問題なく決定。ここから、任天堂の審査が始まった。
任天堂様の方でもバグチェックをしており、ここでもいくつかバグが発見された。(あれだけやったのにまだ出た…)
もうすっかり開発が終わったつもりだったし、年内にどうにかしたい気持ちもあって、ここは辛かった印象がある。何度か修正と再提出を行い、なんとか審査を通過した。
そんなこんなで12月。すでに年内の発売は無理ということになっていて、発売は新年になってから、ということになった。

祝!発売

2021年1月12日。本当に発売した。

海外でもちゃんと発売している。

この時期、ちょうど流行り病で臥せっていて確認が遅れたりしたのだが、どうにか悲願を達成することができた。これでもう、思い残すことはない…

発売後、いくつかの見たことあるメディアで本作の記事が作成されていた。これは特に何も聞いていなかったので少し驚いた。どんどんやってくれて構わないが、これほどとは思ってなかった。

また、発売より少し前にGotchaGotchaGames様からガンゾォーグのダウンロードコードを頂いていた。前述のテストツールではなく、Nintendoのストアで入力すれば無料でソフトが入手できるというものだ。日本語用のコードはひとつ自分で使うとして、あとほかプレゼント等に使用できるらしいが、どうしたらいいのかわからず、いまだに保存してある。

で、売り上げは?

2023年4月27日、それまで何の音沙汰もなかったが、報告があった。
(アクツク上で今までやり取りしていた機能のところから)
添付されていたpdfファイルには販売数、売上金額、だとかの情報が記載されていた。細かい数字は伏せるが、当然生活できるような金額ではない。

おわり

これがガンゾォーグ発売の記録である。
初めにも書いたが、あまり経験者のいない記憶であり、誰かの参考にもなると思うので、ここで共有しておきたかった。

…お疲れさまでした。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。
爆砕機行ガンゾォーグをよろしくお願いいたします。

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